堤の勝因は5回にドネアの追撃を耐え抜いたことだ。4回終了間際に右アッパーを浴びてダメージを負った。ゴングに救われなければ…

堤の勝因は5回にドネアの追撃を耐え抜いたことだ。4回終了間際に右アッパーを浴びてダメージを負った。ゴングに救われなければ終わっていたほど効いていた。次の回はとても厳しいと思ったが、足を使って耐えた。ふつう効いている状態であれだけ足は使えない。すごい根性、練習量のたまものだろう。

窮地のラウンドをしのいだことで堤は息を吹き返して、後半は持ち味の連打で反撃した。ドネアの左ジャブも効果的でカウンターも強烈だったので、堤の手数か、ドネアのジャブと一発か、見方が分かれる内容だったが、ジャッジ2人が堤を支持したということだ。

ドネアのパンチは空振りするだけで音が聞こえてきそうだった。4回の右アッパーは堤がダッキングするタイミングに合わせたもの。勘は衰えていなかった。後半はさすがにスピードとスタミナが落ちたが、前半は全盛期と遜色ない出来だった。つくづく堤はよく挽回したと思う。

高見は負けたと思っていないだろう。それほど打たれてもいない。ただサンティアゴは足を使ったジャブを含めて前回の岩田戦よりさらにうまくなっていた。この試合も見方が分かれる内容だった。減量が苦しい高見は階級を上げた方が彼の良さがより発揮できるように思う。オラスクアガとやれば面白い試合になる。

桑原は1回に眼窩(がんか)底骨折をしたようだ。それでもオラスクアガの攻撃をよく迎え撃った。練習してきた通りに実践できた。前半をしのいで失速させられれば勝機はあったと思うが、何しろオラスクアガの攻撃力がすごかった。

年間最優秀試合の候補になりそうな堤-ドネア戦を含めて、3試合ともボクシングの醍醐味(だいごみ)を十分に堪能させてくれた。(元WBA、WBC世界ミニマム級王者)