NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン1 第8節(交流戦…

NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26
ディビジョン1 第8節(交流戦)
2026年2月14日(土)14:30 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 44-34 三重ホンダヒート

規律と意思で勝ち切る一歩を踏み出す。貫いたチームのDNAが生んだ逆転劇


三菱重工相模原ダイナボアーズの岩村昂太選手(写真中央)は「僕らのDNA、やりたいことをもう一度しっかりやろうと」ミーティングで再確認したことが結果につながったと語った

観客が固唾を呑んで見守る中、後半40分を告げるホーンが鳴った。三重ホンダヒート(以下、三重H)が5点差を追い、28フェーズに及ぶアタックでじわじわと進軍する。しかし三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)が魂のターンオーバー。最後は小泉怜史がトライエリアへ飛び込んだ。相模原ギオンスタジアムは歓喜の渦に包まれた。

この勝利は、単なる1勝以上の意味を持つ。4連敗中だった相模原DBに対し、三重Hは2連勝中で勢いがあった。後半には22対34と12点差まで広がり、状況は決して芳しくなかった。その苦境からの逆転劇は、チームが今週再確認してきた「自分たちのDNA」を、プレーとして体現できた証だった。

グレン・ディレーニー ヘッドコーチは、今季の課題を明確に捉えていた。「今季、ラストプレーで勝ち点を失った試合が3度あった。最後の『決めきる力』、あと5%の努力が必要だった」と指揮官は語る。だがそれを重く扱いすぎず、改善すべき細部として落とし込み、「疲れていても正しい判断をやり切る」意志をチーム全員に浸透させることに注力した。

週明けのミーティングでは、これまで積み上げてきたラグビーの映像を視聴し、原点を再確認。前キャプテンの岩村昂太は「僕らのDNA、やりたいことをもう一度しっかりやろうと。一人ひとりが役割を全うしたことが結果につながった」と振り返る。ダイナボアーズのDNAとは、愚直なハードワーク、そして“才能がなくてもできるプレーを誰よりもやる”というTNT(Takes No Talent=才能を必要としない)の精神だ。

逆転劇は、そのDNAを淡々と遂行した結果だった。22対34からの反撃で、選手たちは焦らず規律を守り、接点で体を当て続けた。ラックサイドの精度を保ち、走り切る。こうした“当たり前の積み重ね”がリズムを呼び込み、マリノ・ミカエリトゥウのトライを皮切りに3連続トライが生まれた。

80分間フル出場した岩村は、勝利に浮かれずキック精度の課題を挙げた。「ダイレクトを蹴ったり、真ん中に蹴ってしまったりした。キックは生命線で、相手にチャンスを与えてはいけない」。厳しい自己評価は、彼の成長意欲の表れだ。

同時に、プレーの幅は確実に広がっている。世界的スクラムハーフのブラッド・ウェバーから「ハーフ自身も攻撃のオプションになる」という発想を学び、自ら仕掛ける判断が洗練された。「32歳でも学ぶことは多い。世界のプレーから吸収して成長したい」と語る姿には、責任と自由が同居する現在地がにじむ。

後半19分からで22得点を積み上げた相模原DBは、原点回帰を経て新たな手ごたえをつかみつつある。シーズンはまだ中盤、この日の“DNAの遂行力”を積み上げられるかが、掲げる“トップ6”到達のカギとなるだろう。

相模原DBは、規律と意志で勝ち切るチームへと歩み始めた。今回の逆転劇は、その確かな第一歩だ。

(宮本隆介)

三菱重工相模原ダイナボアーズ


三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(左)、吉田杏キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「今週の月曜日に全員でわれわれのDNAの話をしました。とても大事な1週間だと捉えていましたし、この1週間はいい学びになりました。われわれのDNAはハードワークです。

今日の試合は、前半は少しミスが多かったですが、そういうこともあります。後半は本当にわれわれのDNAであるハードワークやタックルばかりが見えました。『役割、役割、役割』、それがわれわれのDNAです。今日も本当に楽しかったです。選手がわれわれのDNAをしっかり体現してくれたからだと思います」

