<プロボクシング:WBA世界バンタム級挑戦者決定10回戦>◇12月31日◇東京・大田区総合体育館◇観衆2756人元世界4…
<プロボクシング:WBA世界バンタム級挑戦者決定10回戦>◇12月31日◇東京・大田区総合体育館◇観衆2756人
元世界4階級制覇王者でWBA世界バンタム級9位の井岡一翔(36=志成)が、日本人初の5階級制覇に王手をかけた。同級転向初戦で同級11位マイケル・オルドスゴイッティ(24=ベネズエラ)に左ボディーブロー一撃で4回KO勝ちした。WBA同級王者の堤聖也(30=角海老宝石)への挑戦へ前進したが、本人は来年5月に計画される東京ドーム興行でWBC王者の井上拓真(30=大橋)への挑戦を希望した。
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勝負は一撃で決した。4回2分30秒過ぎ、井岡がガードの隙間をついて絶品の左ボディーフックを突き刺した。オルドスゴイッティはリングにうずくまったまま動けなかった。「パンチの出力が上がった。力がついたのを感じた」。15勝中14KOの強打者を力でねじ伏せて、新天地での手応えを感じていた。
初回に拳を交えただけで攻略の糸口を見つけた。2回に左ボディーフックで先制のダウンを奪うと、3回は猛反撃の流れ弾を紙一重でクルクルと交わした。「いろんな選手とやってきたから壁は感じなかった」。21歳から世界の頂点で戦い続けてきた男のスキルと技術も存分に発揮した。
5月に当時のWBA世界スーパーフライ級王者マルティネス(アルゼンチン)との再戦に判定で敗れた後、階級を上げた。「日本人が多く活躍しているバンタム級に自分が上げればより盛り上がる。そこで5階級制覇したい」。アスリートとして落日にさしかかる30代後半から新たな挑戦を決意した。
バンタム級はスーパーフライ級より約1・4キロ、11年に初戴冠したミニマム級より約6キロも重い。練習の3割だった筋トレを5割に増やし、筋肉をパンチのパワーの出力につなげるという深遠なテーマに取り組んでいる。「流れの中で倒せた。やってきたことが立証できた。もっと成長できる」。年齢を重ねても変化を恐れない。だから36歳でも成長できるのだろう。
WBA王者の堤への挑戦が筋だが、試合後「東京ドームで拓真選手と戦いたい」と、4団体統一スーパーバンタム級王者の井上尚と3階級制覇王者の中谷の無敗対決が計画される来年5月のビッグマッチへの参戦を希望した。「東京ドームで5階級制覇を決めたら最高じゃないですか」。井岡一翔の不屈の長編ドラマは、2026年にクライマックスを迎える。【首藤正徳】