<フィギュアスケート:全日本選手権>◇19日◇東京・代々木第一体育館◇男子ショートプログラム(SP)三浦佳生(かお、20…

<フィギュアスケート:全日本選手権>◇19日◇東京・代々木第一体育館◇男子ショートプログラム(SP)

三浦佳生(かお、20=オリエンタルバイオ/明大)が2位発進し、初の五輪代表に近づいた。国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、今季自己ベストの95・65点。昨秋からの不振を脱し、来年2月のミラノ・コルティナ五輪の男子3枠目争いで優位に立った。24年世界選手権8位の実績があり、104・27点で首位の鍵山優真、5位の佐藤駿と10代から切磋琢磨(せっさたくま)。五輪出場が有力な2人を追いかけ、今日20日のフリーに挑む。

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「信じろ」。三浦は自分に言い聞かせた。五輪がかかった大一番を前に「怖かった」と不安があったが、演技開始2秒前に心が決まった。「できる」。そう思うと、自然と体が動いた。

冒頭の4回転サルコー-3回転トーループの連続ジャンプを皮切りに、全3本のジャンプを成功。昨秋から左太もも痛の影響で不振が続いたが、3位だった11月のGPスケートカナダに続いて好演した。最後のスピンを終えると、両拳を握りながらガッツポーズ。今季自己最高の得点に、安堵(あんど)の涙があふれた。「やれることはやってきた。『信じろ』と言い聞かせたら、心が楽になった。ポジティブなマインドになれた」。晴れやかな表情でうなずいた。

2学年上の佐藤と鍵山を追いかけてきた。佐藤とは小2のころに試合で初対面。自身は2回転ジャンプがやっとだったが、相手は3回転を3種類も跳んでいた。30点差をつけられて「とんでもないバケモノがいた」と衝撃を受けた。鍵山とは小5で出会った。最も印象的だったのは、トリプルアクセル(3回転半)を1週間で習得したこと。自身は1年以上かけてものにしただけに「どういうこと?」と驚くしかなかった。

力の差を感じたが、それを糧にする強さがあった。「この人たちに勝つにはどうすればいいのかを考えたからこそ、僕も頑張れた」。世界トップ6人が集うGPファイナルに22年から2年連続で出場。23年4大陸選手権は男子史上最年少の17歳8カ月で制した。

今は負けん気の強さに、冷静さも加わった。この日の試合前は人気ゲーム「太鼓の達人」でリラックス。演技前も、それまでの滑走者の得点は一切耳に入れなかった。「自分の世界に入れた」。己に集中したことが奏功し、2位発進で五輪代表へ1歩リードした。

運命のフリーへも冷静に臨む。「この喜びは1時間くらいで忘れて、スイッチを切り替えたい。フリーは鬼門だと思っているけど、それをフラッシュバックさせないくらい集中したい」。2人の先輩を追いかけ、夢の五輪へ。自分を信じた先に、道は開ける。【藤塚大輔】

◇三浦佳生(みうら・かお)

◆生まれ 2005年(平17)6月8日生まれ、東京都中央区出身。

◆身長 168センチ。

◆経歴 馬込東中、目黒日大高を経て、24年に明大入学。

◆競技開始 5歳。

◆主な実績 21年全日本選手権で羽生結弦、宇野昌磨、鍵山優真に次ぐ4位。23年2月に4大陸選手権優勝。同11月フィンランド大会でGPシリーズ初優勝。

◆特長 高級イタリア車「ランボルギーニ」に例えられるスピードが武器。

◆名前の由来 「佳生」は母佳代さんと父幸生さんから1字ずつがとられた。

◆趣味 野球観戦。ソフトバンク推し。好きな選手は同球団の牧原大成内野手、巨人の甲斐拓也捕手。