日本は韓国戦で組織としての対応が試されそうだ(C)Getty Images U-23アジアカップ準々決勝の日本対ヨルダン…

日本は韓国戦で組織としての対応が試されそうだ(C)Getty Images

 U-23アジアカップ準々決勝の日本対ヨルダンは、両軍が1-1で120分を戦い抜いた後、PK戦に思いもしない結末が待っていた。

 まさか、まさかよ。2人目の道脇豊のシュートを、ヨルダンのGKが見事にセーブして拳を突き上げるなか、はじいたボールが風と回転を受けて数秒後、ころんとゴールに吸い込まれていく。息を潜めて見守る道脇。ヨルダンのファンは勝ち誇ったGKに対し、「志村!後ろー!」と叫んだとか、叫んでいないとか。

【動画】こんなPKは見たことが…一度はGKに阻まれるも上がったボールはそのままゴールへ 流れを引き寄せた道脇豊のPKシーンを見る

 生中継ではその前にアップ画に切り替わってしまい、スコアテロップも一時は「×」が付けられ、ゴールの瞬間はスルーされた。こんなPKは見たことが……Youtubeの面白動画以外では見たことがなかった。

 1人目のキック失敗と、この糠喜びセーブで流れは決まった。キッカー全員が決めた日本が4-2でPK戦を制し、準決勝へと駒を進めることになった。

 それにしても、日本は大いに苦しめられた。グループステージを振り返ってもチーム戦術の出来は決して良いとは言えなかったが、幾人かの個が局面を圧倒し、3戦合計10-0と危なげなく勝利を重ねてきたところ。

 だが、そんな数日前が嘘のようだ。最大の要因は、日本が個で圧倒できなくなったことだろう。サウジアラビアを3-2で破ったヨルダンは、一段上の相手だった。グループステージではほぼ局面を制した日本だが、対ヨルダンでは逆にボールを奪い切れなかったり、アリ・アザイゼにドリブルで抜き去られたりと、個が劣勢に陥る場面が増えた。

 加えて、日本の特徴にも対策を打たれている。

 4-1-2-3(守備時4-4-2)の日本に対し、ヨルダンは5-2-3を敷き、MFとFWの2-3が真ん中に絞った五角形を作って、日本の縦パスを遮断してきた。グループステージでは圧倒的な違いを見せた佐藤龍之介や大関友翔も、時折は巧みにライン間でプレーしたが、時間が経つにつれ、ヨルダンの中絞り五角形の中で息苦しそうな様子を見せるようになった。

 そしてヨルダンは、日本のパスを引っかけた瞬間、FWや両ウイングが鋭くスタートを切ってカウンターを仕掛けてくる。このとき日本は、CB市原吏音と岡部タリクカナイ颯斗の2枚が、相手FW3枚を中心としたカウンターに晒され、ほとんどの場面で自陣深くまで後退させられた。小倉幸成のアンカー1枚ではカウンターの芽を摘むことはできず、両サイドバックの森壮一朗や梅木怜がカバーに下がっても、同時に相手のボランチやウイングバックが上がって来るので、相手の前進を止められない。

 トランジションで先手を取られ続けた日本は、ついに30分、そのカウンターから失点を喫した。「良い攻撃は良い守備から」とA代表の監督は言うが、それを実践したのはヨルダンのほうだ。佐藤、大関、それに小倉幸成を含めた3人は、この代表で質の違いを見せるMFだが、ヨルダンはその日本の長所を潰し、逆にカウンター発動の起点とした。

 こうしたかみ合わせの中、攻守で日本の鍵を握ったのはサイドバックだ。狭く閉じられた中央とは異なり、両サイドの森や梅木には直接マッチアップする相手がおらず、スペースがある。フリーでボールを持てる。

 こうした手持ち無沙汰とも言える状況に置かれた選手は、より主体的に判断してアクションを起こす必要がある。選択肢が多い中、守備ではCB2枚をカバーするか、小倉の脇へカウンターを潰しに出るか。ビルドアップにおいても、フリーでボールを受ける機会が多いので、どう攻撃を構築するか。

 前半は効果的な関わり方が少なかったが、後半になると、両サイドバックが動きを変えた。特に面白いプレーを見せたのは、左サイドバックの梅木だ。後半5分の古谷柊介の同点弾で起点になったランニングが典型的だが、梅木はヨルダンのボランチの背後を取るように斜めに中へ走り、ライン間に潜って縦パスを引き出すようになった。後半は何度も再現されたので、おそらく意図的な修正だろう。

 ヨルダンの守備は、最終ラインの5枚と、五角形ブロックを形成する5枚がそれぞれ異なるロジックで動いている。五角形ブロックは中への警戒は強いが、外はある程度ボールを持たせる。ゾーンの意識だ。一方、最終ラインの5枚は、横山夢樹、ブライアン世雄、石橋瀬凪の3トップをマークしつつ、高い位置へ出てきた日本の選手をマンツーマンで受け渡しながら捕まえる。

 梅木が真っすぐ左サイドを上がって来たら、ヨルダンはウイングバックが前へ出て捕まえるだけで、守備に混乱はない。ところが、後半の梅木は斜めにライン間へ潜ってきた。このレーンまたぎの横移動は、マンツーマン対応をしている5バックには捕まえづらい。しかも梅木は外から中へ、五角形ブロックの死角から出て行くので、ゾーン側のパスコース切りにも遭いにくい。

 梅木の斜めランニングは、ヨルダンにかなり効いたはず。ただし、慣れないせいか、日本側も味方同士でスペースを潰し合う場面が見られた。より連係を高めることは可能だ。

 このU-23日本代表(実質U-21)は、招集に際して所属チーム等の制限があるため、集まった選手は実力も経験もバラバラな印象を受ける。グループステージは、佐藤や大関、市原などJリーグでも名のある選手が躍動し、彼らに引っ張られるように3連勝した。

 だが、決勝ラウンドは甘くない。そんな日本の特徴を見透かすかのように、相手は飛び抜けた個を封じてくる。すると、このヨルダン戦のように、今まで控えめなサポート役だった選手が主体的に振る舞わなければならない状況、かみ合わせが自然と訪れる。

 U-23アジアカップ、ここからが面白いところだ。正直、グループステージは退屈すぎた。準決勝の相手は韓国になったが、もはや数人の飛び抜けたタレントに引っ張ってもらい、勝てるような相手ではないだろう。

 だからこそ、楽しみ。次にインパクトを残すのは誰か。

[文:清水英斗]

【関連記事】「世論を一変させる可能性が…」U23準決勝で日韓戦が実現 韓国メディアが「富士山を崩した男」に熱烈エール

【関連記事】森保ジャパンを襲う「勝てば勝つほど不安」の呪い 繰り返す歴史に終止符が打たれる、決定的な理由

【関連記事】「ワタルが居場所を取り戻す」布陣変更で光明か 遠藤航に“再浮上”の可能性「状況は近い将来、変わるはずだ」