<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇19日(日本時間20日)◇女子フリー◇ミラノ・アイススケ…

<ミラノ・コルティナオリンピック(五輪):フィギュアスケート>◇19日(日本時間20日)◇女子フリー◇ミラノ・アイススケートアリーナ

【ミラノ=藤塚大輔、木下淳】ショートプログラム(SP)3位の世界女王アリサ・リュウ(20=米国)が、逆転で金メダルを獲得した。

ここまで個人の金がなかった米国の救世主となったが、重圧とは無縁。「今夜は楽しかったよ、ずっと楽しんでいたんだ! ここでの経験は本当に素晴らしくて、この2晩も兄弟や友達に会えて、夜遅くまで一緒にディナーもしたんだ」と笑い飛ばした。

五輪の全てを満喫したといい「すごく楽しかった。オークランド(拠点の日常)をミラノに持ってくることができて本当にうれしかった。私は本当に自信を持っていたし、このゴールドドレスもお気に入りだし、私の家族も友達も、他の人たちが笑っているのを見ると、私も笑わずにはいられません」と、また笑った。

リュウは昨季25年3月の世界選手権で初優勝。今季は同年12月のグランプリ(GP)ファイナルも初制覇し、金メダル候補として2度目の五輪を迎えていた。

20歳にして波瀾(はらん)万丈の人生だ。かつては「天才少女」。史上最年少の13歳で全米選手権を制覇した。男子でも難しい4回転ルッツを習得し、翌年には国際スケート連盟(ISU)公認大会で女子初となる4回転ジャンプとトリプルアクセル(3回転半)を1つの試合で同時に成功させた。

前回22年の北京五輪では6位入賞。翌月の世界選手権では銅メダルに輝いた。ところが一転、まさかの16歳にして電撃引退を表明。「スケート以外のことがしたい」とエベレストを登山したり、進学したカリフォルニア大ロサンゼルス校で心理学を学んだりした。

スケート靴は1年半にわたってクローゼットの奥にしまい、競技も全く見ていなかったという。

その中で24年1月に、ふと思い立った。「スケートって、どんなものだったっけ?」。軽い気持ちでリンクへ戻る。20分ほどウオーミングアップした後、いきなり3回転サルコーを着氷した。3カ月後には全5種類の3回転を降り、復帰を決断。そこから2年弱で五輪女王に駆け上がった。

今大会も自由奔放。SP首位の中井亜美(TOKIOインカラミ)を2・12点差で追ったが「メダル? そんなものいらない。この瞬間を大切にしたい」と無頓着。米女子では02年ソルトレークシティー大会のサラ・ヒューズ以来8人目の金メダルを射程圏に捉えても「順位がどうであれ、私の滑りが変わるわけではない」と自然体で、フリーは全選手で唯一の大台となる150・20点。目指す演技を夢舞台で完成させた。

引退から復帰して金メダル。五輪女王として世間に伝えたいメッセージを求められると「みんなから『やるな』と言われることを実行することかな」とおどけた。

「そういうことをたくさんやってきたけど、同時に本当に優れたチームを見つける必要もある。私は本当に感謝しているんだ。私は物語を語る者でありたい。このドレスも最高でしょ。たとえ全てのジャンプで転んでも、このドレスだけは着続けていたよ。すごく興奮してるんだ!」

団体との2冠は米女子で史上初。奔放なシンデレラがミラノの主役になった。

◆アリサ・リュウ 2005年8月8日、米カリフォルニア州生まれ。5歳で地元カリフォルニア州オークランドでスケートを始める。全米選手権を13歳で制して「天才少女」と呼ばれる。女子で初めて4回転ジャンプ(ルッツ)とトリプルアクセル(3回転半)を同時成功させた。22年北京五輪で6位、同年世界選手権で銅メダル。直後に現役引退を発表して、スケートから離れる。24-25年シーズンの昨季に現役復帰した。25年世界選手権で優勝。中国から移民した父を持ち、中国語を話せる。5人きょうだいの長女。趣味はダンス、TVゲーム。身長158センチ。