相川新監督とともに、ベイスターズの常勝軍団化を目指す村田二軍監督(C)産経新聞社目指す“当たり前”のブラッシュアップ D…

相川新監督とともに、ベイスターズの常勝軍団化を目指す村田二軍監督(C)産経新聞社
目指す“当たり前”のブラッシュアップ
DeNAは三浦大輔体制での5年間でAクラスに4回、そして日本一は1回。上々の成果を上げてきた。だが、球団の悲願であったリーグ優勝だけは果たせなかった。
そして、今秋、責任を負って退任したレジェンド指揮官の想いも背負って、相川亮二新監督は誕生した。
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三浦監督を中心にした選手、コーチ、スタッフ、ファン、そして横浜の街まで巻き込む“一心野球”の継承が既成路線。その上で相川監督は「展開や状況を考えた中でプレーしていくことが当たり前にできるチームになりたいですし、ならなきゃいけないです」と自らの理想を掲げる。実際、11月2日からスタートした秋季キャンプでも、今まで取り組んでいた選手個々のテーマに沿って強化していくスタイルに加え、全体練習用のメニューもプラスした。
「フィジカル面、テクニックスキルを上げていくのは当然ですけれども、やはりチームとして野球をやる部分を大事にしていきたいです」
早くも“相川イズム”を前面に押し出している指揮官は、データ分析に長けるDeNAでヘッドコーチ格を務めていた実績からセイバーメトリクスを駆使する指導を実戦。監督就任会見でも「得点期待値」との言葉が自然と口をつき、「統計学的にこの方がいいよねっていうことはある程度もう出されています。それに関して見たり聞いたりしてる時に、もうほぼほぼ僕の野球観でもそうだよねということはすごく多い」と理論も確立している。
指導者として巨人から横浜へ戻った22年から「競った時に投手、野手ともにどういう戦い方ができるかが一番大切なところ」とキーポイントを口にしていた。そしてチームに携わった4年間で「結局のところ、4点、5点、6点って得点した場合、その時は当然ながら勝てる可能性は高くなると思うんですけど、その1点、2点しか取れない、じゃあ負けましたではやっぱり優勝はできない」と問題点を炙り出した。
「その1点、2点の中で勝っていかなくてはいけないし、『そういう展開になれば勝てる』と、みんなが思えるようなチームにならないと勝つことは難しい」
それは、まさに原点回帰とも言えるテーマである。
昨年も山﨑伊織やフォスター・グリフィン(いずれも巨人)など、好投手の攻略に手を焼いた。しかし、「他球団も打てないから仕方ない」では、優勝は見えてこない。
この問題意識は、昨年に野手コーチを務めていた村田修一もシーズン中から指摘していた。

常勝軍団になる上で巨人を指揮した原監督の言葉は小さくない刺激となる(C)Getty Images
「個人の集まり」と論じるDeNAの改善策は?
「ベイスターズは個人プレーの集結というチームですよね」
一度火が点くと止まらないが、いざ好投手を前にすると沈黙する。そんな特徴が、DeNA打線には伝統的にある。25年は特に顕著だった。前年度の日本一をけん引した打線に対するマークがキツくなり、各球団ともエース級をぶつけてくる。必然的に一線級は打てないが、それ以下には滅法強いという傾向が浮き彫りになった。
自身が現役時代に移籍し、「常勝」を命じられる巨人で同様に厳しいマークを受ける経験をしている村田は「(巨人は)窮屈な体勢になってもヒットを打っていく、チームのためにやりながらも自分の成績を残していく集団なんです。それが出来て始めて、ジャイアンツではレギュラーが取れる」とハッキリとした違いを感じたという。
「じゃあどうやってジャイアンツで生きていくかって考えると、やっぱりバットを短く持ったり、進塁打を打ちに行きながらもヒットにするようにしたり。強烈な打球を打つのは、もう試合が決まったあとか、ここは打っていい場面と判断をしたときだけでしたね」
そう回想する村田は、ある名将の言葉も口にする。
「『こちらは巨人軍、決して個人軍にならないでくれよ』って原さん(辰徳監督)によく言われてました。そういう姿勢がベテランに染み付いているから、伝統として引き継がれるんですよ」
巨人には組織力の強さがある。そう言い切る村田は、「真似事と言われるかもしれないですけど、事実3年に1回は優勝しているチームのいいところを、どこまで取り入れられるかですよ」と指摘。「個人の集まり」と論じるDeNAの改善策を語る。
「ウチはフォアボールよりは二塁打をイメージさせている。僕もそういうタイプでしたので、盗塁が出来ない選手は二塁打を打てるように育てなければいけないです」
二塁打を打てる選手の育成のため、査定方法にも踏み込んでいる。23年に38年ぶりの日本一に輝いた阪神では当時の岡田彰布監督の方針でヒットと四球の査定を同等にし、チームのモチベーション促進に繋げたことが話題を呼んだが、村田も「内野安打が打てて盗塁できるような選手の生きる道として、ヒットと盗塁で塁打は同じですから二塁打と同じ扱いにしてくれると。プロとして査定がプラスになりますしね。そういう部分も発信していきます」と訴える。
同じく巨人でプレーし、コーチも務めた経験は、相川監督も同じだ。「皆さんが思う『細かい野球』というのは僕にとっては当たり前」との言葉も、村田と大筋は同じと捉えられる。たとえ“真似事”と言われてもいい。相川体制下のDeNAは他球団のエッセンスも活かしていく方針だ。
「日本にしかない文化がプロ野球にも当然あります。素晴らしい先輩たちが残してくれた野球に、パワーなどを付け足していくことで、僕は強いチームになると考えています」
志を同じくする村田は、今季から二軍監督に就任する。「若い頃から彼とは一緒にプレーもしてますし、ほんとにここまで長い付き合いです。お互いこのチームを強くしようっていう思いもすごい強く持っています」と語る相川監督は、「1軍とか2軍とか抜きにして、またベイスターズを1つにまとめていきたいです。その中でこの2人がそこに責任を持つという立場になったので、本当に強いチームを目指して2人で作っていきたいと思います」と言葉に力を込めた。
大洋時代からの伝統的な豪快さに緻密さを加え、いかなる凡事も徹底する。長年出来なかった”当たり前”が”本当に当たり前”になった時、届かなかったペナントが近づいてくる。
[取材・文/萩原孝弘]
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