ベッツは仲間との信頼関係を何よりも大切にしている(C)Getty Images ドジャースの正遊撃手ムーキー・ベッツは、…

ベッツは仲間との信頼関係を何よりも大切にしている(C)Getty Images
ドジャースの正遊撃手ムーキー・ベッツは、2連覇に欠かせない攻守のキーマンだった。シーズンを通じて、基礎練習の反復や特守などフィールド上にいる時間がチーム内で最も多かったと言っても過言ではない。運動量が多いポジションの上に、日々の練習でも手を抜かない。野球に取り組む真摯な姿勢は、ド軍の若手選手たちの模範にもなっている。
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ただ、ベッツの2025年シーズンは山あり谷ありの連続だった。3月18日から東京で開催された開幕シリーズでは、体調不良により米国へ緊急帰国。出場を断念することになった。嘔吐の症状が続き、体重が約11キロ減った。3月末に迎えた本拠地ロサンゼルスでの開幕では体調が回復したが、4月中旬から5月末の期間は打率2割3分台に低迷した。後半戦に入ると、さらに打撃不振に陥り、一時は打率が.231まで落ち込んだ。
2番ベッツの不調で、夏場にかけ、他球団のバッテリーは1番打者の大谷翔平との勝負を避ける場面も多くなった。7月上旬のブルワーズ戦では、満塁の好機でも大谷に甘い球はなく、厳しいコースを突かれて四球となった。続くベッツは凡退。1点なら御の字の対策をとられ、一方のドジャースとしては大量点を奪えず、打線のつながりがピタッと止まる状況が続いていた。トップバッターの大谷と、3番フレディ・フリーマンら中軸につなぐ2番打者の不振が続けば、ド軍打線は機能しない。ベッツの復調は、連覇に不可欠だった。
メジャー12年目で、18年に首位打者とMVPのタイトルを獲得。レッドソックス時代からスター選手としての地位を確立した。長年培った経験もあるが、味わったことのない極度の打撃不振について「ボストンやロサンゼルスで得た(スランプ脱出の)手がかりや感覚が、もう機能しない」と、悩める胸中を語った。一方で、「どういうことをすればうまくいくか、見つけないといけない。すごく難しいことだが、やるしかない」と前を向き、意欲も示していた。
ベイツ打撃コーチによれば、不調の要因は体重減も少なからず影響があったという。「ムーキーは本来、インサイド・アウトのスイング。体重が落ちてしまったことで、スイングスピードを出そうと、外回りのスイングになっていた」。周囲のサポートもあり、徐々に調子を取り戻すと、ベッツはメンタル面でも思い切った切り替えを行った。8月8日のブルージェイズ戦で、決勝の逆転弾を放った試合後。「個人的なシーズンは、終わったようなもの」と言った。自ら個人成績は過去ワーストと位置づけ、その上で心がける意識を強調した。
「自分の成績とか、そういうことは考えない。今日チームの勝利に貢献することだけを考える。明日のことも、昨日のことも考えない。とにかく、今この瞬間に集中する」
勝負のシーズン終盤にベッツはよみがえった。打率は一時、.262まで上昇。ドジャースのラストスパートに貢献した。
スター選手の宿命でもあるが、不振が続けば、その原因を探られる。それでも、周囲の声に惑わされることはなかった。「調子が良くても悪くても、人は何か言ってくるもの。人間だから、それは自然だよ。でも、多くの場合は善意からだったりするし、受け取り方によって否定的に感じるかもしれないが、実際はそうではないことも多い。結局、一番大切なのは、自分を信じ、良いことも悪いことも自分の責任であると理解すること」。自分らしさを貫いたことで、球団初のワールドシリーズ連覇を達成する原動力となった。
もっとも、1人だけで乗り越えた訳ではない。ナ・リーグ西地区の優勝を決めた9月下旬、ベッツは仲間の助けに感謝した。
「ずっと支えてくれた。調子が悪い時も良い時も、みんなそばにいてくれた。このグループは本当に最高なんだ。言葉とか、そういうのではない。みんな大人だし、プロフェッショナルだから。結局、一番大事なのは、必要な時に誰かがそばにいることだよ」
その上で、25年シーズンのドジャースを一言で表すなら、との問いにこう答えた。
「Unity(結束)」
ファミリーのように強いチームワークも、復活の一助となった。ワールドシリーズ第7戦、最後の打球をつかんだのはベッツ。素早い動きで併殺打を完成させ、2連覇が決まった。野球の神様が見ていたかのような、劇的な締めくくりとなった。
[文:斎藤庸裕]
【著者プロフィール】
ロサンゼルス在住のスポーツライター。慶應義塾大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。プロ野球担当記者としてロッテ、巨人、楽天の3球団を取材した。退社後、単身で渡米し、17年にサンディエゴ州立大学で「スポーツMBAプログラム」の修士課程を修了してMBA取得。フリーランスの記者として2018年からMLBの取材を行う。著書に『大谷翔平語録』(宝島社)、『 大谷翔平~偉業への軌跡~【永久保存版】 歴史を動かした真の二刀流』(あさ出版)。
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