大谷翔平の2025年「すごかった試合」ベスト7(後編) レギュラーシーズンとポストシーズンの計175試合のなかから7試合…
大谷翔平の2025年「すごかった試合」ベスト7(後編)
レギュラーシーズンとポストシーズンの計175試合のなかから7試合を選び、大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)の2025年を振り返る。
日本開幕シリーズからオールスターブレイクまでの95試合のなかから3試合をピックアップした前編に続き、後編ではシーズン後半戦63試合から2試合とポストシーズンの17試合から2試合を紹介する。

驚きの初速を記録したドジャース100本目のホームラン
photo by Getty Images
【8月27日@vsシンシナティ・レッズ】
投手復帰後初めて5イニングを投げてドジャース初白星
大谷の投手復帰は、予想されていたオールスターブレイク明けよりも早かった。6月16日の先発マウンドに上がり、1イニングを投げた。そこから徐々にイニングを増やしていき、8登板目の8月6日は4イニングに達した。2失点(自責点2)が1登板、あとは1失点(自責点1)か無失点だった。
そこからの2登板は、少し足踏みした。4.1イニング4失点(自責点4)と4イニング5失点(自責点5)だ。けれども、11登板目となった8月27日のシンシナティ・レッズ戦では5イニングを投げ、ロサンゼルス・エンゼルス時代の2023年8月9日以来となる749日ぶりの白星を手にした。
白星よりも意味があったのは、イニングのほうだろう。白星と投球内容は一致しないこともあるが、リリーフ投手と違い、先発投手は少なくとも5イニングを投げないと白星を挙げることはできない(黒星はイニングを問わずにつく)。5イニングは先発投手の「最低限の責任」ということだ。それをクリアしたことで、完全復帰に向けて大きく前進したように見えた。
しかも、この日は被安打と与四球が2個ずつに対して9三振を奪った。また、3回表にホームランを打たれて先制点を取られたものの、そこからの8人はパーフェクトに抑えた。4回裏には先頭打者としてヒットを打ち、1イニング4得点の口火を切った。
その後、大谷はレギュラーシーズンが終わるまでに3度登板した。それらのうち5イニング以上を投げたのは2度ながら、3度とも相手に得点を許さなかった。8月27日の4イニング目から数えて、レギュラーシーズンでは16.2イニング連続無失点を継続している。
【9月2日@vsピッツバーグ・パイレーツ】
ドジャース通算100本目のホームランは初速193km/h
ドジャース入団後に大谷が打ったホームランは、109本を数える(ほかにポストシーズン11本)。ただ、その100本目はこれまでにないスピードでライトのスタンドまで飛んでいった。
9月2日に行なわれたピッツバーグ・パイレーツ戦の3回表、1死走者なしの場面だ。スタットキャストによると、ババ・チャンドラーが投げた99.2マイル(約159.6km/h)のフォーシームを弾き返した打球は、初速120.0マイル(約193.1km/h)を記録した。
それまでの大谷が放ったホームランの初速は、2024年4月23日と7月27日の118.7マイル(約191.0km/h)が最も速かった。現時点でも120.0マイルは自己最速だ。ホームラン以外の打球も、これほどの初速はない。
また、大谷がデビューした2018年以降、初速が120マイル以上を超えたホームランはメジャーリーグ全体で4本だけ。最速は2025年5月25日にオニール・クルーズ(パイレーツ)が記録した122.9マイル(約197.8km/h)だ。
2025年のレギュラーシーズンに限ると、大谷の120.0マイルはクルーズの122.9マイルに次ぐ。初速トップ6には、クルーズと大谷とアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)が2本ずつランクインしている。クルーズが1位と3位タイ、大谷が2位と3位タイ、ジャッジは3位タイと6位だ。
