細い体を折り曲げる。前傾姿勢のままターゲットを指さす姿と大声が目立っていた。
 全国高校ラグビー大会初日の12月27日、函館ラ・サール高校の14番、福健太郎(ふく・けんたろう)は憧れの花園ラグビー場に立っていた。鹿児島実との試合には12-38で敗れたが、福はチームが奪った2つのトライのうちの1つを決めた。
 前半13分過ぎ、仲間が重ねたフェーズアタックを仕上げる。右サイドから回り込み、大声を出してボールを呼んだ。インゴールの左中間に置いた。

「声(を出すこと)は自分の仕事です」
 敗戦直後、福はそう言った。アウトサイドから見て得た情報をインサイドの選手たちに伝え、個々のポジショニングをコントロールする。この日のスタメン唯一の1年生は、60分間ピッチに立ち続け、堂々と責任を果たした。
「全員で勝つチーム。なので、3年生でも2年生でも、1年生でも試合に出れば同じ意識でプレーしています」
 だから、あと2回この場所にやって来るチャンスがあるとはいえ、今回の敗戦がたまらなく悔しい。
「Bシード校を倒そう。普段からそう言ってきたので、どうしても勝って次に進みたかった。3年生たちに、少しでも長くプレーさせてあげたいという気持ちもありました」
 まだ幼なさの残る顔を少し歪めた。

 もっとやれる自信があっただけに、試合後の函館ラ・サールロッカールーム周辺の空気は重かった。
 しかし1年生の福には、2年時、3年時と、チームがまだ花園で手にしていない勝利を得られるチャンスが残っている。そして福は、強く思えば願いは叶うと知っている。
 2年前の全国ジュニア大会に北海道中学選抜の一員として参加した。茨城県中学選抜との試合メンバーに一度は名を連ねた。しかし、試合直前の練習で足首のじん帯を痛める。結局、花園の芝を踏むことはできなかった。
 同選抜のヘッドコーチを務めていた宇佐見純平先生が言う。
「本人はテーピングしてでも出たい、と言っていました。でも、彼に言いました。先がある。高校でもう一度、花園に立て、と」
 あのときの無念を今回晴らすことができた。思いが強かっただけに「(ピッチに出る前は)緊張しました」。
「でも、試合が始まったらいつもどおり、落ち着いて戦えた」
 今回果たせなかった勝利の夢は、次回出場時に絶対に叶えたい。

 和歌山県出身。函館ラ・サールに進学した、いとこの友人のお兄さんから学校の評判を聞いて北へ向かうことに決めた。将来は医師になりたいと思っている。
 父・昭人さんは和歌山市で外科病院の院長を務めている。小学生の頃の父についての記憶が、自身の夢に大きな影響を与えた。
「僕は小5の頃、発作で意識を失ったことがあるんです。そのとき、父は(救急隊に)『俺のところに連れて来い』と言ったらしいんです。それをあとで聞いて、かっこいいな、と」
 まだラグビーと出会う前に抱いた夢は、16歳の頭の中で、明確な目標になりつつある。