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12月24日に行われた東山高校(京都府)と中部大学第一高校(愛知県)による「SoftBank ウインターカップ2025 令和7年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」男子1回戦の好カードは、最終スコア86−68で東山に軍配。第3クォーターまでは拮抗した展開が続いたが、東山は最後の10分間で32−11と圧倒した。
ものの数分で相手の戦意を喪失させた。原動力となったのは2年生エースの中村颯斗だ。1点リードの第4クォーター開始2分24秒、 佐藤凪(3年)のパスから右45度の位置で3ポイントシュートを沈めると、研ぎ澄まされた集中力が爆発した。
次のオフェンスでも迷わず3ポイントを放ってリングを揺らし、相手に後半2度目のタイムアウトを取らせた。それでも中村の勢いは止まらず、再開後も華麗なダブルクラッチと、またもや長距離砲を決めてリードを10点に。
中村は約1分半の間に11点を稼いでゲームを支配。中部大第一はこの時点ですべてのタイムアウトを使い果たすも、その後も流れは変わらず結果的に18点差で決着がついた。
39分24秒。ほぼフル出場で30得点を叩きだした中村は、得点、プレータイムともに両チーム最多。試合後のインタビューでは覚醒した第4クォーターをこう振り返った。
「このウインターカップのためにシューティングをいっぱいしてきたので、入る気しかしなかったですし、自分が決めてやるっていう気持ちでシュート打ちました。前半は凪くんが警戒されていて、やりにくそうだなと感じていました。自分の役割は点を取ることなので、今まで凪くんに助けてもらった分、助けたいという気持ちもありましたし、自分がやってやろうっていう気持ちでした」
持ち味の3ポイントを武器に、中村は入学当初から得点源の1人としてコートに立ってきた。昨年は佐藤凪に加え、「憧れて東山に入学した」という瀬川琉久(千葉ジェッツ)とともにチーム史上初のインターハイを制覇。偉大な2人の大エースの背中を一番近くで見てきたのも中村だ。そんな中村に対し、大澤徹也コーチも大きな期待を寄せている。
「颯斗には無理な要望というか、瀬川のクイックネスと凪のゲームコントロール力を兼ね備えたうえで自分の3ポイント力をつけられたら最強だよね、という話をしているんですよ。2人の背中をきちっと見てきていますし、ただ真似するのではなく、2人の良さを吸収しながら颯斗の良さを出してほしいです。今年は凪がコントロールするので、やっぱり得点を取るところは颯斗がエースとしての自覚を持ってやってくれないと困ります。そういった責任も負わせながら成長していってほしいなと思っています」
大澤コーチからの期待に対し、中村も先輩をリスペクトしつつ、しっかりと自分の道を歩もうとしている。「今年は凪くん1人に頼っていたらダメですし、自分がもっと得点を取って引っ張っていきたいです。本当に見本になる選手ですけど、2人と同じプレーをしようとかは変に思わずに、いい部分をどんどん吸収しつつ、自分の持ち味を出せる選手になっていければなと思っています」。
今年の東山のエースは佐藤凪ではなく、中村颯斗。ウインターカップ1回戦で組まれた中部大第一との最初の山場は、それを証明する一戦にもなった。中村は「本当にホッとしています」と安堵の表情を見せ、次戦を見据え再び気を引き締めた。
「本当に何が起こるかわからないのがウインターカップだと思うので、最後まで気を抜かずに一戦一戦勝ち上がっていきたいと思います」
文=小沼克年
【動画】東山の中村颯斗が約1分半の間に11得点のゲット