アマチュア1部で優勝すればトップリーグ昇格の可能性も オランダにおける野球は競技スポーツだけではなく、生涯スポーツとして…
アマチュア1部で優勝すればトップリーグ昇格の可能性も
オランダにおける野球は競技スポーツだけではなく、生涯スポーツとしての側面も持っている。国内では、日本と同様に野球を楽しみたい大人がチームを作り、各地域でリーグ戦を行っている。しかし、日本の草野球と大きな違いが存在する。日本では各アマチュア野球連盟がそれぞれ大会を開催しているが、オランダではプロからアマチュアまで全てのリーグをオランダ王立野球・ソフトボール協会(KNBSB)が統括しているという。そのため、アマチュア1部リーグで優勝し、トップリーグが定める規定をクリアすれば、トップリーグに“昇格”することができる。
そこで、オランダのアマチュア野球が実際どのように行われているのかを調査すべく、アマチュア野球リーグの4部チーム「DVH」に所属している在オランダ日本人に連絡を取った。
インタビュー予定日に雨で順延された公式戦が入り、さらに十分な人数が集まらなかったこともあり、急遽筆者たちも助っ人として試合に参加した。アマチュア4部リーグ自体のレベルは決して高くはないとのこと。実際、相手ピッチャーの球速も時速110キロほどで、日本の草野球と大きなレベルの差は感じられなかった。チームは我々大学院生が4人、日本人駐在員が2人、韓国人駐在員の男性が1人、オランダ人の男性が1人、助っ人のオランダ人女性が2人という多国籍チームとなった。
DVHの後攻で試合は始まった。先発バッテリーは助っ人オランダ人女性だ。しかし、投球練習ではストレートが時速100キロほどしか出ておらず、守備に就きながら一抹の不安を感じざるを得なかった。その不安が的中したのか、初回にいきなり4番、5番に2本のホームランを浴び、助っ人参戦した大学院生の1人が緊急登板した。
オランダで使用されているボールは、KNBSBのスポンサーである「SKK」社製。ボールを握るとすぐさま異変に気が付いた。日本のボールよりも大きく、試合開始間もないのにボロボロで、縫い目の山が高い。登板した日本人の指では持ち球のフォークボールを投げることはできなかった。結果、味方のエラーなどもあり、投手陣が踏ん張れず大量失点してしまった。
試合終了後に広がったまさかの光景、球審が…
DVHが5-11と6点を追う展開で迎えた最終回。連打などで次々と点数を返して意地を見せたDVHは、2死で走者2人を置き、一発逆転というサヨナラ機を迎えた。ここで打席に立った助っ人大学院生の1人に大きな期待が寄せられたが、結果はセカンドゴロで試合終了を迎えた。
試合後、悔しがる私たちの目前で、日本では信じられない光景が繰り広げられた。なんと審判が点数をメモしておらず、試合結果を両キャプテンが言い争っていたのだ。両翼約85メートルの綺麗な天然芝で、スコアボードも整備された素晴らしい球場が舞台ながら、アマチュア野球リーグではスコアを書く習慣がないことに驚かされた。試合終了から数時間後、KNBSB公式ホームページには勝利チームが告げた点数で結果が更新されていた。
オランダでは、ほとんどのスポーツチームがクラブに属しており、DVHも野球の他に、サッカー、ホッケー、ボッチャなど多彩なスポーツチームを持っている。クラブを運営する上で、オランダでは規則として「クラブハウス」を持たなければならない。クラブハウスではホットドックなどの軽食、コーラなどの飲料はもちろん、オランダを代表するビール「Heineken」が楽しめるバーカウンターが存在する。試合後はビール片手にミーティングをするのがオランダ野球のお決まり。食堂やバーでの売り上げがクラブの貴重な収入源になっている。
4部リーグレベルになると老若男女問わず参加できるため、選手同士の交流が生まれる。学校の部活動ではなく、スポーツをクラブチームで楽しむのがヨーロッパの基本。自分の所属するクラブを愛し、生涯つながりを持ち続ける。
試合の際、対戦相手のオランダ人選手に、いつまで現役を続けるのか聞いてみた。
「引退は存在しない。生涯現役」
その言葉が力強く響いた。(大森雄貴 / Yuki Omori)