林陵平×下田恒幸 プレミアリーグ前半戦総括 後編 イングランド・プレミアリーグのシーズン前半を試合中継の解説と実況でお馴…
林陵平×下田恒幸 プレミアリーグ前半戦総括 後編
イングランド・プレミアリーグのシーズン前半を試合中継の解説と実況でお馴染みの林陵平と下田恒幸の両氏が振り返る。後編はチェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナムと、日本人選手について話してもらった。
>>前編「アーセナル、シティ、リバプールの前半戦を振り返る」
【動画】林陵平×下田恒幸 プレミアリーグ2025-26前半戦総括 後編↓↓↓
【監督交代を決断したチェルシー】
林 チェルシーはまさかの監督交代でしたね。
下田 エンツォ・マレスカ監督はフロントと揉めたみたいですね。僕は彼がどのように最後までやりきるのかを見てみたかったです。
林 マレスカは相手によって選手の起用法を使い分けていましたし、やりたいことも見えていました。ただ、センターバックがいなかったのは難しかったと思います。
下田 今は5位ですが、この状況では十分にやっていたんじゃないですかね。(注:対談後の第21節終了後8位に)
林 あとはセンターフォワードも課題ですね。新加入のリアム・デラップは、周りにケンカを吹っ掛けるぐらいしかやっていないですね(笑)。
下田 確かに点取り屋のところですね。ジョアン・ペドロでは足りないですか?
林 彼のポジションはトップ下だと思うので、一番前の選手ではないですね。それでも中盤のエンソ・フェルナンデスとモイセス・カイセドは安定感がありました。
下田 シュートもうまいですし、全部解決できるカイセドはすごいですよね。
林 あとはウイングです。ペドロ・ネトは右でも左でも安定してプレーしていましたね。左はジェイミー・バイノー=ギッテンスもいましたが、アレハンドロ・ガルナチョが多く起用されていました。ただ彼は得点力が......(笑)。
下田 僕はリアム・ロシニアー新監督についての情報があまりないのですが、いかがですか?
林 ビルドアップは丁寧にやる印象です。3人目をうまく使いながら前進するので、長いボールを入れるというよりも、下からつなぎながら縦に運ぶイメージですね。基本ベースの4-2-3-1から、攻撃では状況に応じて3バック気味になるなど柔軟性もあります。
下田 では、マレスカ前監督が積み上げてきたものを継承する監督としては当たっていますか?
林 路線はズレてないので、そのスタイルはたぶん合っていると思います。伸びしろがありますし、後半戦も見ていきたいと思います。
【マンチェスター・ユナイテッドも監督交代】
林 続いてはマンチェスター・ユナイテッドです。
下田 このタイミングでのルベン・アモリム監督の解任には驚きました。
林 正直なところ、監督を代えるのであればもっと前のタイミングがあったと思いました。
下田 ちょっとよくわからなかったです。まだチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内のトップ4の可能性もありますよね。
林 現在は6位です(注:対談後の第21節終了後7位に)。
下田 解任は(アモリム前監督の)発言が原因なのでしょうか。彼は事を荒立てる発言を何度かしていて、例えば「マンチェスター・ユナイテッド史上最悪のチームである(2025年1月)」とか言わなくていいと思いました。僕はアモリムが自分で火種を作ったとニュースを見て感じています。
林 フットボール自体にあまり変化が見られなかったのも問題だと思います。
下田 シーズンが進んでも基本的に同じで、あまり変わりませんでしたね。
林 ずっと3-4-2-1に固定していましたが、スカッド的にはもう少し違うやり方があるのかなと思いました。何試合かは前線のタレントの個性を生かして、縦に速いフットボールをしていましたね。でも継続してはやらなかったので、アモリムが何をしたいのかが見えなかったです。
下田 同感です。
林 僕はずっと4バックを試したほうがいいという話をしていて、2025年末のニューカッスル戦では実際にやりました。それで勝利したのですが、その後にまた3バックに戻して、結局結果が出ずに解任となりました。(ケガ人の影響で)最終ラインも人が揃わなかったですし、最後は19歳のエイデン・ヘブンが重宝されていましたね。
下田 ヘブンが最後数試合の希望でしたよね。
林 期待されて獲得したベンヤミン・シェシュコも意外とハマっていないですよね。
下田 僕は(ブンデスリーガ出身の)シェシュコを擁護して見ていたのですが、この間の試合を見た時にちょっと怪しいなと思いました。前線の選手は動き直しを何度も入れることによって局面を変えるとかあるじゃないですか。それを丁寧にやると、もっと得点を決めることができるのかなと思います。
林 彼が持つポテンシャルはとんでもないものがあると思うので、動き出しの質や回数、ボックス内のポジショニングなどが洗練されたらストライカーとして伸びていくと思います。
【形がなくて苦戦のトッテナム】
林 次はトッテナムです。
下田 開幕前は林さんも含めてトーマス・フランク新監督に期待する声が多かったです。現状の問題はどこにあるのでしょうか。
林 フランク監督は守備の構築はできるので期待していました。でも、シーズン前から「自分たちがボールを持てる展開になった時に何ができるか」と言及していたのですが、ビルドアップに決まった形がなくて仕込めていないですよね。
下田 人任せが多いということですか?
