ゴルフ記者が酒席でなにを語らうかというと、金や健康の話題こそあれ、結局は「ゴルフの話」になる。そのほとんどは取材メモに…
ゴルフ記者が酒席でなにを語らうかというと、金や健康の話題こそあれ、結局は「ゴルフの話」になる。そのほとんどは取材メモに埋もれた裏話や、隠れたホンネだ。今回は、そんな座談会の様子をチラ見せ。聞こえてくるのは選手の知られざる一面か、はたまた退屈な戯言か――。男女ツアー全4回に分けてお届けする。(編集部・合田拓斗)
女子ツアー編に参加するのは亀山泰宏記者、石井操記者、加藤裕一記者の3人。前編はLPGAツアーで躍進が続く日本勢の戦いぶりと、国内ツアーの可能性について。
<女子後編>ベテラン記者が唱える「高卒3年目理論」 2026年注目の顔ぶれ
<男子前編>記者が見た松山英樹の変化 日本ツアーのレベルは落ちたのか
<男子後編>第二の松山英樹、石川遼は現れる? 記者が選ぶ2026年の注目選手は
強さの理由
昨季の米女子ツアーでは、2勝で新人賞に輝いた山下美夢有をはじめ、竹田麗央、西郷真央、岩井千怜、岩井明愛、畑岡奈紗の6人が日本女子史上最多のシーズン計7勝を挙げた。年間ランキング上位20には国別最多の7人。まさに世界を席巻している状況だ。
石井:もう毎週のように日本勢が優勝争いをして、取材する側としても大変なくらいでした!(笑)
亀山:参戦した13人それぞれにコースとの相性や調子の良し悪しがあるなか、各試合で誰かしらがハマる感じはあった。でも、実力を考えたらそりゃ上位に来るよねって。麻痺してるのかもだけど、(日本勢の活躍に)驚きはなかった。
石井:竹田選手は飛距離もあるから、遅かれ早かれ勝つだろうとは思っていましたね。
加藤:いや、本当にすごいですよねえ。僕が現場に出始めたころは、米国で活躍する選手といえば岡本綾子さんくらいで。そのあとに小林浩美さん、宮里藍さんがおって、畑岡奈紗選手がつないで、渋野日向子選手がボカンと一発当てて…。徐々にできていた“流れ”が、一気に爆発したなと。
亀山:それまで遠かったものが近くなった感はありますね。男子ツアー前編でも話しましたが、やっぱり日本女子は国内にいたころから大ギャラリーの前でプレーしている。
加藤:ああ、なるほどな。
亀山:馬場咲希選手が以前「私にはない」と話していたけど、日本ツアー組の4人(山下、竹田、岩井姉妹)は特に、国内で何回も優勝争いを経験しているからね。
あとは、人にもよるけど、他国の選手と比べて練習量は多いかもしれない。11月「アニカ driven by ゲインブリッジ」の週の火曜とか、ものすごい寒さのなか早朝からコースにいたのは山下選手と古江彩佳選手だけだった。山下選手は、午前で終わった大会2日目も、日本にいるコーチで父の勝臣さんと電話をつないで夕方まで残っていた。世界トップレベルの技術がある選手がこれだけ練習しているのかって。
石井:馬場選手なんかも、練習してトレーニングして、そろそろ帰るのかなと思ったらまたパター練習に行ったりしていました。
亀山:でも、“スポ根”みたいにただガムシャラにやっているわけじゃない。目的がちゃんとあって、考えて時間を使っている印象。準備から自分のリズムをつかんでいるなと思う。
加藤:日本人がこれだけ活躍して、アメリカの記者とかから選手のこと聞かれたりせんの?
石井:ありますよ。「なんでこんなに強いの?」って私が聞かれたり。
亀山:そのテーマで記事にもなっていたみたいだね。
石井:そういえば、24年の「日本女子プロ」には韓国メディアの方が来ていました。日本の選手を注目しているんだなって。
亀山:日本人選手の現地インタビューは、他の日本人について聞かれるシーンが多かった。「刺激になっている?」とか。米国でもアウェー感はあまりないかも。といっても、いつも日本勢で一緒に固まっているわけではない。皆プロとして、自分のルーティンがちゃんとある。
加藤:以前は、米挑戦するならこれまでとスタイルを変えて…というのがあったと思う。でも、いまの選手たちはやることが変わっていない。日本時代のスタイルをベースに、続けていたらそれが海外でも通用した。“幻想”みたいなものが消えてきたのかもしらんね。「アメリカって難しい」から日本人が活躍するのが日常になって、じゃあ自分もと挑戦する選手が増えて。良い循環になっていると思います。
国内ツアーの変化とこれから
昨季の米女子ツアーに参戦した日本勢は13人。2024年の日本ツアー年間ランキング上位5人中4人(竹田麗央、山下美夢有、岩井明愛、岩井千怜)が高みを目指して海を渡った。加えて、小祝さくらが左手首痛で後半戦を全休したため国内のトップ層は様変わり。有力選手が次々と海外に挑戦する流れは、国内ツアーにどんな影響を与えたのか?
石井:昨年は複数回優勝者も少なかった(24年は8人、25年は4人)ですし、年間女王の佐久間朱莉選手はいましたが、圧倒的な存在は減ったように感じました。誰が勝ってもおかしくないフィールドだった。
加藤:せやね。米参戦した4人がいた24年は、30代以上の優勝者はイ・ミニョン選手(韓国)だけ。それが25年は7人(8勝)に増えたのは、上位層が抜けたからというのはある。正直、これまでちゃんと取材したことのなかった選手がいきなり勝つこともあった。だから、少なくとも25年に関しては層は薄くなったと僕は思いますね。
亀山:(上位層が抜けたから)フィールド全体のレベルは拮抗するよね。上と下の差が少ない。その中で佐久間選手は一つ勝って、そこから突き抜けていった。チャンスをつかめれば上に行ける可能性は広がった気がする。良い意味で、予想の難しいツアーになったのかな。次は誰がブレークするか、楽しみになった。
石井:米ツアーでの日本勢と同じように、「自分もいけるかも」という空気感が国内でも生まれた気がします。
加藤:それはありそうやね。最近はスポットで出た海外メジャーで結果を残す選手も増えているから、選手によっては、米ツアーに行かず国内に軸足を置くという考えもある。今後、日本ツアーの質が変わっていく気もする。
亀山:選択肢の一つにはなりそうですね。国内で突き抜けて、自信を付ければスポット参戦でも十分に戦える前例も増えているし。世界との距離が近づいているのが、いまの女子ゴルフ界という感じがする。
加藤:ツアー全体として、今年は勝負の年になると思いますよ。昨年はランク2位の神谷そら選手や、3位の河本結選手なんかはもっとやれたと思う。上位層が抜けたフィールドで1シーズンを終えて、今季は顔ぶれもほとんど変わらない。次の世代を担う選手がどれだけ出てくるかに期待したいね。
(後編に続く)