なお、124.2マイルは約199.9km/h、124.3マイルは約200.0km/hだ。スタットキャスト史上初となる初速200km/hのホームランを打つ選手がいるとすれば、現時点ではこの3人が有力候補だろう。
【10月17日@vsミルウォーキー・ブルワーズ】
リーグチャンピオンシップシリーズで3本塁打・10奪三振
ドジャースはリーグチャンピオンシップシリーズでミルウォーキー・ブルワーズと対戦し、スウィープ(4連勝)でワールドシリーズ進出を決めた。なかでも、3勝0敗で迎えた第4戦は、ほとんど消えかかっていたブルワーズの望みを大谷が粉砕した。
大谷はブルワーズに得点を許すことなく10三振を奪い、7回表に無死一、二塁となったところで降板した。その一方で、打者としては1回裏の先頭打者ホームランを皮切りに、4回裏と7回裏にもホームランを打った。
しかも、大谷のホームランは、3本とも打った瞬間にそれとわかった。スタットキャストによると、それぞれの推定飛距離は446フィート(約135.9m)と469フィート(約143.0m)と427フィート(約130.2m)。2本目の推定飛距離は今年のポストシーズン最長だ。
1試合3本塁打はポストシーズン最多タイ。達成者ひとり目とふたり目のベーブ・ルースを含め、大谷の前の延べ12人とも、もちろん投手として登板はしていない。
大谷はリーグチャンピオンシップシリーズMVPに選ばれた。もちろんこの受賞に異論はないが、その前の3試合は計11打数2安打・1打点だった。MVPの候補にすら挙がっていなかったと思われる。個人的な想像だが、第4戦が始まる前の時点でMVPに最も近かったのはチームメイトの山本由伸だろう。山本は第2戦に完投。先頭打者にホームランを打たれた以外は、二塁すら踏ませなかった。
なお、2025年シーズンのブルワーズは両リーグ最多の97勝を挙げて、チーム防御率3.58はナ・リーグトップ。ブルワーズにとって大谷の壁は高かったことだろう。
【10月28日@vsトロント・ブルージェイズ】
ワールドシリーズ第3戦でホームラン2本と二塁打2本の固め打ち
トロント・ブルージェイズとの2025年ワールドシリーズ第3戦は、ポストシーズン最長タイの18回までもつれた。大谷は1打席目から4打席目まで、すべて長打を記録している。二塁打→ホームラン→二塁打→ホームランだ。
この時点で、4長打はポストシーズンの1試合最多タイ。21年前の松井秀喜(当時ニューヨーク・ヤンキース)ら6人と並んだ。松井は2004年のリーグチャンピオンシップシリーズ第3戦でホームラン2本と二塁打2本(プラス1単打)を打った。ワールドシリーズで1試合4長打は、1906年の第5戦に二塁打4本を記録したフランク・イズベル(シカゴ・ホワイトソックス)に続くふたり目だ。
しかし大谷はその後、5打席ともバットを振ることはなかった。9回裏、11回裏、13回裏、15回裏は、トロント・ブルージェイズのジョン・シュナイダー監督が指を4本立てて大谷を歩かせた。
最後の17回裏は一塁に走者がいたため、敬遠ではなかったものの、4球ともストライクゾーンを外れた。大谷がスイングできたのも、初球しかなかった。一塁が空いていれば、9打席目も敬遠を申告されていた可能性は高い。
9回裏以降、ドジャースの打者11人は計41打席に立ったが、大谷だけはサヨナラ打を打つチャンスが皆無に等しかった。とはいえ、あらためて振り返っても、シュナイダー監督の過剰な警戒という気はしない。ほかのスラッガーならともかく、相手は大谷だからだ。
9出塁と4敬遠四球は、どちらもポストシーズンの1試合最多を更新した。18回裏にフレディ・フリーマンのホームランで決着せず、試合がさらに長引いていれば、大谷の敬遠四球はさらに増えていたかもしれない。
この翌日、大谷は先発マウンドに上がって93球を投げた。記録は4失点(自責点4)ながら、7回表の途中に降板した時点では2失点にとどめていた。それも印象に強く残った試合だ。
今回取り上げた前編3試合・後編4試合の計7試合以外にも、大谷のパフォーマンスが際立った試合はいくつもあった。大谷は現在31歳。2026年シーズン以降も伝説を築き続けるのではないだろうか。我々はそれをリアルタイムで目撃するチャンスに恵まれている。
<了>