全豪オープン第2週まで勝ち残った大坂なおみ世界1位に負けた後、大坂なおみは「今、ネガティブになることなんてない」と堂々と言ってのけた。彼女の凛とした姿勢は、メルボルンで2018年のいいスタートを切り、成長の足跡を確かに残したことを物語…

 


全豪オープン第2週まで勝ち残った大坂なおみ

世界1位に負けた後、大坂なおみは「今、ネガティブになることなんてない」と堂々と言ってのけた。彼女の凛とした姿勢は、メルボルンで2018年のいいスタートを切り、成長の足跡を確かに残したことを物語っているように見えた。

 全豪オープンテニスの4回戦で、大坂なおみ(ATPランキング72位、1月15日付け、以下同)は、第1シードのシモナ・ハレプ(1位、ルーマニア)に、3-6、2-6で敗れ、自身初のグランドスラムベスト8進出はならなかった。

 3回戦までのハレプは痛めた足首の影響もあって苦戦が多かったが、4回戦では別人のようにギアアップし、世界ナンバーワンとして大坂の前に立ちはだかった。

 第1セット第6ゲームで、大坂は4回のブレークポイントをつかむが、そのチャンスを6回のデュースの末逃すと、続く第7ゲームではハレプにブレークを許した。

 このブレークをきっかけに「より自信を感じた」というハレプは、心配された足首の影響を感じさせないフットワークで、「すべてのボールが大事」と言い聞かせながら、できるだけボールを深く返球した。大坂をコートの左右へ走らせて、自分のミスを最小限に抑えながら試合を徐々に支配していく。結局、ハレプはミスを18本に抑える一方で、大坂は31本のミスを強いられ、最後までハレプの高い集中力と質の高いテニスを崩せなかった。

 過去2戦は、いずれもフルセットでハレプが勝っていたが、ハレプは3回目の対戦で以前とは違う大坂をコート上で感じていたという。

 大坂の動きがよくなったことを認め、ネットの反対側にいる大坂のエネルギーが漲(みなぎ)っているのを感じた。さらに、「試合で私がリードしている場面でも、なおみはポジティブだった」とハレプは、大坂が前向きな姿勢でいたことを指摘した。敗れたとはいえ、世界1位のハレプに対し、毅然としていられたことは大坂にとっては大きな収穫だったといえる。

「試合中ポジティブでいることは、今まさに、私がメインに取り組んでいることです。今大会中も、それが自分の助けになっています。これからもっとよくなるように、取り組み続けていきたいと思います」

 今季からツアーに帯同しているサーシャ・バジンコーチからポジティブにいるようアドバイスされている大坂は、練習中の笑顔が増え、全豪3回戦では、自分のミスショットにさえ笑顔を見せる場面もあった。これは、昨シーズンまでの大坂とは明らかに異なる態度で、バジンコーチとの取り組みが、大坂のプレーに好影響を与え始めている。

「素晴らしい成績です。(3回戦の第18シード、アシュレイ・)バーティも(2回戦の第16シード、エレナ・)ベスニナも決して簡単な相手ではありませんでした。確実に向上しているし、4回戦進出は、なおみにふさわしい成績です」

 新しい教え子の成績を素直に喜んだバジンコーチは、昨年12月に大坂と出会って、すぐに彼女の性格を気に入り、素晴らしい才能にほれ込んだ。昨年まで、キャロライン・ウォズニアッキのヒッティングパートナーをしていたが、それ以前には、ビクトリア・アザレンカやセリーナ・ウイリアムズの練習相手も務めていた。経験豊富な彼だからこそ、大坂のポテンシャルについて感じることがある。

「かつて僕が一緒に練習した元世界1位のアザレンカやセリーナと比べても、彼女ほど強いストロークを打つ選手を見たことがありません。なおみは、彼女たちがいたレベルへ容易に到達できるはずです。世界1位とかトップ10とか明確な数字には言及しませんが、なおみがよくなっていくことを確信しています」

 今回の全豪で、大坂は6回目の挑戦にして初めてグランドスラム3回戦で勝利し、ついにひとつの壁を突破、グランドスラム初のベスト16進出を果たした。だが、今の大坂にとっては、そうした結果よりも大切にしていることがある。

「今回、自信を得ることができましたが、それは4回戦に初めて到達できたからといって、必ずしも得られるわけではありません。自分のテニスのクオリティーこそが確かな自信をもたらしてくれるのです」

 また、多くのトップ選手がそうであるように、グランドスラムの第2週でギアアップしたハレプと対戦したことは、大坂にとって何よりも勝る貴重な経験だった。グランドスラムで上位進出するためには、大坂もまたギアアップする術(すべ)を身につけなければならないが、現在の実力でもベスト8進出は時間の問題だろう。

「僕たちは将来グランドスラムで優勝することを目指しています。なおみの可能性は無限大です」

 現在、女子テニスのグランドスラム優勝戦線は非常にオープンになっていて、誰にでも優勝できるチャンスがある状況だ。その混迷を大坂が突き破って、大いなる目標に到達することをバジンコーチは願っている。大坂自身も全仏に照準を合わせる。

「次のグランドスラムではもっとよくなることを望んでいます。いかに私のテニスが進化できるかを考えています」

 昨シーズンは足踏みをした大坂だったが、今季からバジンコーチとともに、再びグランドスラム初優勝へ向けて、メルボルンから力強いステップを踏み出した。

【全豪オープンテニス】
1/15(月)~28(日)WOWOWにて連日生中継
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