■慶応高3年の夏、1番打者として107年ぶり全国制覇に貢献 東京六大学野球秋季リーグは18日、現在5位で既に優勝の可能性…
■慶応高3年の夏、1番打者として107年ぶり全国制覇に貢献
東京六大学野球秋季リーグは18日、現在5位で既に優勝の可能性が消滅している慶大が、立大1回戦に延長11回の熱闘の末、7-4で先勝し意地を見せた。“元甲子園のスター”が足で存在感を放ち、主将でエースの外丸東眞投手(4年)が通算20勝目を挙げた。
色白の顔がナイター照明に映えた。慶大は2-2の同点で迎えた9回、先頭の4番・中塚遥翔外野手(2年)が右前打で出塁。堀井哲也監督は迷わず丸田湊斗外野手(2年)を代走に送り、1万3000人の観客を沸かせた。
丸田は慶応高3年時の2003年夏、1番打者としてチームの107年ぶりの全国制覇に貢献。宮城・仙台育英高との決勝では、衝撃的な初回先頭打者本塁打を放った。色白のイケメンであることから「美白王子」の異名も付いた。
大学進学後は打撃でやや伸び悩んでいるが、50メートル5秒9の俊足は健在だ。続く森村輝内野手(4年)の2球目にスタートを切り二盗成功。リーグ戦通算6個目の盗塁が記録された。堀井監督は「丸田の走力はゲームチェンジャーです。試合の流れを一変させてくれます。“ここは走るな”というサインを出すこともありますが、基本的に盗塁のタイミングは彼自身の判断に任せています」と全幅の信頼を置いている。
さらに森村への5球目が暴投となり、丸田は三進。1死後、竹田一遥内野手(1年)の遊ゴロで本塁へ突入したが、あえなくタッチアウトとなった。
とはいえ、丸田の出番はこれで終わりではなかった。もう1度、持ち前の走力を披露する機会がめぐってくる。そのまま中堅の守備に就き、同点で迎えた延長11回、1死二塁でこの日最初の打席に入った。
一打でヒーローになれる“おいしい”場面である。ところが、丸田は初球からバントの構え。3球目のバントもファウルとなり、カウント1-2と追い込まれた。堀井監督は「三塁側にセーフティバントをするつもりだったのでしょうね。走者が二塁にいて、三塁手が前に出て来られない状況だったので、転がせば一塁もセーフになる確率が高いですから」と振り返った。これは丸田本人のアイデアだったわけだ。

■一打サヨナラ負けの窮地を救ったのは主将兼エースの外丸
追い込まれたことから、やむなく4球目の低めの変化球をスイングすると、打球はボテボテの一ゴロに。しかし、一塁手がベースを踏むより早く、丸田の快足が駆け抜け、当初の目的通り内野安打にしてしまった。
続く今泉将内野手(4年)がバットを折りながら、三遊間を破る勝ち越し適時打。流れに乗った慶大打線は四球、ヒット、犠飛を連ね、この回一挙5得点で事実上試合を決めた。
こうして攻撃では丸田起用が功を奏したが、堀井監督は守りでも勝負手を打っていた。同点の延長10回、2死一、二塁の“一打サヨナラ”危機に追い込まれると、7回から無失点リリーフを続けていた水野敬太投手(2年)を降ろし、外丸にスイッチ。外丸は期待に応え、後続を三ゴロに仕留めた。堀井監督は「続投か、外丸かで悩みましたが、相手もいいバッターでしたから、外丸の方が若干いいかなと思いました」としてやったりだ。
外丸は5点の援護をもらって臨んだ11回に2点を失ったが、通算20勝目(14敗)を挙げた。1年生の春から先発を任され、2年生の秋には6勝0敗、防御率1.54の無双ぶりで優勝に貢献しMVPに輝いた。しかし、昨秋に脇の下付近にある右大円筋の肉離れを負い、ペースダウン。今も故障前に比べると球威が戻らず、もどかしい思いを抱えているところだ。
それでも主将の責任感を背負いながら投げ続け大台に到達。「うまくいかない時もありましたが、20個の勝利を積み重ねることができて、率直にうれしいです」と万感の思いを吐露した。
フレッシュな“元甲子園のスター”がチームに勢いをつけ、主将兼エースが締めくくった。優勝争いからは離された慶大だが、見せる物はまだまだある。