今季限りでユニホームを脱ぎ、新しい人生に挑戦する男たちの思いを伝える「第2の人生へプレーボール」。ヤクルトからは29日…

 今季限りでユニホームを脱ぎ、新しい人生に挑戦する男たちの思いを伝える「第2の人生へプレーボール」。ヤクルトからは29日までに現役引退を決断したことが明らかになった北村拓己内野手(30)をクローズアップ。新たな挑戦として新事業を立ち上げ、亜大の同級生でもある阪神・高橋遥人投手(30)へ独占エールを送った。

 8年間という年月を懸命に走りきったからこそ、北村は迷いなく言い切った。「悔いは全くない。大した成績も残せていない。それでも自分の居場所を見つけようともがいてきたから、よくここまでできたなと思う」。憧れ続けたプロの世界へ入ることを巨人でかなえ、ヤクルトへ移籍。見つけた居場所は誇りだ。

 10月24日、戦力外通告を受けた。「野球を奪われる…」。簡単には諦めきれず、オファーを待った。押し寄せる不安に毎晩涙し、海外や独立リーグからのオファーには悩んだ。葛藤の中で最後まで譲れなかったのは12球団で現役続行したいという強い思い。届かない吉報に「ここが全てじゃない。新しい道へ進もう」と自分自身で決断した。

 家族へ真っ先に報告。元「アイドリング!!!」メンバーで現在は実業家の妻・伊藤祐奈さんからは「家族のことは二の次でいいから、自分がやりたいように決めて」と背中を押された。現役時代に寂しい思いをさせていた長女に「パパ、来年もカキン(野球)やるの?」と聞かれ、引退を説明すると、「やったー」と大喜びされた。その姿に救われた気がした。

 「野球はやっぱ、好きなんだよね」。今後は家族との時間を大切にしながら、新事業を立ち上げる。TKMアカデミーを立ち上げ、野球の魅力を指導という形で伝えていくことを想定している。技術(=technique)、知識(=knowledge)、心(=mind)を信条に、「お金というよりも、僕みたいな思いをさせたくない」と言う。

 年齢層に制限なく、公園など“出張”スタイルで場所も問わず寄り添っていくという。「プロで8年間、子どもの頃から野球をやってきて良いことも悪いこともある。最高のチョイスを惜しみなく教えていきたい」と、これまでの全て経験を次世代に託していきたい。

 阪神・高橋遥とは亜大の同級生で二人だけが同じステージに進んだという絆がある。「もう報告はした。『拓己が頑張っているから頑張れた』って言ってくれて、戦力外も納得できないってすねてた」。笑顔で明かすやりとりがうれしかった。

 「僕は左腕で遥人がナンバーワンだと思っている。いい関係をありがとうって言いたいね。ケガに気をつけて1年でも長くやってほしい」。仲間に思いを託し、次なるステージも北村らしく走り始める。

 ◆北村 拓己(きたむら・たくみ)1995年8月29日生まれ、石川県出身。30歳。181センチ、90キロ。右投げ右打ち。内野手。星稜から亜大を経て、2017年度ドラフト4位で巨人入団。23年12月に現役ドラフトでヤクルトに移籍した。23年に1試合、25年にも1試合、1軍で登板経験がある。20年に伊藤祐奈さんと結婚。