蹴球放浪家・後藤健生にとって、サッカー観戦前の「移動」は、いわば前哨戦だ。なでしこジャパン取材のために長崎の新スタジア…
蹴球放浪家・後藤健生にとって、サッカー観戦前の「移動」は、いわば前哨戦だ。なでしこジャパン取材のために長崎の新スタジアムを訪れる前にも、記憶に残る「出会い」があった。
■まったく違う「気動車の旅」
ようやく発車準備が整って、そのYC1系の諫早行き列車に乗り込んでみると、車内のシートなども明るい色の洒落たデザインで、僕がこれまで抱いていた気動車の旅とはまったく違う体験ができました。
ちなみに、長崎本線の路線のうち喜々津駅から浦上駅までの間は明治時代以来の旧線(長与駅経由)と1972年に開通した新線(市布駅経由=電化)に分かれているのですが、このときはたまたま大村湾沿いを走る旧線経由の列車に乗れました。そして、旧線は非電化区間なので、そこで乗った列車もまたYC1系でした。
別に長崎に行くには旧線でも新線でもどちらでもいいわけですし、もう夕方で外は真っ暗で何も見えなかったのですが、旧線を走る列車に乗れたのでなんとなくうれしい気持ちになりました。
日本の鉄道では新幹線のような主要路線だけでなく、こういったローカル線に乗っても、今回のYC1系のように新しい近代的な車両が走っています。ローカル線でも快適な旅ができるのですから、やはり日本の鉄道の実力は大したものだと思います。
もちろん、赤字路線をどうするかなど、課題も多いのですが……。
■日本のライバルは「中国」
今年のはじめには、鉄道発祥の地であるイングランドを南北に貫く主要路線グランドセントラル線で日立製作所製の新型車両が採用されて話題になりました。
ちなみに、この車両はバッテリー・ハイブリッド車両。ディーゼル・エンジンとバッテリー、さらにパンタグラフを併用していて、電化区間も非電化区間も走り抜くことができる車両だそうです。
日本のライバルは、この分野でも中国です。
実際、世界の多くの国で鉄道を利用すると中国製の車両を見かけます。現在では中国の技術も進歩しており、近代的なデザインの車両が造られています。
それに、やはり価格的に中国製のほうが安上がりなので、発展途上国では中国製を採用することが多いのでしょう。
なぜ、安上がりなのか……。それを実感する経験をしたことがあります。
それは、2000年の夏に中国を訪れたときのことです。中国東北部吉林省の長春(「満洲国」時代には「新京」と呼ばれ、日本の傀儡国家の「首都」でした)で、東京工業大学(現、東京科学大学)の先生たちと一緒に「中国中車」の工場を見学に行ったのです。
■事故で亡くなる人は「年間10人」
中国を代表する鉄道企業の車両製造工場です。「世界中に車両を輸出している」などと説明を受け、工場内を案内してもらいました。
そして、案内人がこう言ったのです。
「安全管理もしっかりしていて、年間に事故で亡くなる人は10人程度です」
自慢げに、そう言うのです。エッ? 日本で、そんな死亡事故が起こったら大問題です。
東京工大の先生で、製造業に詳しい人に聞くと、そもそも、工場で働いている人の数が、日本の同規模の工場に比べて少なくとも2倍以上いるというのです。
もちろん、これは25年も前の話です。
日本以上の急ピッチで少子高齢化が進みつつある中国。労働者の賃金も上がっていますから、今では、当時のように労働者の生命を軽んじることはなくなっているのだとは思います。しかし、日本の企業に比べて安全管理に金をかけないで済むというのが、中国のさまざまな製品の価格が安い理由のひとつであることは間違いないでしょう。