昨年オフにトレードで移籍も1軍登板なし 律儀な人柄がにじみ出た言動だった。ソフトバンクの浜口遥大投手が11日、現役引退を…

昨年オフにトレードで移籍も1軍登板なし

 律儀な人柄がにじみ出た言動だった。ソフトバンクの浜口遥大投手が11日、現役引退を表明した。ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で取材に応じ「区切りかなという気持ちが強くなった。プレーヤーとして続けたいという気持ちにならなかったし、そういう選手がいられる世界ではない」と、潔く決断した理由を語った。

 神奈川大から2016年にドラフト1位でDeNAに入団。ルーキーイヤーの2017年は10勝を挙げるなど、通算44勝を記録した。その後、昨年オフにトレードでソフトバンクに移籍。しかし、今年の4月には国指定難病の「黄色靭帯骨化症」が判明し、「内視鏡下胸椎黄色靭帯骨化切除術」を受けた。「ありがたいことに早い段階で手術をさせてもらった。大きな支障が出ることもなく、健康に過ごせています」と近況を語る。

 10月27日に球団から来季の契約を結ばないと通告された。自問自答を繰り返し、決心した現役引退。この日のタマスタ筑後には多くの報道陣が集まった。テレビカメラの前、そして記者たちに囲まれての取材は18分間に及んだ。浜口は最後までひとつひとつの質問に丁寧に、そして率直に現在の心境を明かした。

 全ての取材が終わり、輪が解けそうな雰囲気が流れた時、浜口が「僕からも1つ、いいですか?」と切り出した。伝えたかったのは、報道陣に対する感謝の思いだった。

「本当に短い間でしたけど、ありがとうございました」

「まず1年間、本当に短い間でしたけど、ありがとうございました。とっつきにくいというか、愛想が悪い僕なんで、いい対応ができなくて、本当に申し訳ございませんでした。皆さんのおかげで、僕たち選手やスポーツチームの思いが世の中に届いている。そういうありがたみをだんだん、感じてきました」

 ドラフト1位の入団以降、華々しいキャリアを送った裏側で、常に多くの注目と重圧も背負ってきた。栄光も挫折も味わう中で、自らの姿勢も少しずつ変わっていった。「皆さんのお仕事は大変なことも、難しいこともあると思います。どういうものを届けて、どういうものは伏せておこう、とか。いろんな思いを抱えながら、毎日言葉を届けてくださっていると思うので」。そう語り、報道陣に向かって深々と頭を下げる姿が印象的だった。

 今後については「何も決まっていないです」と話すにとどめた。「僕はプロ野球選手から一旦退くことになりました。これからは皆さんの記事や言葉を通して、いちファンとして野球、スポーツを追いかけていきたいですし、楽しみにしています。本当にありがとうございました」。全力で駆け抜けた9年間。熱い思いをマウンドで表現してきた左腕の姿は、最後の最後まで真っすぐだった。(竹村岳 / Gaku Takemura)