今年2月、新体操の日本代表選手たちが、強化合宿から一時逃げ出す騒ぎがあった。 チームの監督にあたる村田由香里強化本部長…

 今年2月、新体操の日本代表選手たちが、強化合宿から一時逃げ出す騒ぎがあった。

 チームの監督にあたる村田由香里強化本部長の厳しい指導への反発だった。

 騒動を受け、日本体操協会は選手と村田本部長双方への聞き取りを行った。

 協会幹部によると、選手たちは村田本部長によるパワハラを否定したという。

 その上で、村田本部長による指導の継続▽練習に集中できる環境づくり▽調査の打ち切り――などを協会に要望した。

 一方、村田本部長は「白黒はっきりしてほしい。第三者による調査で、何が問題だったのかを公表してほしい」と求めた。

■第三者機関による調査はせず

 体操協会は顧問弁護士とも相談。選手側の意思を尊重して、調査は内部によるものにとどめ、第三者機関による調査はしなかった。協会の水鳥寿思ハイパフォーマンスディレクター(HPD)は「弁護士からの助言として、まず内部で解決する取り組みが大切と考えた」。

 村田本部長については約2カ月間指導の現場から外し、5月上旬に復帰させた。

 一連の対応は波紋を呼んだ。

■スポンサーが協会との契約を解除

 団体チームの冠スポンサーだった化粧品大手のポーラは、7月末日付で協会との契約を解除した。

 同社は「ハラスメントの事実確認が明確にならない中で、支援は続けられないと判断した」とコメントしている。

■「手続きとして不足している」

 スポーツ界のコンプライアンス問題に詳しい明治大の高峰修教授(スポーツ社会学)は「体操協会ではコンプライアンス規定を定めているのに、今回のケースはそれにのっとったとはいえない。手続きとして不足している」と指摘する。

 村田本部長を現場に戻す際の対応にも不備があったと高峰教授は考える。

 「どんな再教育や研修を経たのか、という点でルールを設定していないことも問題だ」

 今回の体操協会に限らず、スポーツ界でコンプライアンス問題が起きたときに対応する第三者機関の必要性も説く。「(第三者機関の設置は)スポーツ庁などが担うべき課題だろう」

 体操協会の藤田直志会長は「ガバナンス不足はあったが、現在は改善できている。スポーツ庁や日本オリンピック委員会などに対して、我々の姿勢や取り組みを引き続き説明して、理解してもらう努力をしたい」と話している。(潮智史)