日本高校野球連盟の「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」は5日、2028年の第100回記念選抜大会をめどに、以降は…

 日本高校野球連盟の「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」は5日、2028年の第100回記念選抜大会をめどに、以降は硬式・軟式の全公式戦で「7イニング制を採用することが望ましい」などとする最終報告書を理事会に提出した。理事会ではこの日、結論を出すことはせず、継続して議論することになった。

 最終報告書は夏の全国選手権大会について、「猛暑への対策が急務であり、地方大会を含み可及的速やかに7イニング制を採用することが望まれる」とした。

 7イニング制の議論は前提として、高校野球は学校教育の一環であり、学業の妨げにならないように全国大会は長期休業中に行うことと、阪神甲子園球場で開催するのが望ましいことを踏まえた。甲子園が100年以上にわたって高校野球の会場となり、「聖地」と呼ばれていることが重視された。

 7イニング制採用の提案理由として、部員数の減少や熱中症への対策、運営面の改善などを掲げた。

 試合時間の短縮によって、少人数のチームの熱中症リスクを減らすことができるほか、大会運営に関わる教員らの休日の拘束時間を減らすことができる。投球数の減少で投手の障害予防につながるなどの効果があると説明した。

 また、最終報告書では、加盟校や関係者だけでなく、野球に関心のない人も対象に6月から行ったアンケート結果も公表した。

 野球に関心のない層も対象にした調査会社による登録モニター向けの調査では、7イニング制に賛成が反対を上回った一方、加盟校を対象としたものや、主に高校野球ファンを想定した日本高野連のホームページでの意見集約では反対が大幅に上回った。

 最終報告書では、反対が多かったことについて「(7イニング制の)意図や有効性が十分に伝わっているとは言い難い」と指摘。9イニング制を前提に入学してきた部員らの心情を考慮し、2028年まで移行期間を設けた上で、日本高野連に対し「説明を尽くし、広く周知することを求める」とした。

 反対理由の一つが「部員の出場機会の減少」であることにも触れ、「可能な限り対応していく必要がある」とした。対応策の案として、選抜大会の出場校枠の増加、1校から複数チームの公式戦参加などが挙がったことにも触れられた。

 最終報告書を受け、朝日新聞社広報部は「『7イニング制等高校野球の諸課題検討会議』の最終報告書の内容を重く受け止めています。選手権大会を日本高校野球連盟とともに運営する立場として、選手はもちろん、関係するすべてのみなさんの安全を守ることは主催社としての責務であり、特に夏の暑さについては、できうる限りの対策を取りたいと考えています」とコメントした。

 ■7イニング制採用の主な提案理由

 ・少子化の影響で部員数の減少が続く中、少人数のチームが熱中症のリスクを減らし、安全に大会へ参加することができる。練習や試合の時間に変化が生まれ、高校野球に取り組みやすくなり、普及に資する効果も期待できる。

 ・過去の全国大会のデータから、試合時間が約30分短縮され、投手の球数は30球減少すると予測され、投手の障害予防に有効。熱中症リスクの観点でも、部員、観客、大会関係者の健康への安全域を広げる意味で有効。

 ・監督や大会を運営する役員の多くが教員であり、試合時間の短縮により休日の拘束時間を減らすことが期待できる。(室田賢)

【7イニング制に関する意見収集】

■調査会社による登録モニター向けのアンケート(期間6月16~17日、回答者数2472)

賛成:計35.9% 反対:計25.0%

■日本高校野球連盟の加盟校アンケート(6月27日~8月8日、回答校数2643)

賛成:計20.8% 反対:計70.1%

■日本高野連のウェブサイトで自由記述形式(6月30日~7月11日、回答者数8953)

賛成:8.6% 反対:88.5%