<大相撲初場所>◇13日目◇23日◇東京・両国国技館ファンから「あたみん」の愛称で親しまれる、現役屈指の癒やし系、西前頭…

<大相撲初場所>◇13日目◇23日◇東京・両国国技館

ファンから「あたみん」の愛称で親しまれる、現役屈指の癒やし系、西前頭4枚目の熱海富士(23=伊勢ケ浜)が、ついに覚醒間近だ。西前頭12枚目阿炎との3敗対決を突き落とし。優勝争いトップで2敗の大関安青錦との1差を守った。今場所は連敗発進も、両横綱を9、10日目と破り、2日連続の金星。前日12日目に安青錦に敗れたものの、連敗せずに好調を維持して残り2日。逆転で静岡県出身として初優勝を目指す。

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予想外の展開でも、まるで動じなかった。熱海富士は、突き、押しを得意とする阿炎から、立ち合いでかち上げを受けた。それでも構わず前に出た。相手は一瞬でも顔を横向きにさせ、熱海富士の視界から消えてから運動量で上回って白星を狙った。だが幕内最重量195キロの大きな体は、それだけで武器だった。圧力で吹っ飛ばし、次の瞬間に左で突き落とし。わずか1秒7で決着をつける完勝で、優勝争いに生き残った。

取組後は、報道陣の取材にほとんど応じなかった。先代師匠の宮城野親方(元横綱旭富士)に「相撲に集中しろ」と言われ、始めたことがきっかけだが、半ばルーティンのようになっている。3場所ぶりの2桁白星到達の感想を求められても、この日、序ノ口で全勝とし、千秋楽の優勝決定戦進出を決めた付け人の蒼富士を指名し「彼が7戦全勝なので彼に聞いてあげてください」と、けむに巻く発言。そんな“おとぼけ”ぶりも、ファンの心をわしづかみにしてやまない。愛称「あたみん」で親しまれている。

代わってこの日、NHKテレビの中継で解説を務めた師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱照ノ富士)が語った。取組前には「(阿炎は)考えさせられることが多い力士なので。焦ることなく、圧力をかけていけばいいと思う」と、この日の展開を予言するように話していた。体を生かし、圧力をかければ屈指ということは、現役時代から師匠が感じていたこと。加えて取組後は「今場所は足を前に出すことをいつもより意識している。(そのため)落ちなかったのが良かった。徐々にこうやってできるようになってくれればうれしいですね」と称賛。普段は厳しい師匠のそんな言葉が聞こえたのか、ニコニコと笑顔で風呂に入っていった。

すでに安青錦との対戦を終えており、自力で逆転優勝はできない。だが“笑う門には福来る”。今場所の2日連続の金星も、満面の笑みが話題となった。静岡県勢初の賜杯へ。静岡県の代表的な観光地の名を冠した熱海富士がつかむ日が近づいてきた。【高田文太】

◆熱海富士の優勝争い 幕内2場所目、東前頭15枚目の23年秋場所は、11日目を終えて10勝1敗と、後続に2差をつける単独首位。だが残る4日は、いずれも上位との対戦を組まれて1勝3敗。11勝4敗で並んだ大関貴景勝(現湊川親方)との優勝決定戦に進出したが、はたき込みで敗れ、優勝同点に終わった。西前頭8枚目で臨んだ翌九州場所も13日目を終え、当時大関の霧島と並び11勝2敗でトップだった。だが14日目、千秋楽と連敗。そこで連勝した霧島に、最後は2差をつけられて優勝次点に終わった。昨年名古屋場所も13日目を終えて10勝3敗。ともに前頭の安青錦、琴勝峰を1差で追っていた。だが14日目に4敗目。2敗を守り、その後、優勝する琴勝峰と2差がついたため、優勝の可能性が消滅した。