シングル戦で金メダルを手に出来ずに落胆するマリニン(C)Getty Images 世界的な衝撃を生んだ“世紀の失速”の背…

シングル戦で金メダルを手に出来ずに落胆するマリニン(C)Getty Images

 世界的な衝撃を生んだ“世紀の失速”の背景には、想像を絶するような重圧があった。ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート男子シングルで、「ダントツの優勝候補」と目されながら8位に終わったイリア・マリニン(アメリカ)だ。

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 23年12月から約2年2か月も敗北を知らずに来た絶対王者は、ことごとく精彩を欠いた。今月12日(現地時間)に行われたショートプログラムこそ首位に立ったマリニンだったが、正念場のフリープログラムでは2度にわたって転倒するなど大乱調。フリー演技終了後には「まさかこんなことが起こるなんて……」と落胆するしかなかった。

 大衆が「勝利」を信じてやまなかった。その期待の大きさから本人の背負ったプレッシャーが相当な重さになっていたのは想像に難くない。実際、マリニンは現地時間2月16日に自身のインスタグラムで「世界最大の舞台で、最強に見える者たちが内面では見えない戦いを繰り広げているかもしれない」と書き出し、「邪悪なオンライン上の憎悪が心を蝕み、恐怖が闇へと誘い込み、果てしなく押し寄せる」と漏らした。

 彼がいかに心身ともに疲弊していたかは、周囲の関係者の証言からも明らかになってきている。坂本花織(日本)やマキシム・ナウモフ(アメリカ)ら13か国16選手の振付師を担当するフランス人コーチのブノワ・リショー氏は、母国の国営放送『France TV』において「あの日、あそこにいたのが、もはや彼ではないことは明らかだった。普段のイリアは闘志あふれる選手で、競争を愛する男。しかし、あの時、いや、団体戦の最初から彼がそこにいなかったことが分かりきっていた」と回想。偉才の“異変”を指摘した。

 そしてリショー氏は、マリニンも記したフィギュアスケート界に蔓延る“増悪”についても言及している。

「私自身も、幾度となく『殺す』というメッセージを受け取った経験がある。殺害予告だって、何度も、何度も、ね。私の場合は担当している多くのスケーターたちがいるから、韓国から、日本から、中国のファンからも来る。イリアのようなトップスケーターの場合は、より強いメッセージを受け取っている。彼のライバルである日本人スケーターのファンがヒステリックになって、イリアを嫌い、彼に対して酷いメッセージを送っている」

 檜舞台に上がりながらSNS上での嫌がらせを含めた猛烈な非難の的となったマリニン。現地時間2月18日に米ニュース局『FOX』の番組内で「たくさんの人の目、たくさんの注目を浴びる状況に完全に対処できる準備ができていなかったことが、私が犯したミスの一つだった」と告白した21歳は、この経験からどう立ち直るだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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