──先週の試合が雪で中止になりました。そのことは今日の試合にどう影響したと思いますか。

「雪で試合が中止になったのは日曜日でしたから、今週は6日間の準備期間でした。最初の判断は月曜日から始まります。今週は普通の週でした。だからプランニングが一つ変わりました。試合がなくて残念でしたが、次の日にはみんな気持ちを切り替えて入りました。

仕事量や練習も、試合以外は1週間まったく同じですね。試合の準備も最後の最後までしていたので、メンタル的に少し疲れも出ました。そういう意味では試合があったような1週間ではありました」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
吉田杏キャプテン

「今週のスタートから『自分たちのDNAとは何か』、言葉では表せない人が見て感じられるものにこだわりを持って1週間取り組んできました。前半は少し後手に回って、判断ミスやハンドリングエラーがありました。しかし後半は、自分たちのDNAであるハードワークという、自分たちが今までやってきたことが出た試合だったと思います。正直、結果が出ずに苦しい、光が見えないトンネルのような期間が長く続きましたが、自分たちがやってきたことが間違っていないということを今日は証明できた試合だったと思います」

──後半、具体的にどういうところを良くしていったか、フォーカスしていたか教えてください。

「ここ数試合、自分たちが苦しめられているのは規律の部分でした。先週は試合がなかったですが、その先週から規律の部分について厳しく言い続けてきました。それはレフリーに対して、クリアにブレイクダウンすること、オフサイド、それにタックルの技術を見せるかということです。そうしたところは今日クリアに見せられたのかなと思います。

あとは、自分たちのDNAである、どれだけハードに自分たちの色を出せるかというのも1週間こだわってきました。完璧ではなかったですが、いいところのほうが多かったと思います。喜ぶのは今日までにして、来週は次に向けてまた準備が進むと思うので、そこにフォーカスを向けて頑張りたいです」

三重ホンダヒート


三重ホンダヒートのキアラン・クローリー ヘッドコーチ(左)、フランコ・モスタート ゲームキャプテン

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「まず、三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)のみなさん、勝利おめでとうございます。本日の試合において、ファイト、そして"逆転を必ずする"という強い意志を見せた結果だったと思います。われわれとしては非常に悔しい結果です。チャンスはいくつか作ることができていましたが、それをモノにすることができませんでした。一貫性のなさ、そしてミスを重ねてしまったところで逆転を許し、最後にはボーナスポイントすらも逃してしまいました。非常に悔しいです」

──先週の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦と比べて、今週の1週間の準備の段階で、相模原DB戦に向けて何か変化はありましたか。

「準備に関して、特に変えたところはありません。前回は非常に一貫性のある良い試合運びができていましたが、今週はまた新しい週であり、新しいチームとの対戦です。プレーオフや優勝を目指すのであれば、毎週高いパフォーマンスを積み重ねていくことが重要ですが、本日はエネルギーや精度といったところで一歩及ばなかったと感じています」

三重ホンダヒート
フランコ・モスタート ゲームキャプテン

「相模原DBのみなさん、勝利おめでとうございます。本日の試合、相模原DBが強い覚悟を持って臨んでいたことは分かっていましたし、風が強く、難しいコンディションでした。ボックスキックなど、さまざまな面でわれわれにミスがありましたが、修正できるものではあります。次節に向けて、自分たちにフォーカスして良い糧になるように準備していきたいです」

──試合終了直後のハドルの中で、メンバーにどのようなメッセージを送りましたか。

「選手たちには『一つ、気づきにしなければならない』と伝えました。先週のように、BL東京といった大きなチームに勝つと、どうしても次の試合に向けて気持ちが緩んでしまう部分があるかもしれません。しかし、ハードワークを続けなければなりません。スイッチを切り替えるという意味でも、『次は新しい試合、新しいチャレンジであり、まったく別の日なんだ』ということを伝えました。相模原DBさんは素晴らしいパフォーマンスでしたが、われわれとしては自分たちのミスが重なってしまったので、そこを修正して次節に臨みたいです」