GPファイナルで3年ぶりの優勝を狙った「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一ペア(木下グループ)。会場の愛知は、木原の地…

 GPファイナルで3年ぶりの優勝を狙った「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一ペア(木下グループ)。会場の愛知は、木原の地元であり、2019年にペア結成のきっかけとなったトライアウトに臨んだ縁深い場所だった。

 ふたりに気負いは感じられず、むしろ自然体だった。昨シーズン終了後からカナダを拠点とし、五輪シーズンに向け腰を据えて準備をしてきた。今季の国際大会初戦だった9月のチャレンジャーシリーズ(CS)木下グループ杯では、昨シーズンの世界選手権優勝時を3点強上回る222.94点で優勝を果たす。GPシリーズの2試合も210点台の優勝。合計得点は2番手に大差をつける安定感があり、自信にもつながった。



GPファイナルを3年ぶりに制した三浦璃来・木原龍一ペア

【成長を感じる首位発進】

 しかしながら12月4日、GPファイナルのショートプログラム(SP)は少し悔しいスタートになった。前半の3回転トーループは三浦が回転不足になるミス。後半のスロー3回転フリップも着氷がやや乱れて加点を稼げず、演技終了後に三浦は苦笑した。

 それでも三浦は、「前回大会ではジャンプがパンクしてしまったけど、今回はきちんと体を締めることができた。前進できたところかなと思っています」と前向きな発言。木原も「しっかり各要素のレベルもとれたのでよかったかなと思います」と話す。

 SPの得点は77.32点。9月のCSネーベルホルン杯でりくりゅうを破ったGPファイナル前回大会王者のミネルヴァ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ボロディン(ドイツ)は3回転サルコウが1回転になって0点になるミスで5位発進となったが、サラ・コンティ/ニッコロ・マチー(イタリア)はノーミスの演技。0.10点差に迫ったが、りくりゅうは緊張の表情は見せなかった。

 木原は、GPファイナル王座奪還を「それほど考えていなかった」と言う。翌日のフリーに向けては「昨年のファイナルはケガもあって動揺もあったし『ちゃんとやらなければいけない』という焦りがあっていいところがなかった。ただ、その経験があって今回は気持ちの余裕を持てている。フリーも狙い過ぎずに、自分たちがやってきたことをしっかり出せればいいかなと。できなくても自分たちのやってきたものがなくなるわけではないので、焦ることなくしっかりやりたいです」と冷静に語った。

【最後のリフトでガッツポーズ】

 翌12月5日のフリー。SPで大きなミスをしたハーゼ/ボロディンはうっぷんを晴らすような完璧な演技をし、自己ベストを更新して合計221.25点にしてきた。さらにコンティ/マチーもSPに続くノーミスの演技で自己最高得点をマークし、合計223.28点。三浦と木原にプレッシャーをかけてきた。

 りくりゅうは、得点源である3回転トーループからの3連続ジャンプで、木原に手をつくミスが出て減点。それでも、リフトとスロー3回転フリップは着実に決め、中盤のデススパイラルが終わった瞬間には三浦の顔に笑みが浮かんだ。

 三浦はそれについて、「正面を向きたかったけど、回り過ぎてどこが正面かわからなくなっちゃって。本当はふたりで同じ方向を向くんですけど、(木原)龍一くんの顔が見えたのでやばいと思って。その笑顔です」と説明する。

 そこからは力強さとスピード感のある滑り。三浦がスロー3回転ループの着氷を乱したが大きなミスにすることなく耐え、フィニッシュは木原に差し上げられたリフトの上で拳をにぎった。

「北京五輪以降はノーミスという演技が出ていなかった。今回もちょこちょこミスはあったけど、ストップ&ゴーはなく最後までやりきれたかな、というガッツポーズでした」と三浦は笑顔を見せる。

 ジャンプのミスがあったため逃げ切りの優勝は危ういかとも思われたが、フリーの得点は昨季の世界国別対抗戦で出した自己ベストを上回る147.89点。合計225.21点で、3年ぶりの優勝を果たした。

【五輪制覇を見据えた実験も】

「最後まで諦めてはいけないという思いもあったので、しっかり気持ちを切り替えてやりました。点数的に勝つのはちょっと厳しいかなと感じていたけど、こうした点数をいただけて本当にうれしかった。練習でつなぎの部分などの細かいことをしっかり確認してきましたし、ジャンプが抜けてしまっても他の要素でしっかりレベルを取ることを意識してやってきたので、点数に影響したのかなというふうに思います」

 木原はこう話す。

 三浦は「イタリアのペアだけではなく、みんながいい演技をしていたんだなという空気感がすごく伝わってきていた。でもそれでナーバスになることなく、いい波に乗れるかなというふうには思っていました。自分たちらしい滑りができたので、今後につながっていけばいいなと思います」と言う。

「試合までの細かい過ごし方という部分でも、今回はいろいろテストしていることがあった」と木原が話すように、次を見据えての大会でもあったGPファイナル。心のゆとりを持ちながらの勝利は、大きな目標である五輪制覇へ向けても有意義だった。