北朝鮮との関係や2018年冬季オリンピック、寒波の到来といったニュースに占められていた韓国紙の第一面に、ほぼ無名だったチョン・ヒョン(韓国)がテニスの記事をもたらした。ソウルから34キロほど南にある水原市出身の21歳のチョンは、世界ランク2…

北朝鮮との関係や2018年冬季オリンピック、寒波の到来といったニュースに占められていた韓国紙の第一面に、ほぼ無名だったチョン・ヒョン(韓国)がテニスの記事をもたらした。

ソウルから34キロほど南にある水原市出身の21歳のチョンは、世界ランク2位のロジャー・フェデラー(スイス)との「全豪オープン」準決勝で足のマメのために途中棄権したが、従来、テニスが選手の育成にとって、そして注目度の上でも厳しい環境にあった母国において、誰もが知る存在となった。

フェデラーが6-1、5-2とリードしたところで終了したこの試合を中継したケーブルテレビの有料チャンネルJTBCは、金曜の午後にKBSなどの大手地上波テレビ局を抑え、国民の10パーセントを超える視聴者を惹きつけた。

ソウル出身の31歳のKim Myung-joon氏は、AP通信の取材にこう答えた。「誰もがチョン・ヒョンを誇りに思っている。フェデラーに対してスムーズに動けないのは明らかだったが、とてもよくやった。私の記憶にある限り、初めてみんながテニスを話題にしている。韓国は新しいものが広まるのに時間がかかる国なのに」

チョンがマメの写真をSNSに載せると、新聞各紙はチョンの「輝かしい傷」について書き立てた。

「今夜、僕はいつものようにコートに最大のエネルギーをぶつけるべく懸命の努力をした。しかし、大勢のテニスファンを前にして、100パーセントの力でロジャーと戦うことはできず、苦渋の決断を下さねばならなかった」とチョンはコメントしている。

多大な影響力を持つソウルの『中央日報』は、「チョン・ヒョンの誇り高いマメと15,000人のファンからのスタンディングオベーション」と報じた。

チョンの足は、伝説的ゴルファー、パク・セリの足と対比された。ルーキーだったパクは、初めてのタイトルを獲得した「全米女子オープン」の18番ホールで靴を脱ぎ、川に入ってショットを放ち、勝利を手にしたことで知られる。今では韓国の女子選手はゴルフ界を席巻している。

韓国テニス界の重鎮は、チョンがテニスコートで同様の現象を引き起こしてくれることを期待している。チョンがノバク・ジョコビッチ(セルビア)をストレートで下してから、韓国人は世界ランク58位のチョンに注目し始めた。続いてチョンは準々決勝でテニス・サングレン(アメリカ)を退けた。韓国人選手がグランドスラムでこの段階まで勝ち進んだのは初めてだった。

韓国の人々の目は、5月に行われる「全仏オープン」にすでに向けられている。(C)AP(テニスデイリー編集部)

※写真は「全豪オープン」の準決勝で足の治療を行うチョン

(AP Photo/Andy Brownbill)