「正直なところ、朝、全然風が吹いてなかったので、間違いなく(カルロビッチの)サーブは(ミスが少なく)コンスタントに来るなと考えていた。ここ2週間いたけど、一番風が弱かった」 杉田祐一の予想は当たり、サーブが好調なカルロビッチと壮絶な5セ…

「正直なところ、朝、全然風が吹いてなかったので、間違いなく(カルロビッチの)サーブは(ミスが少なく)コンスタントに来るなと考えていた。ここ2週間いたけど、一番風が弱かった」

 杉田祐一の予想は当たり、サーブが好調なカルロビッチと壮絶な5セットマッチを戦うことになったが、最後まで杉田に神風が吹くことはなかった――。



全豪オープン2回戦で敗れた杉田祐一

 全豪オープンテニスの2回戦で、杉田(ATPランキング41位、1月15日付け、以下同)は、イボ・カルロビッチ(89位、クロアチア)に、(3)6-7、7-6(3)、5-7、6-4、10-12で敗れ、グランドスラム初の3回戦進出はならなかった。

 38歳のベテランで、長身211cmから繰り出すサーブを武器にしているカルロビッチの試合は、たいがいタイブレークか、サービスのワンブレークでセットの決着がつくが、杉田戦も例外ではなかった。

 第1セットでは、お互いすべてのサービスをキープして、タイブレークをカルロビッチが注文どおりに制した。実は第12ゲームで杉田には2回セットポイントがあったが、ともにフォアのリターンミスをして、チャンスを活かすことができなかった。

 第2セットもお互いサービスをすべてキープしたが、杉田がタイブレークを奪う意地を見せた。「タイブレークを取れたんで、流れが(自分に)来そうだったが……」と振り返ったが、カルロビッチの正確なサーブがそ                        れを許さなかった。

 第3セットは、第11ゲームをカルロビッチがワンブレークして取り、第4セットは、杉田が第10ゲームでブレークに成功して、2セットオールとなった。

 勝負のかかったファイナルセットの第2ゲームでは、杉田が4回のブレークポイントを握るが、カルロビッチのサーブを軸にした攻撃やサービスエースで、ことごとく杉田のチャンスはつぶされた。中にはセカンドサービスでエースを奪うポイントもあり、読みがはずれてリターンできなかったことを杉田は悔やんだ。

「想像以上にサーブの精度が落ちなかった。あそこまで精度がいいとブレークのチャンスはないですね」(杉田)

 この後ファイナルセットでは、お互いのサービスキープが続いていくが、ついに第21ゲームで、これ以上長引くと不利だと感じていた杉田がダブルフォルトでブレークポイントを献上してしまい、1回目のピンチはしのいだものの、2回目のブレークポイントでは杉田がバックハンドをネットにかけてサービスゲームを奪われた。

 カルロビッチには、この乾坤一擲(けんこんいってき)のブレークで十分であり、4時間33分の激戦を制し、両手を上げて勝利を喜んだ。

「とても嬉しいけど、とても疲れた。とにかく自分のサーブに集中した。すべてのゲームで自分のできることをやった」

 こう振り返ったカルロビッチから53本ものサービスエースをたたき込まれたものの、杉田のプレーは決して悪くなかった。ファーストサーブでのポイント獲得率は83%で、カルロビッチの85%と比べてもまったく遜色なかった。

 長いラリーは、もちろん最初からないことがわかっていたが、それでも杉田はフォアハンドでの40本を含む79本のウィナーを決めてみせた。また、自分のミスを22本に抑える一方で、カルロビッチに50本のミスをさせた。ビッグサーバーのカルロビッチに対して、杉田はやるべきことはできていたが、最後のワンチャンスをもっていかれた。

 いつもなら試合後の会見で質問に1問でも多く答えようとする杉田だが、この日ばかりは口数が少かった。絞り出すようにして「悔しいけど、しようがない」と、何とか質問に答えていたが、最後は自分から「ありがとうございます」と切り出して、会見室から足早に立ち去っていった。

 杉田はグランドスラムで3度目の2回戦だったが、今回も3回戦へあと一歩届かなかった。これもまた成長するために必要な経験だと、彼自身が消化するためには、少し時間が必要な敗戦かもしれない。

「(1回戦で)シードを倒していたので、もっといいところまでいきたかったです。(2回戦は)ギャンブルみたいな相手だったので、しょうがなかったですね。運を呼び寄せられるように、精神的にも準備しないといけないですし、チャンスをものにできないとこうなってしまう」

 だが、今回のようにどちらが勝ってもおかしくないような際どい勝負をものにしていかなければ、この先さらに上のステージにいけないことを杉田は十分理解している。

「ここに留(とど)まることは、かなりのレベルが必要になるので、落ちるのも上がるのも、本当に紙一重。どのみちトップ選手に勝っていかないといけない。個人的にも、日本代表としても、勝負の年なので、自分のできる限りのことはやっていかないといけないと思っています」

 杉田の次なる舞台は、男子国別対抗戦デビスカップ・ワールドグループ1回戦「日本対イタリア」(2月2~4日・盛岡)だ。おそらく、杉田は、ホームでの戦いで、エースであるシングルス1に起用されることになる。強豪イタリアに対して、シングルス2勝を期待される重責を担うことになるが、今回のメルボルンでの経験を糧にして、さらなる進化を遂げた杉田の姿を見せつけてほしい。

【全豪オープンテニス】
1/15(月)~28(日)WOWOWにて連日生中継
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