<寺尾で候>日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。   ◇   ◇   …

<寺尾で候>

日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

   ◇   ◇   ◇

プロ野球はシーズンオフに突入したが、なにかと話題でせわしない。阪神でもっともスポットを浴びるのは、セ・リーグ最優秀選手(MVP)に輝いた佐藤輝明だ。

球団生え抜き野手では2リーグ制後初の栄誉。40本塁打&102打点の2冠でリーグ優勝に貢献。ベストナイン、ゴールデングラブ賞など“無冠”だった1年前とは雲泥の差といえる。

スポーツ紙はありがたい媒体で、オフになってもグラウンドで見ることのできないオフショットを伝えてくれる。それを実感したのが、サトテルの1面(3日付関西版)だ。

なんと、サトテルが巨大クロマグロの前に立っているではないか。この手の写真は「すしざんまい」社長の専売特許と思っていたが、口ひげをたくわえた男が、カメラマンのリクエストに応えていた。

当日は、母校・近大で「MVP受賞記念セレモニー」に出席し、お祝いに贈呈されたのが、全長約1・2メートル、重さ32・2キロの「近大マグロ」だった。マグロの完全養殖に取り組む近大だから、絶好の宣伝になったことだろう。

かつて近大の三遊間といえば、サード有藤通世(ロッテ)、ショート藤原満(南海)が最強コンビと言われた。藤原は後輩にあたる佐藤輝の活躍に「よぉ頑張った」と拍手を送った。

「近大出身では、有藤、糸井に続く長距離バッターだな。バッティングの要領をつかんだ。もともとメンタルが強い方だろうし、ゲームの中で数を打って、経験しないとわからないことだったと思う」

藤原は南海ホークスで選手兼任監督だった野村克也のもと、三塁手でレギュラーに定着した。76、81年には最多安打を記録し、玄人好みで“いぶし銀”の存在だった。

南海ホークスの球団譲渡に伴い福岡市内に住む藤原は、今でも地元で人気の評論家として球場通いを続けている。ソフトバンクの対阪神の日本シリーズもチェックした。

「あくまでも主導権はピッチャーにあって、打者は受け身の存在だ。インコースを突かれ、外に逃げられ、緩急をつけられる。でも今年の佐藤輝は、その緩急つけたボールを拾えるようになった」

佐藤輝には、巨人岡本、ヤクルト村上のように、毎年コンスタントに本塁打を量産した印象はない。突然の覚醒に「そういうタイプの打者はいる。ホームランを打つ感覚をつかんだ」と説明した。

松山商(愛媛)で三塁手だった藤原は、ミスが目立った有藤と代わってショートに転向した。大学時代は遊撃手で通した。

「おれはショートがいやで仕方がなかった。二遊間はファウルゾーンがないから守備範囲が広くて難しい。三塁はホットコーナーというように、打球を止めればなんとかなるが、二遊間はそういうわけにはいかんからな」

佐藤輝の三塁守備についても「下半身がしっかりしてきたことでフィールディングのレベルも上がった。送球も良くなったし、打つほうのフォームも崩れない。また走塁にもつながった」と好循環を強調する。

来シーズンに求められることにレジェンドは「チームを引っ張ることができる存在になれるかどうかだ」と指摘。そして「メジャーに行けるなら、行ったらいい。もっと上を見据えることだ」とゲキを飛ばすのだった。(敬称略)