今シ…

 今シーズンのファイティングイーグルス名古屋は、ルーベン・ボイキンスーパーバイザーコーチを迎え新たな体制でシーズンを戦っている。ロスターには2000年以降に生まれた若手が増えた。そのようなチーム状況の中、フィリピン出身のフランシス・ロペス、アメリカ挑戦を経てBリーグ入りした須藤タイレル拓などが台頭。コート上では今まで以上に英語が飛び交うようになった。

「若い選手がたくさんいる中で、やっぱり中堅になる僕が見せていかないといけないなと。プレー面だけじゃなくて、プロとして(のあり方)もそうですし、小さいことですけどコミュニケーション多くとることも心がけています」

 意識の変化を語るのは、27歳の杉本天昇だ。FE名古屋での3年目を送るシューティングガードは、昨シーズンは先発出場が「0」だった。しかし、今季はここまで19試合でスターターを務め、プレータイムは1試合平均17分46秒。平均6.9得点2.1リバウンドと、スタッツ面でも昨季を上回る数字を残している。

 メンバー刷新に伴い、自然とチャンスが巡ってきたという見方もある。だが、現在のポジションは自らの手でつかみ取ったものだ。

 ボイキンSVCはFE名古屋へ加入する際、「杉本はオフェンス型の選手ということを色んなコーチから聞いた」。事実、杉本は抜群のシュート力を武器に得点を量産できるスコアラーだ。とはいえ、ボイキンSVCもチームの再建を任された以上、指揮官として譲れない部分がある。

「私はディフェンスにプライドを持っています。練習の初日から、選手全員に対して『コートに立ちたければディフェンスをすること。ディフェンスチームにならなければこのチームは勝てない』という話をしました」

 ボイキンSVCはディフェンスの心構えからポジショニングまで、細部まで突き詰める指導を徹底。杉本もこれまで以上にディフェンスへの意識を研ぎ澄ませ、日々ハードワークを積み重ねた。

「ルーベンには、(コンセプトの)ピックアップハイとクラッシュハイサイドという言葉を毎日のように言われていますし、やっぱりディフェンスを鍛えなければ試合に出られないと思いました」

 杉本が信頼を勝ち取った理由は、単にディフェンス力を強化しただけではない。ボイキンSVCが驚いたのは、戦術理解と実行力のはやさだ。ボイキンSVCは確かな裏付けをもって言葉を紡いだ。

「杉本が素晴らしい選手であることは間違いありません。特に何が優れているかというと、私が求めていることを敏感に察知して、それを理解する能力に長けています。さらには理解から実行につなげるまでの速度がすごくはやいという点が、彼が特別な選手である要因だと思っています。初日から私の考えをすごく深く理解し、実行に移してくれたのが杉本でした。試合では素早くディナイ、ピックアップをして、リバウンドを取るためには毎回クラッシュしなければいけません。彼は毎ポゼッションでそれを遂行できることが強みで、その結果、元々の強みであるオフェンス、さらにはディフェンスでもチームに貢献してくれています。彼から学べることはたくさんあるので、他の選手も学んでほしいです」

 前線から激しいプレッシャーをかけ、「ビッグマンを助けたい」と果敢にリバウンドにも飛び込む。もちろん、攻撃に転じれば天性の得点力でタフショットでさえも決めてみせる。泥臭く、かつ華やかにコートで躍動する姿こそが今シーズンの杉本天昇である。

「自分はオフェンスとかシュートが好きなんですけど、ディフェンスからオフェンスにつなげるのが今のチーム。ディフェンスはチームのコンセプトを徹底して、オフェンスではもう少し大事な場面でシュートを決めるようになりたいと思います」

 その言葉には、スコアラーとしての矜持と、チームのために変わろうとする意志が共存していた。

文=小沼克年