「よかったですね。勝てたのもそうだし、勝ち方もすごくよかった。ま、パーフェクトな試合ができたと思います」 リーガエス…

「よかったですね。勝てたのもそうだし、勝ち方もすごくよかった。ま、パーフェクトな試合ができたと思います」

 リーガエスパニョーラ第22節、エイバル対セビージャ。エイバルは昨年のベティス戦に続き、プリメーラ(1部)で2度目となる1試合5得点を決め、5対1と大勝した。試合後のミックスゾーンで、乾貴士はチームのパフォーマンスに合格点を与えるコメントをしたが、自身のパフォーマンスには納得していなかった。



セビージャ戦にフル出場、5対1の大勝に貢献した乾貴士

「今日はこの前の2試合に比べればまだマシだったと思う。ただ、もっとできたところもあったと思うので、反省するところはいっぱいある」

 この試合で、エイバルの背番号8番はチームに勢いをつける2点目に関与した。18分、シャルレスのくさびとなるプレーからボールを受けた乾は、勢いそのままにスピードに乗ったドリブルでエリア内に侵入し、ホセ・アンヘル・”コテ”にボールをつなぐ。そのクロスをファビアン・オレジャーナがダイレクトで合わせて2点目が生まれた。

 乾のドリブルに対峙したセビージャのミゲル・ラユンは、突破を阻止するために右に左に無様なステップを踏まざるをえず、滑稽なダンスを踊っているようだった。

 その場面だけでなく、オレジャーナへの正確なサイドチェンジ、ピタッと足に吸い付くようなトラップなど、乾が見せたプレーは、雪化粧された山間(やまあい)の街の小さなスタジアム、イプルアのエイバルサポーターを何度も沸かせた。

 それでも乾が表情を曇らせていたのは、誰の目から見てもわかる得点やアシストという結果を手にすることができなかったからだろう。7分の枠をとらえたシュートは味方のキケ・ガルシアに当たり、23分のこぼれ球のシュートはポストの左をわずかにそれていった。

 結果にこだわること。それは選手としてとても大事なことであり、慢心せずに成長していく上で必要なことだろう。とはいえ、現状でも乾は監督、チームメイト、サポーターの信頼を勝ち得ている。

 今シーズン、乾がメンバーを外れたのは日本代表戦から戻ってきた直後のデポルティーボ・ラ・コルーニャ戦だけ。15試合でフル出場を果たしていることはホセ・ルイス・メンディリバル監督の信頼の表れと言っていい。

 右サイドで展開することの多いエイバルだが、乾がボールを持てば、ボールが出てくると信じて、しっかりと左サイドバックのコテ、ジュンカーはオーバーラップを仕掛けてくる。ミックスゾーンで話していると、チームメイトが次々と後ろから乾に茶々を入れてくるのも、いい関係を築けているからだ。

 サポーターが乾のプレーを楽しみにしていることは、スタジアムの歓声でもわかるし、通りすがりの人々が記者に「イヌイはヌンベル・ワン(Number oneのスペイン語読み)だ」や「今日のイヌイに足りなかったのはゴールだけだな」と、満足そうな表情で話しかけてくることからも感じられる。

 そんな乾がこの日、表情を変えた質問がひとつあった。それはビジャレアル移籍に関する噂についてのもので、乾は裏も取らずに流された、いい加減な情報にうんざりとしていた。

「その話が出ているのは知っているけど、正直言って、まったくない話。契約延長拒否、みたいに出ていたけど、適当なことを書かないでくださいと伝えてください。(エイバルとの)交渉はしっかりしているし、いい話し合いはできている。まとまればこの2月中に延長のサインをすると思うし、そのへんは楽しみにしていてください」

 もちろんサインをするまでは正式な決定ではない。だが、クラブとの契約延長に前向きなことを乾が表明したことは、エイバルに関わるすべての人にとって、ゴールやアシスト以上に、この日の一番のうれしいニュースとなったはずだ。