<2025ペナント:メジャー編> プロ野球の快記録や珍しい記録からシーズンを振り返る「データで見る2025ペナント」がス…

<2025ペナント:メジャー編> 

プロ野球の快記録や珍しい記録からシーズンを振り返る「データで見る2025ペナント」がスタート。プロ野球を球団別に連載、続いて日本人大リーガーの計13回。第13回はメジャー日本人編。

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カブス鈴木誠也外野手(31)がナ・リーグ4位タイとなる103打点をマークした。ドジャース大谷より1打点多い。大リーグで初めて5傑入りした上に、今季は勝利打点(V打)の多さが目についた。V打16度はリンドア(メッツ)に並びナ・リーグ最多の量産ぶりだった。ちなみに世界一になったドジャースのV打ランキングは<1>フリーマン15度<2>T・ヘルナンデス13度<3>大谷、エドマン=各9度。ア・リーグMVPのジャッジ(ヤンキース)、60本塁打のローリー(マリナーズ)の各17度と比べても大差はない。

V打は最後にリードした場面で記録された打点。88年まで日米ともに公式記録として扱われていた。当時から評価は分かれ、89年以降は公式記録から外れている。たとえばドジャースの9番打者が満塁から先制の押し出し四球を選んだとする。続く1番大谷が満塁本塁打を放ち5-0で勝ったとしても、V打は先制の打点を挙げた9番打者。勝利に大きく貢献したのは満塁弾の方では、との議論になってもおかしくない。最近のメジャーでは「WAR(Wins Above Replacement)」のように得点貢献度を数値化している。

それではV打が無意味かというと、捨てたものではない。少なくとも先制、勝ち越し、逆転の肩書がつき、試合を動かす要所で飛び出す。NPBでは「ホームランより勝利打点を多く挙げたい」(11年オリックスT-岡田)、「勝利打点にこだわって、できるだけお立ち台に立ちたい」(13年ロッテ福浦)、「タイトルではないけど大事なもの」(23年阪神大山)などの声があった。特に中軸を打つ選手は勝負どころ、勝敗に絡む打点の価値を強く意識している。

日本人右打者初の30本塁打&100打点を記録した鈴木は、得点圏打率3割9厘と渡米後初の3割超え。満塁チャンスでは14打数8安打(打率5割7分1厘)、1本塁打、16打点。初めて出場したポストシーズンでは、放った3本塁打が全て殊勲アーチ(先制1本、同点2本)で長打と勝負強さを兼ね備える。来年3月のWBCに出場すれば、多くのV打チャンスで暴れてくれそうだ。【織田健途】(おわり)

<メジャー日本人選手の今季>

■大谷翔平 昨季の54本を1本上回る日本人最多の55本塁打など、今季も新たな自己新記録を積み上げた。中でも光ったのは146得点。昨季(134得点)に続き日本人では史上2度目の両リーグトップに立ち、本塁打以外でも出塁と進塁で貢献。四球は21年の96個を更新し、日本人初の3桁となる109個を記録したことも得点増につながった。2000年以降、年間145得点以上は00年バグウェル(アストロズ=152)、01年ソーサ(カブス=146)、23年アクーニャ(ブレーブス=149)の3人だけだった。

■吉田正尚 右肩手術の影響で7月9日に初出場。レギュラーシーズンのラスト12試合で47打数18安打(打率3割8分3厘)、2本塁打、10打点、ポストシーズン3試合で7打数4安打、2打点と終盤に存在感示す。

■山本由伸 01年ランディ・ジョンソン(ダイヤモンドバックス)以来24年ぶりのワールドシリーズ3勝。それも史上初めてビジターだけで3勝を挙げ、日本人では09年松井秀(ヤンキース)以来2人目のシリーズMVPに輝いた。世界一決定の胴上げ投手は、日本人では13年上原(レッドソックス)以来2人目。山本は3月18日カブス戦(東京ドーム)に開幕投手で勝ち、チームの年間最初と最後に投げた。シーズン開幕投手&世界一決定マウンドは18年セール(レッドソックス)以来となり、ドジャースでは初めて。同カブス戦は大リーグ全体のシーズン開幕戦でもあり、1回表の第1球を投げたのはカブス今永。大リーグでシーズン最初と最後の球を日本人が投げたのは史上初だった。

■佐々木朗希 NPB時代に救援ゼロで渡米し、大リーグで初の救援を記録したのは日本人で初めて。ポストシーズンでは3セーブをマークし、シーズン終盤のドジャース救援陣を支えた。23歳11カ月でのワールドシリーズ出場は野手を含めても日本人最年少。

■菅野智之 89年10月11日生まれの36歳シーズンで渡米した「オールドルーキー」だが、8月14日マリナーズ戦で10勝目。10年高橋尚成(メッツ=10勝)の35歳シーズンを上回り、日本人1年目では最年長の2桁勝利。ローテーションを守り、1年目で30試合以上先発した日本人は松坂、黒田、前田、菊池に次ぐ5人目。

■前田健太 15年オフにポスティングシステムで渡米し、16~25年を米球界で過ごして来季は楽天でプレー。ツインズ時代の22年は右肘手術のため登板はなかったが、日本人投手の大リーグ実働9年はダルビッシュ13年、野茂12年、大家10年に次ぎ、長谷川、上原、田沢に並ぶ4位。松坂の8年より長かった。

■ダルビッシュ有 黒田の日米通算203勝を超える日本投手最多の208勝も本調子ではなかった。右肘炎症などのため出遅れ、7月7日に初登板。15試合に先発するもクオリティースタート(先発6回以上で自責点3以下)は3試合。11月4日に右肘手術を受けた。復帰するとしても41歳シーズンの27年になる。

■今永昇太 5月に左太もも裏の張りで離脱した影響もあり9勝8敗。1年目の昨季に15勝を挙げており、10勝なら日本人左腕初の2年連続2桁勝利となっていただけに惜しかった。

■千賀滉大 6月12日ナショナルズ戦で勝利投手になるも、ベースカバーの際に右太もも裏を負傷。その影響もあり7月以降の9試合は全て6回未満となり、後半戦0勝3敗。24年は右肩のけが、左ふくらはぎの負傷で登板1試合にとどまり、2年続けて厳しいシーズンとなった。

■菊池雄星 アストロズから移籍1年目で開幕投手となり、今季もシーズン最後まで年間を通して投げた。33試合は19、22~24年の32試合を更新する自己最多。日本人投手の先発33試合以上は16年岩隈(マリナーズ=33試合)以来9年ぶり。投球178回1/3も24年の175回2/3を上回り、渡米後最多を記録。中4日登板は14度を数えた。野茂、ダルビッシュ、前田に次ぐ日本人4人目の通算1000奪三振も達成した。

■松井裕樹 NPB通算236セーブを挙げ日米通算250セーブの大台も見えていたが大リーグでのセーブは2年目の今季6月19日ドジャース戦で挙げた1個のみ。ホールドも1年目の9個から3個に減り、重要な場面での信頼を勝ち取りたい。

■小笠原慎之介 8月14日フィリーズ戦で打者1人に4球で三振を奪い初勝利。打者1人で大リーグ初勝利を挙げた日本人は08年薮田(7球=一ゴロ)、10年五十嵐(6球=三振)に次ぐ3人目だった。8月27日ヤンキース戦では指名打者解除のため打席に立つ珍事(見逃し三振)。