サッカー日本代表、そしてフランスのスタッド・ランスでプレーする中村敬斗。2025年は、彼のサッカー人生にとって、まさに…

 サッカー日本代表、そしてフランスのスタッド・ランスでプレーする中村敬斗。2025年は、彼のサッカー人生にとって、まさに“天国と地獄”を味わう激動の1年だった。 栄光と挫折、その両方を味わった25歳のアタッカーは今、何を思うのか。目前に迫った2026年北中米ワールドカップへの思い、そして未来への展望を、彼自身の言葉で語ってもらった。(全3回/第3回)

■「U-17W杯で対戦した選手も」

 ワールドカップ本大会を前に、3月にはイングランド代表(FIFAランキング4位)との親善試合が組まれています。サッカーの聖地、ウェンブリー・スタジアムで、世界トップクラスのチームと対戦できるのは、本当に楽しみです。

 日本は過去、イングランドに1分け2敗と、まだ勝利がありません。ブラジル戦のように、歴史を変える一戦にしたいですね。

 U-17ワールドカップで対戦したフィル・フォーデン選手(プレミアリーグ マンチェスター・シティFC所属、2023-24シーズンのプレミアリーグ年間最優秀選手)もいるでしょうし、個人的にも“特別な思い”があります。

 向こうもワールドカップ前、最後に近い強化試合になるはずなので、間違いなくベストメンバーで来るはず。そこで自分がどれだけやれるのか、今からワクワクしています。

 そして、6月にはいよいよ北中米ワールドカップが開幕します。僕たちのグループFには、オランダ、チュニジア、そして欧州プレーオフの勝者が入りました。

 ポット1の強豪国と当たることはわかっていたので、どこと当たっても大変な試合になる覚悟はできていました。オランダ代表の選手は、そのほとんどがプレミアリーグなどヨーロッパの5大リーグでプレーしています。

 僕も19歳の頃にオランダのFCトゥウェンテでプレーしていたので、そのレベルの高さは肌で感じています。当時、アヤックスやPSVといった強豪からゴールを決めることができたのは大きな自信になりましたが、国を代表する選手たちの実力はまた別物だと考えています。厳しい戦いになることは間違いありません。

 チュニジアも非常に手強い相手です。2023年10月に対戦したとき、僕はケガでベンチから見ていましたが、前半はなかなかチャンスを作れず、非常に難しい試合だったのを覚えています。本大会では、さらに厳しい戦いになるでしょう。

 グループステージを1位か2位で突破すれば、決勝トーナメントではブラジルかモロッコと対戦する可能性が高いと聞いています。一般的にはブラジルのほうがサッカー王国として知られていて強敵だと思われるかもしれませんが、サッカーを知っている人なら、前回のカタールW杯でベスト4入りしたモロッコがアフリカで一番強いチームだと分かるはずです。パリ・サンジェルマンに所属するアクラフ・ハキミ選手のような世界トップクラスの選手、世界一のサイドバックと称される選手もいますし。僕自身も彼とはリーグ・アンやフランス・カップで対戦した経験もあります。モロッコは、南米やヨーロッパ以外の国で最も優勝に近いと言われるほどの強敵です。

 でも、今はワールドカップのことは考えすぎないようにしています。それよりも、目の前のリーグ戦、1試合1試合に集中すること。それが一番大事だと思っています。

 この夏は、僕のサッカー人生にとって、最大の分岐点になると考えています。夢である、ワールドカップに出場することができるかどうか。だからこそ、一日一日の練習、目の前の試合に全力を注ぐだけです。

■フィジカルコーチにも「強くなった」

 最近、体のコンディションが非常に良いと感じています。特に、体幹が強くなった実感がありますね。

 昨シーズンは股関節を痛めることが多かったのですが、今シーズンはまったくありません。意識的に取り組んできたわけではないのですが、治療の一環で体幹トレーニングをやる機会が増えたんですね。

 先日、チームのフィジカルコーチにも「体幹周りがすごく強くなった。だから今年は股関節を痛めないんだ」と言われて、確かにそうだな、と。

 2部リーグは、リーグ・アンに比べて試合の強度がそこまで高くない分、練習後に筋力トレーニングに時間をかけたり、体のケアに集中できている面もあります。体のバランスが良くなったことで、ドリブルのフェイントをかけたときに、相手がついてこられなくなる場面が増えたように感じます。

 25歳になり、サッカー選手としてもっと成長しなければならないという思いは常に持っています。2部への降格という経験も、今となっては自分の成長のために必要なことだった、いわば「必然」だったのかもしれないとさえ思っています。

■「応援してくださる」ファンの皆さんへ

 最後に、いつも応援してくださるファンの皆さんへ。

 2025年は、個人的にもいろいろな騒動があり、ご心配をおかけしたこともあったと思います。それでも、変わらず応援し続けてくれて、本当にありがとうございます。

 2026年は、僕のサッカー人生にとって一番大きな年になります。まずは1月から再開したリーグ戦で結果を出し続け、3月の代表メンバーに選ばれるように頑張ります。その先に、ワールドカップという大きな目標が見えてくるはずです。

 目の前のことを一つ一つ、全力でプレーしますので、これからも応援よろしくお願いします。

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 天国と地獄。2025年の中村敬斗を表現するなら、これほど的確な言葉はないかもしれない。リーグ・アンでの日本人最多得点記録という栄光から一転、チームの2部降格、そしてピッチ外でのたび重なる騒動。25歳の若きアタッカーは、あまりにも濃密で、過酷な1年を過ごした。

 しかし、インタビューを通じて我々が目の当たりにしたのは、逆境をものともしない、彼の驚くべき精神的な強さだった。

「サッカー人生で腐ったことは一度もない」。その言葉通り、彼は決して下を向かなかった。むしろ、2部でのプレーを「自分のプレーの幅を広げる絶好の機会」と捉え、心身ともにさらなる成長を遂げている。

 その進化は、日本代表でのプレーにも如実に表れている。ブラジル、ボリビアといった強豪相手にゴールを奪い、膠着した試合の流れを変える「ゲームチェンジャー」としての役割も担う。彼のプレーからは、どんな状況でも結果を出すという強い覚悟と、サッカーを心から楽しむ純粋な喜びが伝わってくる。「この降格も必然だったと思う」。そう語る彼の表情は、晴れやかだった。

 すべての経験を糧に変え、より高みを目指す。2026年、中村敬斗は北中米の地で日本サッカーの新たな歴史を刻むための準備を、着々と進めている。

中村 敬斗(なかむら けいと)。2000年7月28日生まれ、千葉県我孫子市出身。身長180cm。ポジションはフォワード、ミッドフィールダー。三菱養和SCユースを経て、2018年にガンバ大阪でプロキャリアをスタート。その後、FCトゥウェンテ(オランダ)、シント=トロイデンVV(ベルギー)、LASKリンツ(オーストリア)など欧州のクラブを渡り歩き、2023年夏からフランスのスタッド・ランスに所属。2024-25シーズンにはリーグ・アンで日本人選手最多となる11得点を記録。各年代別の日本代表に選出され、2023年3月にA代表デビューを果たした。日本代表としては通算22試合出場10得点を記録している(2025年11月時点)。

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