ジャンプ界の第一線で飛び続ける葛西紀明 11月24日に行なわれたワールドカップ第2戦のルカ大会、ラージヒル個人の予選…

ジャンプ界の第一線で飛び続ける葛西紀明
11月24日に行なわれたワールドカップ第2戦のルカ大会、ラージヒル個人の予選で、葛西紀明(土屋ホーム)は、82mという大失速のジャンプで64位に終わり、上位50名が進める本戦への出場を逃した。競技後の葛西の第一声は、「何よ、この台は!」だった。
その予選に先立ち、午後3時半過ぎから行なわれたノルディックコンバインド(複合)個人ラージヒル5kmのジャンプは、秒速0.63mの追い風から1.39mの向かい風にクルクル変わるだけではなく、ウインドファクターには現れない巻いた風も吹く荒れた展開だった。
そのあとで始まったジャンプの公式練習2本を飛んでからの予選も、同じような条件が続く。前戦のポーランド・ヴィスワ大会では2本目のジャンプに進めなかった葛西は、ルカの荒れた条件に不安を抱いていた。
始まった公式練習で、葛西の1本目は弱い向かい風の中138.5mの大ジャンプを見せた。小林陵侑(りょうゆう/土屋ホーム)が141.5m、竹内択(北野建設)も140mと、飛距離上位3位までを日本勢が占めた。これで不安が吹き飛んだかに思えたが、葛西の2本目は76mの大失速ジャンプになってしまう。悪い流れを断ち切れず、前述したように予選では82mと散々な結果になった。
「(公式練習の)2本目で悪い風に当たったから、予選は大丈夫だと思っていたんですけどね。飛び出した付近が突風みたいな追い風で……。防風ネットでガードしているけど、その上から叩きつけるような追い風になったんです。1本目のときはそれが少し弱かったからうまく乗り越えられたけど、2本目は思い切り横から吹いてきて、3本目は上からだったから。ジャンプはこっちへ来てからよくなっていただけに悔しいですね。初戦のポーランドからここまでは、当たり外れのあるジャンプ台だから嫌な予感がしていたけど、それが的中してしまったので腹が立ちます。ノーポイントで日本に帰らなくてはいけないのは、本当に残念です」
11月5日に大倉山で、冬用の氷のレーンを使用して行なわれた日本選手権ラージヒルでは好調な小林潤志郎(雪印メグミルク)を抑えて優勝するなど、葛西は冬シーズンへ向けて調子を上げていた。開幕戦のヴィスワ大会では、ツキに見放されて2本目に進めなかったが、ルカ大会に入ってからは助走姿勢を修正して手応えを感じていたという。
日本チームの横川朝治ヘッドコーチ(HC)も葛西と同じく、「拓から陵侑のところは最悪のところ(タイミング)でしたね。ウインドファクターにもつかない風でどこから吹いているかもわからない状態でした。葛西は2本目と予選に悪い風が2本も当たったけど、本来のジャンプは1本目のジャンプなので、そんなに心配することはないです」と楽観視していた。
その言葉通り、悪くない状態は翌日のラージヒル団体で確認できた。3番手で出場した葛西の1本目はグループ5位の127.5mだったが、ウインドファクターは追い風となる条件。横川HCが「葛西の1本目は巻き風になっているすごく難しいところを飛んでいるので。飛距離としてはさほどではないが、逆にあの難しいところをうまく通過できたのは、葛西選手ならではかなという感じもします」と高く評価するジャンプだった。2本目も陵侑が2位に上げた順位を維持する133.5mのジャンプで最後の潤志郎につないだ。
「昨日のジャンプがあるから、ちょっと不安なまま試技を飛んだんですが、これだけ安定した条件であれば、いけるなと。1本目は前に飛んだイエルネイ・ダミアン(スロベニア)の調子がいいようだったので、彼とどのくらいの差があるか確かめながら飛びました。ポイントは3.6点差だったけど、追い風の中ではいい方のジャンプだったなと思います。でも、まだ納得のいくジャンプではなかったので、2本目の前にヤンネ・バータイネンコーチと宮平秀治コーチに聞いたら、助走で少し尻が低くなってしまっていてスピードが出なくなっていると言われたので、それを修正するなど少しずつ飛べるように調整しています」
公式練習前のチーム練習から全員の調子が上がっていたので、選手たちは「団体戦はいけるのではないか」という雰囲気になっていたという。「他の国も強いのでシビアな戦いになると思っていたけれど、陵侑は大きい台になると飛べるし、拓も調子が戻ってきていたので、あとは僕次第だなと思いました。本当にキーマンでしたね」と葛西は明るく笑う。
「今回は2位になれるかなとも思いましたが、アンカーを潤志郎に任せるのはまだ早かったかなと感じました(笑)。でもいい経験になったと思うし、若い選手がどんどん強くなって、(彼らが)4番手のアンカーを飛んで(自分を)安心させてもらいたいなというのもあるし……。今季はW杯でも団体戦がけっこうあるみたいで、ここで日本チームのレベルを見られたのはよかったですね。潤志郎の好成績はみんなの刺激になっていると思うし、僕も負けたくないという気持ちは持っているから。チームで一番調子がよくなって、『俺に任せろ』と思えるくらいにならないと4番手にはいけないから、僕ももっともっと調子を上げていかなければと思います」
こう話す葛西は、次週のロシア大会は休んで12月7日から始まるドイツ大会から再びW杯に参戦する。今大会、納得できるような結果は出せなかったものの、落ち着いた精神状態で冬季シーズン入りができたといえる。45歳の大ベテランが爆発するのはこれからだ。