ちょうど20年前の有馬記念は、多くのファンにとって忘れられない一戦となったはずだ。あのディープインパクトが初めて敗れ…
ちょうど20年前の有馬記念は、多くのファンにとって忘れられない一戦となったはずだ。あのディープインパクトが初めて敗れたからである。勝ったのはC.ルメール騎手に導かれたハーツクライ。史上最強の声も上がる歴史的名馬が、結果的に国内唯一の敗戦を喫したレースを振り返る。
この年の有馬記念はディープ一色だった。圧倒的な強さで皐月賞、日本ダービー、菊花賞を制覇。史上2頭目の無敗の三冠馬となり、迎える古馬との初対決がグランプリだった。当然ながら単勝は1.3倍の抜けた1番人気。2番人気は連覇を目指すゼンノロブロイで6.8倍。3番人気以下は10倍以上でデルタブルース、ハーツクライ、タップダンスシチーと続いた。
レースはタップダンスシチーが引っ張った。場内を沸かせたのは、短期免許で来日中のC.ルメール騎手が騎乗したハーツクライ。これまでは差し一辺倒だったにもかかわらず、意外な先行策に出たからだ。ゼンノロブロイやデルタブルースは中団から。そしてディープインパクトは中団後ろでじっくりと運んだ。そのまま淡々と流れて勝負所へ。4角でコスモバルクが先頭に立ったが、これを捕らえたのがハーツクライだ。食い下がるリンカーンを振り切って最後の急坂へ。ここで多くのファンの声援に後押しされるようにディープインパクトが伸びてきたが、いつものような切れがない。逃げるルメール、追う武豊。ディープがジリジリと詰め寄ったものの、最後はハーツクライが半馬身凌いで大金星を挙げたのだった。
ハーツクライは名門・社台ファーム生まれのサンデーサイレンス産駒として大きな期待を背負った馬だった。ただ、若い頃はトモが弱く、テンに行き脚がつかないために、後方からの競馬を強いられてばかり。結果的に勝ち切れないレースが続いた。それでも安藤勝己騎手や武豊騎手、そして横山典弘騎手が強引な競馬をせず、大事に育ててきたことが奏功。ようやく4歳秋にして心身が整い、開花の時を迎えたのだった。ディープインパクトを倒したこと、そしてC.ルメール騎手の好騎乗がクローズアップされることが多い一戦だが、その陰には多くの名手のサポートがあったことも覚えておきたい。