2026年、石川遼は遠くカリブ海に浮かぶ島で始動する。昨年末に米ツアーの予選会を通過し、コーンフェリーツアー(KFT)…
2026年、石川遼は遠くカリブ海に浮かぶ島で始動する。昨年末に米ツアーの予選会を通過し、コーンフェリーツアー(KFT)の限定的な出場権を獲得。松山英樹らが主戦場にする世界最高峰・PGAツアーの下部に属する、いわば“2軍”ツアーで腕を磨く。1月11日(日)開幕の「バハマゴルフクラシック」を控えた渡航前、単独インタビューで心境を語った。(全4回の3回目。聞き手・構成/桂川洋一、服部謙二郎)
弱点はスイングじゃなかった 8年前の「おごりと逃げ」/石川遼インタビュー【1】
「シャローイングとハンドパス」スイング改造の経緯と自信 /石川遼インタビュー【2】
ジャンボ尾崎さんとの思い出 新1Wでシーズンイン/石川遼インタビュー【4】
米国再挑戦 そのとき妻は
米下部コーンフェリーツアー(KFT)参戦のため、石川が予選会に挑戦したのは2021年、24年に続いて25年が3回目だった。昨年、一昨年は「PGAツアー競技で50試合以上予選を通過した選手」のカテゴリーで2次予選会に出場。2年前、この資格が組み込まれたことは幸運だった。
「(2024年の)シーズン中に知りました。別の資格で行くことを考えていたので、(モチベーションアップなど)気持ちは変わらなかったですけど。でも僕、50回も予選通過していると思ってなかったので『調べてもらっていいですか』って聞いて」
2009年のスポット参戦時から数えてキャリアで87回、決勝ラウンドに進んだが、条件クリアが不安になるほど、米国には苦い思い出が多い。ところで、この情報をすぐに伝達したのは、アマチュア時代から20年以上に渡って連れ添うマネジャーである。
「(それこそが)マネジャーの仕事なのかもしれないですけど、昔から同じ方向を向いてくれていることに僕は感謝している。ずっと『世界にもう一度、出ていくためには』という視座で物事を見てくれる。(サポートスタッフとの)チームの忘年会でも和やかな雰囲気の中でひとり、『ここはまだスタート地点ですから』って引き締まっているんですよ(笑)」
「家族の反応? 両親は『楽しみだね』って感じで。妻は『またアメリカだね。私も時間のある時に行こうかな』って。最初の方の試合(バハマからスタートして中南米を巡る)はコースとホテルとの行き来だけ。周りが安全ではなく、外出もほぼできないらしいので連れていけないんですけど、アメリカでの試合が始まったら…と。ファストフードの『チックフィレイが楽しみ』って言ってました(笑)。有名なチキンソースがあって、スーパーマーケットにも売っている。最近のアメリカのお土産で一番、喜ばれたなあ」
“I know”で大爆笑 松山英樹の御用達ファストフード店での定番オーダー
隣の席に石川遼がいるかもしれない
ひょんなところで、プライベートの様子が垣間見えた。15歳でアマチュアにしてプロツアーで優勝、16歳でプロ転向、18歳で日本ツアーの賞金王…という輝かしい10代を過ごした。22歳だった2013年にPGAツアーに飛び込み、17年に撤退。34歳になった今も石川遼は日本で最も知られたプロゴルファーのひとりである。ただし、“目立ちたがり”であることを自認しても、立ち振る舞いはスター然としたものとは言い難い。
「電車?乗りますよ。全然、乗る。満員電車は乗らないようにしていますけどね。けがを避けるためじゃなくて…、経営者や会社の役員の方に話を聞くと、万が一(痴漢など)冤罪なんかのリスクを考えるべきだと。ただ、電車の方が時間を読めるし、ラクなことも多いでしょう。そもそも高校には電車で通っていたし」
「混雑は避けても、ファミレスに入ることもある。まったくイヤじゃない。静岡の『さわやか』(ハンバーグステーキチェーン店)も好き。基本的に人とコミュニケーションを取るのが好きなので。アメリカではエレベーターの中でも、知らない人同士でもあいさつをする。How are you?で始まってHave a good day.で終わるみたいな。他愛もないやり取りで声をかけ合えるのがうれしい」
「電子マネー? 使いますよ。PayPayにSuica、ID…。僕には小学校、中学校のときの友達が多くて、みんなで会うときも電子マネーで割り勘して。最近は『現金、やめようぜ』っていう感じになってるしね。スタバ(スターバックスコーヒー)でもモバイルオーダーで注文してパッと取っていく」
「好きなお酒はビールですね。アルコールは強くないけれど、“2位に12打差くらいつけて”ビール。(アサヒビールと契約しているから?)いやいや、そういうわけじゃなくて。何を言われたって、ビール。ビールのおいしさを僕の中で細分化していくと、やっぱりまず冷たさ。ジョッキの冷たさも重要。その次に香りというか、(品質)管理ですね。たくさんの泡を楽しむ飲み方よりも、アメリカの99%が液体で、泡は1%だけ…みたいな注ぎ方が好きですね」
34歳の体に衰えは
若手の台頭が著しい日本ツアーではもちろん、米ツアーでも34歳という年齢は中堅からベテランに差し掛かったと言って間違いない。体力面、あるいは精神面で衰えを感じるところはあるだろうか。
「今のところはないですね。以前は腰痛が出ると、それがとにかく嫌だったけれど、ここ2年くらいは強い痛みはない。精神論になってしまうけれど、その辺も自分の気持ちもあるかなって。『イヤだな、試合に行きたくないな』って思ううちに体調が悪くなる時があるでしょう。(けがなどを)何かをやらない方向に持っていくための、言い訳にはしたくない。『やる気がないから、頭が痛いとか言ってんだよ』みたいなのは、今の風潮では良くないのかもしれないけれど。体のちょっとした不具合を“探しに行く”のはやめにしたい」
もちろん、大けがを覚悟して、体の悲鳴を無視するつもりはない。10代、20代の時とは肉体的なポテンシャルが違うと理解しつつ「とにかく中途半端な決断をしないことを心がけている」と言った。
「きょうは休みたいと思う時もあるはず。自分に素直になって、休むべき時は休む。そのときに自分の体の状態とメンタルとをリンクさせて客観的に考えていたい。結局、自分が決めることだから。すべて自己責任。サボっていたら自分に返ってくるわけだし。(プロゴルフは)誰かにやらされているわけではなくて、自分で決められる世界だから、僕らは。一人ひとりが自分のためにやっている。まずはベースにある情熱がないことには始まらないけれど」
協力/RIVERSIDE CLUB
インタビューは次回が最終回。昨年末に死去したジャンボ尾崎さん、そしてKFTでの戦いや新しいクラブについて語る。