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12月28日、東京体育館で「SoftBank ウインターカップ2025 令和7年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」男子準決勝が行われ、福岡大学附属大濠高校(福岡県)が鳥取城北高校(鳥取県)を69-66で下し、決勝進出を決めた。インターハイ王者との一戦は最後まで勝敗の行方が分からない接戦となったが、福大大濠は準決勝に向けて積み上げてきた準備と粘り強さで勝利をつかみ取った。
試合は序盤から福大大濠が主導権を握った。本田蕗以や白谷柱誠ジャックが積極的に外角からシュートを放ち、第1クォーターを21-13で終える。鳥取城北がゾーンディフェンスを敷く中でも、ボールを動かしながらシュートチャンスを作り、落ち着いた立ち上がりを見せた。
第2クォーターに入ると、鳥取城北は留学生ハロルド アズカを中心に反撃を開始。フィジカルとスピードを生かしたプレーで点差を詰め、福大大濠にとって我慢の時間帯が続いた。それでも吉岡陽が要所で得点を重ね、37-29とリードを保って前半を終えた。
後半は一転してリードチェンジの応酬となる。第3クォーター、鳥取城北が勢いを増す中でも、吉岡が好調なシュートタッチを維持。終盤には栗原咲太郎が3ポイントシュートを沈め、僅差のまま最終クォーターへ突入した。
最終クォーターも緊迫した展開が続いた。残り1分を切って福大大濠が3点をリードするも、終盤にターンオーバーが出るなど、勝敗は最後まで分からなかった。それでも鳥取城北の同点弾を許さず、69-66で試合終了。夏の王者を退け、冬の大舞台で決勝への切符をつかんだ。
試合後、チームキャプテンを務める勝又絆は、この一戦を「想定通りの接戦になりました」と振り返った。「準決勝に向けて、チームとして基本的な部分から徹底してやってきました。そこを体現できた試合だったと思います」と、準備の成果を強調した。
鳥取城北のアズカへの対応については、「今まで経験してきた留学生の中でも別格だった」と率直に語る。自身が最初にマッチアップした中で苦しい場面もあったとしながらも、「代わりに出たサントス(マノエルハジメ)やジャックが、リバウンドなどを徹底してくれたおかげで、良い流れで試合を進められた」と、チーム全体での対応を評価した。
ゾーンディフェンスに対する攻めも、この試合のポイントの一つだった。櫻井照大をハイポストやショートコーナーで起点にし、そこからボールを展開する形は、今大会を通じて磨いてきた攻め方だという。「櫻井は視野が広いので、あそこからの展開は今のチームにとって重要な形です」と勝又は語った。
今大会、福大大濠はタイムシェアを徹底している。勝又はその効果について、「インターハイのときと比べて疲労度が全く違う」と話し、終盤の集中力や判断精度の向上につながっていると手応えを口にした。
また、本田や白谷、櫻井といった下級生の成長も、勝ち上がりの要因となっている。「試合を重ねるごとに、どんどん頼もしくなっています」としつつ、「その分、3年生がもっと気持ちを見せて、エナジーを出していくことが大事」と、最上級生としての責任も強調した。
シーズンを通じて、3年生にとっては難しい時期もあった。インターハイでは準々決勝で敗退。復活を期してウインターカップに向けて強化を進めたが、福岡県予選決勝で福岡第一高校に敗れた。不甲斐ない内容に「3度目はないぞ」と片峯聡太コーチは、東山との対戦が予定されていた、次週のU18日清食品トップリーグの宮崎遠征に3年生の主力をメンバーから外すという荒療治を施した。
11月16日、日清食品トップリーグの最終戦となった福岡第一との一戦で3年生が復帰。この試合はティップオフ直後から激しいディフェンスを展開、そこからの速攻を次々と決めて、終わってみれば97−48の快勝となったが、目が覚めた3年生の泥臭いプレーはあったことは言うまでもなかった。
決勝を前に、チームキャプテンとしての覚悟も明確だ。「自分とゲームキャプテンの榎木が、しっかり引っ張っていかないといけない立場です。自分が出ていない時間でも、やるべきことを徹底したい」と話し、苦しい状況でもぶれずに戦う姿勢を示した。
もう1つの準決勝は福岡第一と東山高校(京都府)が対戦。「決勝の相手はどちらが良いか」と問われた際、勝又は「どちらが来ても因縁がありますね」と前置きしながらも、「東山とはトップリーグで対戦できていないので、白黒つけたいという思いはあります」とコメント。その後の試合結果により、決勝の相手は東山に決定した。
夏の王者を退け、頂点まであと1勝。勝又が感じる下級生の成長、チームの結束を決勝の舞台でも発揮できるか。福大大濠の挑戦は、最後の一戦へと続く。
文=入江美紀雄
【動画】ウインターカップ準決勝 福大大濠vs鳥取城北ハイライト