スポーツ報知特別コラムニストで卓球女子3大会連続メダリストの石川佳純さん(32)が、初めて観戦する冬季五輪を語る「石川…

 スポーツ報知特別コラムニストで卓球女子3大会連続メダリストの石川佳純さん(32)が、初めて観戦する冬季五輪を語る「石川佳純Forza~頑張れニッポン~」。第3回はスノーボード・スロープスタイル。初めて現地で雪上競技を観戦し、その迫力や競技日程の変更という難しい状況でも力を発揮する選手たちの精神力に感嘆。ビッグエア金に続く銅メダルを獲得した村瀬心椛(ここも、21)=TOKIOインカラミ=の勝負強さもたたえた。

 15日からリビーニョに4日間滞在し、スノーボードの男女スロープスタイル予選と決勝を観戦しました。初めて雪上競技を現地で見ましたが、迫力やスピード感に驚きました。全長約700メートルのコースはスタート地点が遠すぎて見えないぐらいです。想像していた以上に高い位置からスタートするので、勇気や覚悟が求められると思いましたし、それは現地に行ったからこそ感じることでした。

 スロープスタイルは6つのセクションでさまざまな技を出すため、ビッグエアよりも選手の個性が出やすいと聞きました。それぞれの選手が縦や横、斜めに回転したり、素人目にも技の種類が異なり、勝負であると同時に自分のスタイルを見せていくアートのような側面もあると感じました。

 また、女子は悪天候のため予選が1日前倒し、決勝が1日延期になりました。卓球では五輪で試合の日程が変わるということは考えられません。そこで調子や集中力を切らさずにベストを尽くさなければいけない難しさを感じましたし、決勝が延期になった日の現地は吹雪で着地点も見えず、これは競技ができないなと分かる状況。雪の状態が変わることへの対応力も求められ、タフでなければ難しい競技だと思いました。

 その中で最も印象に残ったのは村瀬選手です。国内で練習を見させていただく機会がありましたが、本番ではすごく派手な技やトリックをいっぱい決める一方で、練習は地味な内容の繰り返し。毎日、自分で坂を上がって、同じ技を何回も何回もやるそうです。かなりハードなので、そんなに長い時間はやらないのかなと思っていましたが、村瀬選手は朝から夕方まで練習すると話していました。その練習量の多さが自信となり、今大会の活躍につながったのだと思います。

 負けん気の強さも感じました。私自身も現役時代は負けん気が強いタイプでしたが、村瀬選手も絶対負けたくないというガッツがあふれ出ているような印象を受け、すごく素敵な選手だなと思いました。競技を見ていても「自分のスタイルを見てほしい」「こういう技をやりたい」という強い思いが伝わってきました。

 ビッグエアで金メダルに輝き、2冠が期待される状況でプレッシャーは大きかったと思います。その中で最後の3本目。絶体絶命の状況で難しいトリックを全て成功させ、着地も決めました。ビッグエアでも3本目で逆転しての金メダルでしたが、ここ一番の勝負強さにとても感動しました。

 銅メダルはすごく悔しい結果だったと思いますし、試合後は『本当に申し訳ない気持ちでいっぱい』というコメントをされていましたが、全然そんなことはありません。今回の五輪でこれまで以上に多くの人が感動をもらったと思いますし、私もその一人です。村瀬選手の格好いい滑りを見て、スノーボードを始めたいと思う子供たちもたくさんいると思います。私もこの先の活躍を楽しみに応援していきたいです。(卓球女子団体12年ロンドン銀、16年リオ銅、21年東京五輪銀メダリスト)