蹴球放浪家・後藤健生も、旅先で悩むことがある。食事がマンネリ化してしまうのだ。外食になるため、特に外国では無難なものを…
蹴球放浪家・後藤健生も、旅先で悩むことがある。食事がマンネリ化してしまうのだ。外食になるため、特に外国では無難なものを選びがちになる。だが、アジアで初めてワールドカップが開かれた年、蹴球放浪家は自分に難問を課した。地元メシによる自分の食事の「完全制覇」だ。
■旅先での食事の悩み
2002年の第14回アジア競技大会は、同年9月から10月にかけて韓国南部の釜山(プサン)広域市で行われました。
韓国の釜山では、2002年にFIFAワールドカップと「アシアド」の2つの大規模国際大会が開かれたことになります。
「アシアド」というのは、韓国で「アジア競技大会」を指す言葉。日本では一般的に「アジア大会」と呼ばれていますが、韓国では「アシアド」というのです。「オリンピアード」、「ユニバーシアード」に対して「アシアド」というわけです。
ですから、2002年大会のメイン・スタジアムは「釜山のアシアド競技場」、2014年の仁川(インチョン)大会のメイン・スタジアムは「仁川アシアド競技場」と呼ばれています。
ちなみに、中国では「亜運会」「亜州運動会」です。
僕も、「アシアド」を観戦するために約3週間ほど釜山に滞在しました(サッカーでは日本男子が準優勝、女子が3位)。そして、このとき、「滞在中には(朝食を除いて)すべて違う料理を食べよう」という誓いを立てました。「日本料理や西洋料理には逃げない。すべて韓国料理で」というルールです。
滞在が長期間になると、試合を観る以外にすることもなく、食べるものも毎日同じようなものになりがちでマンネリになってしまいます。それで、「毎日違うものを食べる」というルールをつくって、生活面での刺激にしようというわけです。
■韓国料理を食べ尽くす
釜山は海に面している都市ですから、魚介類が豊富です。珍味のホヤもたくさん獲れますし、ヌタウナギといった名物もあります。ヌタウナギは円口類の一種で魚類のウナギとはまったく別種の生物です。
また、「チョゲタン」は、アルコール度数の高いソジュ(韓国式焼酎)を飲んだ翌日にはピッタリの、あっさりした旨みたっぷりのアサリのスープでした。
肉類では、釜山は牛カルビで有名なところですし、もちろん豚肉の種類も食べ方もたくさんあります。「毎日違うもの」という目標を立てるには最適の街でした。
鶏も食べたし、アヒルも食べたし、ウナギも食べました。それでも、韓国料理が大好きな僕でも少しずつ飽きてきます。
「さらに変わった食材はないかなぁ……」と思って調べていたら、黒山羊を食べさせる店がたくさんある村があるというのを見つけました。
■目指すは世界遺産近くの村
釜山市中心部から地下鉄1号線で北に向かい、そこから西に行ったところに金井山(クムジョンサン)があります。朝鮮式山城だったところで(山城は街の人たちが籠城するために山頂付近に造られた城)の中腹の村に、黒山羊とアヒルを食べさせる店がたくさんあるということです。
世界遺産の梵魚寺(ポモサ)の周辺です。
黒山羊は韓国語では「フギョムソ」。「フク」が黒で「ヨムソ」が山羊。「ク」と「ヨ」の発音がリエゾンして「フギョムソ」になります。
ただ、当時の僕は、まだ韓国語がそれほどうまくしゃべれませんでしたから、地下鉄駅からタクシーに乗ってちゃんと行き先を言えるかどうか自信がなかったので、韓国語に堪能な女性サッカー記者を誘って村に辿り着きました。