林 人任せだから基本的にはセンターバックのふたりがプレスにハマってしまいます。サイドバックの立ち位置も細かく調整しておらず、ツーボランチもどこで受けるとか決めてないので前進が難しくなっていますね。
下田 ブレントフォード時代はボールを持たれる側だったので気にならなかったということですか?
林 そうですね。どちらかというと守備的なプランでカウンターを仕掛けていました。今のところトッテナムでのボール保持の局面は、構造的に見ると形がないですね。
下田 では、今のメンバーでも構造のところ何か明確にできると変わりますか?
林 変わると思います。基本的にサイドバックのレギュラーはペドロ・ポロとジェド・スペンスなのですが、先日の試合ではベン・デイビスが出場していました。彼が後ろに残る形で3枚を作ったら安定感が増しました。中盤もロドリゴ・ベンタンクール(1月7日の試合で負傷)はよく戦っていますが、起用法がはっきりとはしていないですよね。
下田 開幕当初はパリーニャとベンタンクールでスタートしましたが、現地メディアからも「ソリッドだが、ボールが動かないだろう」という指摘がありました。このふたりでは厳しいのでしょうか。
林 パリーニャは潰せますが、ボールを動かせないので厳しいと思います。あのタックルは好きですが、ビルドアップという部分ではボールを持てないです。中盤でゲームを作ることができるボランチが欲しいですよね。
下田 今季はイブ・ビスマもまったく試合に出られていないですよね。
林 前線はケガ人が多くて、ジェームズ・マディソンやデヤン・クルゼフスキ、ドミニク・ソランケが不在なのは痛いですね。
下田 長らく攻撃の軸になっていたソン・フンミンの退団も影響がありそうです。
林 このままではフランク監督も終われません。彼は勝つ確率を上げることができる監督だと思うので、期待して見ていきたいと思います。
【日本人選手の前半戦は?】
林 クリスタル・パレスの鎌田大地はいかがですか?
下田 年末にトッテナムとクリスタル・パレスの試合の実況をしたのですが、ケガの影響で試合に出場することができなかった「鎌田ロス」の影響を強く感じました。
ケガで離脱しているが、昨年はクリスタル・パレスの中心として活躍した鎌田大地
photo by Getty Images
林 クリスタル・パレスの前半戦は鎌田が中心で、シャドーとボランチの両方でプレーしていました。特にボランチでは完全に1番手でした。
下田 日本代表でも3列目の軸ですもんね。
林 今はハムストリングのケガで離脱中ではありますが、もう少しで戻ってくると思うので期待しています。
では、リーズ・ユナイテッドの田中碧はどうですか?
下田 田中碧は初ゴールを決めたチェルシー戦で一緒に実況・解説をしましたよね。あのようなミドルシュートが彼の持ち味ではあると思いますが、リーズのシステムが3-5-2に代わりました。となると、レギュラーに定着するためには他にも強力なライバルがいると感じています。アントン・シュタッハやブレンデン・アーロンソンが安定してプレーしていると被りますよね。
林 アンカーにもイーサン・アンパドゥがいます。キャプテンでロングスローも得意な彼も外せないので、田中はゴールを決めていますが、試合の最初からは使われないことが多いです。後半アディショナルタイムからの起用も多く、プレミアリーグの難しさを感じます。
下田 プレミアリーグで試合に出るのは簡単じゃないですね。
林 ただ彼自身コンディションは良いと思うので、継続しながらプレーしてほしいなと思いますね。
下田 ブライトンの三笘薫は、僕は恐らく昨季の後半あたりから、どこかしら違和感があったと思っていました。今季は足首を負傷して、復帰も想定より時間がかかりました。完璧に「ジャストフィット」というところまで休む時は休んで、ワールドカップに挑んでほしいなと思っています。
林 三笘はこの間解説したバーンリー戦で先発出場しました。いきなりDFカイル・ウォーカーと対峙したんですよ。まだ本調子ではないですが、簡単にはボールを失わないですし、ウォーカー相手に仕掛けたりして良さは見せることができていました。三笘が"いる"か"いない"かでブライトンの攻撃が大きく変わりますね(※対談後のマンチェスター・シティ戦でゴール)。
下田 違いますよね。
林 センターバックのルイス・ダンクとヤン・ポール・ファン・ヘッケが三笘の動きを見てボールを動かしていたので、チームとして彼に対する信頼を感じました。
下田 リバプールの遠藤航は試合に出ていないと試合勘の問題があるというのを、昨年11月のボリビア代表戦でも感じました。
林 今はもうアルネ・スロット監督のなかでは相当序列が下がっちゃいましたね。リバプールが昨シーズンから戦い方を変えたことで各ゲームの内容も難しく、クローザーで預けるっていう機会も減りました。
ケガをしてしまったので、半年後に控えるワールドカップを考えると、ここで移籍するのか残るのかもちょっと難しい判断にはなりそうです。でも、頑張ってほしいなと思って見ています。