独立リーグの雄・徳島インディゴソックス。今年も独立リーグ最多の5選手が指名され、13年連続ドラフト指名が決まった。その中…
独立リーグの雄・徳島インディゴソックス。今年も独立リーグ最多の5選手が指名され、13年連続ドラフト指名が決まった。その中でも高卒2年目でロッテから育成2位指名を受けた153キロ右腕・髙橋 快秀(多度津)は、同い年の中日3位の篠崎国忠投手(修徳)とともに早くから期待されてきた。篠崎がパワー、スケールで勝負する剛腕ならば、髙橋はセンスと制球力の高さで勝負する本格派右腕だ。前評判は高かった髙橋だが「指名されないかもしれない」と何度も不安感に苛まれていたという。
高卒1年目は惜しくも指名漏れ 球速アップに取り組む
徳島ならばNPBに行ける――。
近年の圧倒的な実績を見て、アマチュア球界の逸材たちが徳島に入団する事例が増えてきた。髙橋もその1人だ。2023年の香川県を代表する高校生投手として、NPB複数球団から注目されたが、最後の夏は140キロほどしか球速が上がらず、思うようなパフォーマンスを発揮できずに終わった。それでも調査書は3球団から来た。
「ワンチャンスがあればいけるかもしれないぐらいでした」
と結局は指名漏れ。ドラフト前から誘いがあった徳島インディゴソックスへの入団を決める。
「毎年、NPBへ選手を輩出している凄い球団だと思います。1年でも早く、NPBに行きたかったので、徳島へ決めました」
徳島には高校生だけではなく、大卒の選手も多く入る。まず髙橋はレベルの高さに圧倒された。
「『来るところを間違えた』と思いました。徳島は投手もすごいですが、打者もすごい。徳島の打者相手に投げたくないと思うぐらいレベルが高いチームでした」
コントロールとゲームメイク能力の高さには自信を持っていたが、髙橋に足りないのはパワーと体重だった。入団当時は178センチ68キロ。球場の近くで独り住まいをして、自炊で体作りに励んだ。「ハードな練習もある中、毎日の自炊はかなりきつかったです」と振り返るが、現在は80キロと12キロもの増量に成功した。
こうして徳島の1年目で最速は149キロまでスピードアップした。1年目の成績は8試合で17.2回を投げ、防御率1.53。好成績を残した。高校時代よりも「NPB入りの手応えはあった」と振り返った髙橋だったが、またもドラフトでは指名漏れ。最短1年でのNPB入りは叶わなかった。
「行ける感じはだいぶありましたので、ショックでしたね……」と肩を落としたが、すぐに「来年、絶対にいかないといけない」と気持ちを切り替えた。
「最速149キロまで出て、高校時代よりもアベレージで速くなりましたけど、150キロは1球もありませんでした。NPBに行くには全然物足りないものでした」
そこで、髙橋は尊敬する徳島の先輩・中込陽翔投手(山梨学院・現楽天)からトレーニングを教わることにした。
「中込さんはパワー系だけでなく、いろいろなトレーニングメニューをこなす方でした。自分もどちらかというとより重いものをやるというより、メニューをどんどんこなすトレーニングが合っていました」
トレーニングの効果はしっかりと出た。徳島2年目を迎えると、球速は最速153キロまでスピードアップし、常時140キロ台後半の速球が投げ込めるようになった。
2年目は20試合登板して、7勝2敗、防御率2.86。調査書はじつに10球団から届いた。
しかし、髙橋は不安を感じていた。リーグ戦前期は防御率1.08と、投げる試合ではしっかりとゲームを作り、ストレートも安定して150キロを超えて、自信を持って試合で投げることができていた。しかし後半戦、打ち込まれる日々が続いたのだ。最終的に防御率は2.86まで悪化した。
「独立リーグの選手にとって、暑さの中で戦う後半戦のアピールがどれだけ大事なのか自分でもわかっているつもりでしたが、なかなか調子が上がらず苦しい日々でした」
四国アイランドリーグplusの年間王者を決める大舞台・グランドチャンピオンシップの第1戦でも1回を投げ、3失点、被安打3、与四球2、暴投2で降板してしまう。「あの場面は全く覚えていないです」というほど自分の実力を発揮できなかった。
「指名はないんじゃないかなと思いました」と髙橋は不安を抱えたまま、ドラフトに臨んだ。
本指名73人の中に名前はなかった。しかし、会議の開始から約2時間。髙橋の名前が呼ばれた。ロッテから育成2位の指名。「とても時間が長く感じました」と髙橋は振り返った。
支配下登録へ向けての課題

ドラフト指名後、髙橋は徳島球団のスポンサーに感謝を述べるため、挨拶周りをしている。この活動をしながら自身の成長を感じている。
「正直、高校時代の自分は何も知らなかった。徳島に入って、自分からどうすれば球速が伸びるのか、自らトレーニングを積極的に行うようになりました。練習したものが自分に帰ってくる。その感覚が楽しかったです。
また徳島の2年間に来て思ったのは多くのスポンサーに支えられているということ。支援してくれる人たちのために結果を残さないといけないと気づきました。技術以外なことも成長して、NPBに行けるのは良かったと思いますし、その2年間を徳島で過ごす事ができてよかったです。徳島の投手陣はみんな『NPBに行きたい』と、非常に意識が高い中で練習も試合も行っています。また、年齢関係なく接してくれます」
髙橋が目指すのは来年7月までの支配下登録だ。
「今季、イニング以上(69.1回)の被安打(76)を打たれてしまいました。まず思い通りのストレートを投げる時に、左足が着地するタイミングとリリースが合えば、しっかりと投げられるので、その再現性を高めていきたい。
自分はスライダーには自信を持っているんですけど、内角への攻めが甘いことと、縦系の変化が弱いと感じています。自信のあるスライダーはしっかりと攻めた上で、よりピッチングをレベルアップさせて、圧倒的な成績を残して一軍に昇格したいです」
現在のロッテは髙橋と同年齢の木村優人投手(霞ケ浦)、早坂響投手(幕張総合)ら同世代の投手たちも多い。
「木村、早坂は意識する存在です。切磋琢磨していきたいです」
ライバルとなる若手投手陣を追い抜き、主力投手の座を勝ち取りたい。