(9日、ミラノ・コルティナ冬季オリンピック〈五輪〉スノーボード女子ビッグエア) 腹は決まった。 ふうっと白い息を吐くと…

 (9日、ミラノ・コルティナ冬季オリンピック〈五輪〉スノーボード女子ビッグエア)

 腹は決まった。

 ふうっと白い息を吐くと、村瀬心椛(ここも)(TOKIOインカラミ)は力強くポンポンッと胸を2回たたいた。

 「そりゃあ金でしょ。絶対に決めてやる」

 スノーボード女子ビッグエア決勝。最終3回目だ。地上75メートルの高さから、21歳は勢いよく滑り降りていった。

 一度沈み込んだ体がジャンプ台から高く浮き上がる。空中で、軸を斜めに縦方向へ3回転。横にもくるりと回った。女子では珍しい大技「トリプルコーク1440」だ。

 着地がぴたりと決まった瞬間、「鳥肌がブワーッて立った」。そこから先はあまり覚えていない。自然と右手を突き上げていた。気づいたら涙も出ていた。

 「もう感情がぐちゃぐちゃ。頭が真っ白になった」

 次々に駆け寄ってきた各国の選手に抱きしめられ、ようやく「ちゃんと決められた」ことに気づいた。

 89.25点。この技を反対方向に回って成功させた1回目との合計で179.00点をたたき出し、逆転でトップに立った。

 スノーボードで日本女子初の金メダルだった。

 17歳3カ月で出場した2022年北京五輪では銅メダルを手にした。10年バンクーバー五輪のフィギュアスケートで銀メダルに輝いた浅田真央の19歳5カ月を塗り替え、日本女子の冬季五輪最年少メダリストとなった。

 4年後のこの日、3回目に挑む直前に表彰台は確定した。ただ、そのままでは3位だった。

 4年間の記憶がよみがえる。「前と同じ色は嫌。成長を示したい」。それが、リスクを負ってでも賭けに出た理由だった。左足首には3年前に手術した際のボルトがまだ2本入っている。が、迷わなかった。

 2日前、今大会の日本勢金メダル第1号となった男子の木村葵来(きら)とは同い年だ。遠征先などで一緒に練習をする間柄。「どんな感触なの?」とメダルを触らせてもらった。

 でも「別物」だった。自分でつかみ取った金メダルは「重みも触り心地もぜんぜん違った」。

 競技を始めた小学1年の頃から夢を聞かれると、決まって「オリンピックで金メダル」と答えてきた。

 表彰台の真ん中から見る景色は、「21年の人生で一番きれいな景色だった。本当に信じられない」。泣いて、笑って、また泣いた。零下3度の夜。雪景色の中で村瀬の表情が輝いた。(山口裕起)