23日に開幕したバスケットボールの第78回全国高校選手権(ソフトバンク ウインターカップ2025)で、大会史上初めて高…

 23日に開幕したバスケットボールの第78回全国高校選手権(ソフトバンク ウインターカップ2025)で、大会史上初めて高校の女子生徒が審判を務めた。

 京王アリーナTOKYOであった女子1回戦、矢板中央(栃木)―鵬学園(石川)戦。3人で構成する審判団の一人として、東京・実践学園高校バスケ部マネジャーの三海世奈さん(18)が笛を吹いた。終盤までもつれる緊迫した試合を終え、「すごく楽しかったなっていうのが正直な感想です」と充実した表情で振り返った。

 小学4年生からバスケを始め、中学までは選手を全うした。「将来はトレーナーとしてバスケ界で活躍したいという目標を持っていた。ベンチ側の役割の方が今後のためになると思い、マネジャーをしようと中学の段階で決めていました」

 その道に進むと決めたなら、「何か一つ武器になるものを持っておきたい」。そこで思い立ったのが、選手や指導者とは違った視点からチームに貢献できる審判という役割だった。

 女子の国内最高峰「Wリーグ」の試合で見つけた憧れの存在も、背中を押してくれた。五輪の試合を担当するなど、日本の女性審判の第一人者として知られる須黒祥子さんだった。「本当に毅然(きぜん)としていて、凜(りん)としている方。試合を何本も見て、自分もそうなりたいと思いました」

 審判を志した当時から、ウインターカップで審判を任された女子高校生はいないと知っていた。高校生のバスケ部員の誰もが憧れる舞台を、当面の目標に据えた。

 東京都の強豪校に数えられる実践学園での普段の練習が、審判としての鍛錬の場になった。「どんな壁にぶつかった時でも、ウインターカップの舞台に立つ自分の姿を想像することで、頑張ろうと気持ちを奮い立たせることができました」

 日本バスケットボール協会(JBA)が公認する審判資格のうち、最高のS級、A級に次ぐB級を取得。今年は、高校の全国トップレベルの大会「U18日清食品トップリーグ」の試合を任されるまでに成長した。

 目標だったこの日の一戦は、高校生審判で迎える最初で最後のウインターカップとなった。

 「引退する同じ3年生や、高校でバスケをやめてしまう人も数多くいる中で、大事な試合を担当させていただけたという責任感を胸に試合に臨みました。大事な一場面に立ち会えたことはすごくうれしいです」

 大学進学後はトレーナーの知識や経験を増やし、将来的には日本代表チームのトレーナーをめざすという。「女性審判の活動はまだ多くありませんが、少しずつ活躍の幅を広げていきたいです」。審判の道も歩み続けるつもりだ。(松本龍三郎)