蘇る名馬の真髄連載第25回:ヒシアマゾンかつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウ…
蘇る名馬の真髄
連載第25回:ヒシアマゾン
かつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)。2021年のリリースと前後して、アニメ化や漫画連載もされるなど爆発的な人気を誇っている。ここでは、そんな『ウマ娘』によって再び脚光を浴びている、往年の名馬たちをピックアップ。その活躍ぶりをあらためて紹介していきたい。第25回は、迫力ある末脚を武器にして一線級の牡馬とも互角に渡り合った"女傑"ヒシアマゾンを紹介する。
1994年のエリザベス女王杯を制したヒシアマゾン(赤帽)
photo by Sankei Visual
やたらとタイマンで勝負したがる、熱血肌の姉御キャラ。とにかく勝気な性格で、ライバルを見つけると血気盛んに戦いを挑んでいく――それが『ウマ娘』のヒシアマゾンだ。
モデルとなった競走馬のヒシアマゾンも、闘志をむき出しにしたレースぶりでファンを魅了した。後方からの追い込みを自身のスタイルとし、ライバルとの叩き合いに持ち込んだら譲らない。強い精神力を武器に、真っ向勝負を得意としたタイプと言える。
そんなヒシアマゾンの"らしさ"を発揮したレースが、当時「牝馬三冠」最終戦として行なわれていた1994年のGⅠエリザベス女王杯(京都・芝2400m)だろう。
前年に3歳(現2歳。※2001年度から国際化の一環として、数え年から満年齢に変更。以下同)でデビューしたヒシアマゾンは、その年の12月に行なわれたGⅠ阪神3歳牝馬S(阪神・芝1600m)に臨んで圧勝。直線でライバルたちを突き放し、後続に5馬身差をつけて戴冠を遂げた。
通常であれば、断然のクラシック候補として、翌春にはGⅠ桜花賞→GⅠオークスという王道路線に向かうところだ。しかし、同馬は外国産馬だったため、当時はクラシックへの出走権がなかった。それで仕方なく、"裏街道"となる重賞レースに挑み続けた。
圧巻だったのは、そこでのレースぶりだ。4歳初戦となるGⅢ京成杯(中山・芝1600m)こそ2着に敗れたものの、その後はGⅢクイーンC(東京・芝1600m)、GⅢクリスタルC(中山・芝1200m)、GⅡニュージーランドトロフィー4歳S(東京・芝1600m)と牝馬限定戦に限らず、牡馬相手にも連戦連勝。さらに、秋になってからもGⅢクイーンS(中山・芝2000m)、GⅡローズS(阪神・芝2000m)を制して、怒涛の重賞5連勝を飾った。
そうして、まさに向かうところ敵なしの状態で挑んだのが、エリザベス女王杯だった。
その輝かしい戦績からヒシアマゾンは単勝1.8倍という断然の支持を得ていたが、このレースには強敵がいた。春のオークスを制したチョウカイキャロルである。
春のクラシック二冠とは違って、当時から外国産馬も出走可能だったエリザベス女王杯だからこそ実現した、ヒシアマゾンvsチョウカイキャロル。本当の意味での「世代ナンバーワン牝馬」を決める戦いに多くのファンが注目していた。
ゲートが開くと、バースルートが大逃げを打った。チョウカイキャロルは6~7番手につけ、ヒシアマゾンは後ろから3~4頭目のポジションで追走。追い込みを身上とするヒシアマゾンにとっては"マイポジション"だった。
3コーナーあたりからチョウカイキャロルが徐々に進出すると、ヒシアマゾンもいち早くこのライバルを射程圏に捉えようと加速していく。そして、4コーナーではオークス馬の外から馬体を並べにいった。
直線、バースルートに代わってアグネスパレードが抜け出しにかかるが、外から人気馬2頭が猛追。残り200mを切ってチョウカイキャロルがギアを上げ、その外にヒシアマゾンが馬体を併せた。2頭がアグネスパレードを捕まえ、ヒシアマゾンがいったんは前に出るが、チョウカイキャロルも差し返そうと気迫を見せる。
闘志を奮い立たせて抜かせないヒシアマゾンに、追いすがるチョウカイキャロル。最後は2頭が並んでゴールに飛び込んだ。が、軍配はヒシアマゾンに上がった。ハナ差でチョウカイキャロルとの一騎打ちを制したのだ。
ふたつ目のGIタイトルを手にしたヒシアマゾンはその後、GⅠ有馬記念(中山・芝2500m)やGⅠジャパンカップ(東京・芝2400m)でも2着と奮闘するなど、男勝りの活躍を見せる。まさしく1990年代を代表する"女傑"だった。