近年、アンダースローの投手は絶滅危惧種と呼ばれている。NPBの現役では與座 海人投手(西武)、下川 隼佑投手(ヤクルト)…

近年、アンダースローの投手は絶滅危惧種と呼ばれている。NPBの現役では與座 海人投手(西武)、下川 隼佑投手(ヤクルト)、鈴木 健矢投手(広島)など、5投手とごくわずか。加えて、アンダースローは一般的に180センチ未満の上背がない投手がチャレンジする投法としても知られる。現在、187センチの高橋 礼投手(西武)が大型サブマリンの代表格となり、NPBにおけるアンダースローの歴代最高身長となっている。

 その歴代最高身長より5センチ高い192センチのサブマリンとして2026年のドラフト候補に挙がっているのが、神奈川大の松平 快聖投手(市原中央出身)だ。

「この身長でアンダースローをやっている投手は日本のどこを探してもいない」と松平自身が語るように192センチのアンダースローはまさに希少中の希少と言える。

アンダースローに転向後に身長が10センチ以上伸びるも…

松平は市原シニア(千葉)に所属した中学時代、投手に挑戦。しかし、「当時は身長が高くなく、球速も遅く、特徴のない投手だった」と振り返る。

 転機となったのが、当時の監督からの助言だった。身体の回転が縦回転より横回転の方が得意という評価を受けて、オーバースローから転向。当初は腕を下げたサイドスローだったが、試行錯誤を繰り返すうちにアンダースローへとたどり着いた。そして、その間に身長が急成長し、中学卒業時点で185センチまで伸びていた。185センチはプロでも大型に分類され、上から投げれば、角度が大きな武器になり得る。

「身長が伸びて、上から投げてみたいという気持ちもありましたが……。結果が出たのは、アンダーでした。練習で上から投げたこともありましたが、ストライクが入らなかったです」とアンダースローで勝負する覚悟を決め、高校も自分の投げ方を尊重してくれた市原中央(千葉)に進んだ。

 市原中央では4番・エースで活躍し、プロ注目選手として取り上げられるまでに成長した。一時は高卒プロも頭をよぎったが、力不足を感じ、大学進学を決断。注目選手となっていた松平のもとには、東都リーグの名門大学など、数多くのチームから声がかかっていた。

 その中で、「(神奈川大の)岸川監督は自分の良い所だけでなく、ダメな所も伝えてくれ、こうしたら伸びていくというのを明確に伝えていただきました。この監督の下であれば、プロに近づける」と神奈川大への進学を決めた。

文武両道を体現し、大学でもエースに成長

神奈川大では1年春のリーグ戦から登板。2年時からは先発の一角を任され、同冬には松山で行われる大学日本代表候補の強化合宿に招集された。3年時にはチームのエース格となり、春・秋連続で全国大会の出場に貢献した。12月には2年連続で松山合宿に選出され、早くも2026年のドラフト候補に名前が挙がっている。

 今や神奈川大の中心選手だが、指揮を執る岸川雄二監督は「頭もよく、ここまで授業もフルで単位を修得している。まさに神奈川大学の模範生」とプレー以外の面でも太鼓判を押す。

 松平も「市原中央高校の時から文武両道が教訓になっていましたし、学業をおろそかにすると野球にも響いてくるのは、高校の時から実感しています。当たり前のことを当たり前にやることが野球においても勉強においても大事になってくる」と文武両道を心がける。

アンダースローならではの苦労も…

アンダースローは希少性が高いゆえ、どうしても投げ方を教えられる指導者には限りがある。その点で松平も苦労は多いが、工夫を重ねながら、レベルアップに励んでいる。

「アンダースローについて教えてくれる方がいないので、自分1人でやっていかなければならないのは難しいところです。知り合いにアンダースローがいるので、その彼に助言を求めるなど、アンダースロー仲間との会話が自分にとって、良い機会となっています」

 その一方で、オーバースローの投手から得られるものもあるという。チームメイトの鈴木 孝介投手(帝京可児出身)から握りを教わり、ツーシームを習得。松山合宿では他大学の選手から握りを教えてもらうこともあった。

 練習方法についても基本的にオーバースローの投手と変わらないというが、「アンダースローの投手にとって、体重移動とその再現性は重要になるので、20キロぐらいの重り(バー)を持ちながら、投球動作を繰り返す練習を取り入れています。投球フォームの中での形でトレーニングすることを心がけています」

 理想としているのは、ロッテで活躍した“ミスターサブマリン”こと渡辺俊介氏だ。渡辺氏が2025年まで監督を務めていた日本製鉄かずさマジックと神奈川大学は毎年オープン戦を組んでおり、助言を受ける機会にも恵まれた。渡辺氏は世界一低いサブマリンと称され、地上約3センチからボールをリリースする。松平も現在は地上約5、6センチとアンダースローの中でもかなり低い位置から投球している。慣れない球場のブルペン練習では地面にぶつけてしまうこともあるというが、さらなる高みを目指し、試行錯誤を続けている。

「打者からの視点を考えた時にリリースをもっと低くしたいです。ただ、打者の目を気にしすぎて、自分を見失っては元も子もないので、打者の目を気にしつつ、自分の投球をできる高さを求めていきたいです」

リーグ通算20勝&大学日本代表入りし、ドラフト支配下指名へ

大学ラストイヤーを迎える2026年、チームは日本一の目標を掲げ、個人としては支配下でのドラフト指名を目指す。支配下指名を勝ち取るため、いくつかの目標を設定している。

「3年秋は悔しい結果(リーグ戦防御率5点台)に終わってしまったので、まずは先発としてもう一度戦い抜きたいです。ここまでリーグ戦で15勝させてもらっているので、リーグ通算20勝を目指していきたいです」

 春のリーグ戦、全国大会後には大学日本代表の直前候補合宿、そして本戦が控える。毎年12月に行われる代表候補合宿には2回参加しているが、直前6月の平塚合宿には選ばれた経験がなく、昨年も大学日本代表入りを逃している。

「昨年は平塚合宿に同じアンダースローの渡辺 向輝さん(東京大)が呼ばれていて悔しい思いをしました。2026年は大学日本代表にも選ばれて、プロ入りに近づく活躍を見せていきたいです」

 現在の最速は3年春に計測した138キロ。「自分の場合、球速にこだわりすぎるとそれだけの投手になってしまう」と前置きをしつつも、「スケールは大きく持ちたいので、140キロは突破したい」と球速UPの目標も口に出した。

 ドラフトでの支配下指名に向け、大学ラストイヤーの活躍に期待がかかる。