サッカー日本代表、そしてフランスのスタッド・ランスでプレーする中村敬斗。2025年は、彼のサッカー人生にとって、まさに…

 サッカー日本代表、そしてフランスのスタッド・ランスでプレーする中村敬斗。2025年は、彼のサッカー人生にとって、まさに“天国と地獄”を味わう激動の1年だった。栄光と挫折、その両方を味わった25歳のアタッカーは今、何を思うのか。目前に迫った2026年北中米ワールドカップへの思い、そして未来への展望を、彼自身の言葉で語ってもらった。(全3回/第2回)

■戦術は無視して「本当に自由に」

 リーグ・アンと2部リーグ(リーグ・ドゥ)では、もちろんレベルの差はあります。

 リーグ・アンのほうがレベルは高いし、点を取るのも難しい。ただ、今の僕たちのチームは、正直まだリーグ・アンで戦えるレベルにはないと感じています。昨シーズンから選手もほとんど入れ替わりましたから。

 どこのリーグでプレーするにしても、僕一人の力でどうにかなるものではありません。結果を残し続けるのは、決して簡単なことではないんです。

 最近のプレーを見て、「左サイドに張っているだけでなく、いろいろなところに顔を出して、チャンスメイクをしている」と感じる方がいるかもしれません。

 本来、僕はサイドに張ってボールを受け、そこから仕掛けてシュートやクロスを上げるプレーが好きです。でも、今のチームは、僕が張っていても、なかなかパスが出てこないことがある。だから、自分からいろいろな場所に顔を出して、とにかくボールに触り、チャンスを作り、自分でも点を取る。

 ある意味、戦術は無視して、攻撃に関しては本当に自由にやらせてもらっています。

 2部でのプレーは、自分のプレーの幅を広げる絶好の機会だと、今はプラスに捉えています。以前は右サイドの伊東純也選手からのクロスに合わせるのが、ランスの必勝パターンでした。今は僕が起点となり、左右両サイドからチャンスに絡んでいく。得意とする左斜め45度からカットインしてのシュートだけでなく、得点パターンを増やすことを常に意識しています。

■持った瞬間「絶対パスが来るなって」

 夏の移籍騒動の影響で、スタッド・ランスで試合に出ていなかったこともあって、9月のアメリカ遠征では日本代表に選出されませんでした。

 もし、普通に移籍できていたら、あるいはチームが降格していなかったら、選ばれていたかもしれない。そう思ったこともありました。でも、先ほども言ったように、僕はそれで腐るような人間ではありません。

 ランスでプレーを再開してすぐ、10月の代表シリーズに呼んでいただきました。そして、ブラジル戦。僕たちは2点のビハインドを背負っていましたが、後半、僕のゴールで同点に追いつくことができました。

 あの得点のアシストは、ランス時代の相棒、伊東純也選手からのクロスでした。純也くんがボールを持った瞬間、「間違いなく絶対パスが来るな」と確信していました。そして、本当に完璧なクロスが来た。「これを決めなければ…」というプレッシャーはありましたが、うまく合わせることができて良かったです。

 走り込みながらのシュートだったので、体が流れてボールが浮いてしまうことだけは避けたかった。「とにかく叩きつける」ことだけを意識して打ちました。

 子どもの頃、ロナウジーニョ選手に憧れていたので、テレビで見ていたカナリア色のユニフォームのブラジル代表からゴールを決めて、しかも日本代表がブラジル代表から歴史的な初勝利を飾ることができた。なんだか、夢が現実になったような、不思議な気持ちでしたね。

 もちろん、これは親善試合なので、本番とはまったく違います。ワールドカップ本大会で、これから対戦するオランダ(FIFAランキング8位)のような強豪相手にゴールを決めて、チームを勝利に導けたら、それこそが本物。もっと最高だと思います。

■森保監督の指示「シャドーで入るから…」

 11月のボリビア戦でも、ゴールを決めることができました。後半から左シャドーのポジションで投入され、まずは町野修斗選手のゴールをアシスト。その7分後、今度は上田綺世選手とのコンビネーションから、自分でゴールネットを揺らしました。

 あのゴールシーンは、僕の得意な形でした。上田選手からの落としを受けるとき、後ろから相手ディフェンダーが来ているのは分かっていました。だから、得意のフェイントで少しズラしてシュートコースを作ったんです。

 あの状況なら、キーパーは間違いなくファーサイドに跳ぶだろうと読んでいました。だから、あえてディフェンダーの股間を狙った。股間を抜ければ、多少コースが甘くても入る可能性が高い。他のディフェンダーも体を投げ出してブロックに来るので、その間を通すイメージでした。狙い通りに決まって、本当に良かったです。

 代表では22試合に出場して10得点。ここにきて、ゴールという目に見える結果が続いているのは、フランスへ移籍してから、そして今、2部リーグでプレーしている経験も含めて、日々積み上げてきたものが形になってきているからだと思います。プレーの幅が広がっている実感もあります。

 ボリビア戦では、1-0でリードはしていたものの、少し試合が膠着していました。僕が投入されるとき、森保監督からは「シャドーで入るから、ボールを受けてゲームメイクしてほしい」と指示を受けました。

 流れが良くない中でピッチに入ったので、まずはボールを引き出して、良いリズムを作ることだけを考えていました。結果的に、アシストとゴールでチームの流れを変えることができたのは、大きな自信になりました。

 ワールドカップ本番では、先発だけでなく、途中出場からの“ゲームチェンジャー”としての役割も重要になってくるはずです。どんな役割でも、チームの勝利のために全力を尽くす準備はできています。

中村 敬斗(なかむら けいと)。2000年7月28日生まれ、千葉県我孫子市出身。身長180cm。ポジションはフォワード、ミッドフィールダー。三菱養和SCユースを経て、2018年にガンバ大阪でプロキャリアをスタート。その後、FCトゥウェンテ(オランダ)、シント=トロイデンVV(ベルギー)、LASKリンツ(オーストリア)など欧州のクラブを渡り歩き、2023年夏からフランスのスタッド・ランスに所属。2024-25シーズンにはリーグ・アンで日本人選手最多となる11得点を記録。各年代別の日本代表に選出され、2023年3月にA代表デビューを果たした。日本代表としては通算22試合出場10得点を記録している(2025年11月時点)。

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