愛知県内を中心に18競技が実施されるアジアパラ競技大会の開催まで1年に迫った。パラスポーツの祭典を愛知で開催することの…
愛知県内を中心に18競技が実施されるアジアパラ競技大会の開催まで1年に迫った。パラスポーツの祭典を愛知で開催することの意義は。準備の状況、今後の課題は――。大会組織委員会会長を務める大村秀章知事に聞いた。(山田知英)
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――アジアパラ競技大会の開催まで1年に迫りました。
アジア競技大会が日本で開かれるのは3度目になりますが、アジアパラ競技大会は日本で初めて開催されます。その場所が、ここ愛知・名古屋です。2021年の東京五輪・パラリンピックも、障害への理解促進などバリアフリーでインクルーシブ(包摂的)な社会を作っていくための大きなチャンスで、パラアスリートの活躍も注目されましたが、残念ながらコロナ禍で無観客となり、観戦はできませんでした。
このアジアパラ競技大会では、障害のあるアスリートがひたむきに努力し、競技に取り組む姿を、多くの皆さんに見ていただきたい。健常者も障害のある方も一緒にスポーツを楽しむ。それがバリアフリーでインクルーシブな社会に変えていく。そういう変革の起点になってほしいと思います。
――愛知で開催することの意義は。
アジアの45の国・地域から集まって試合を行い、交流する。言語、文化など多様性に富み、国際化のシンボルになるのではないか。それが愛知・名古屋が盛り上がっていくということにつながると思います。国際スポーツ大会の「情報発信力」を生かし、県の特色や文化を世界に発信するとともに、世界から多くの方々に来てもらうなど、交流機会の拡大を図っていきます。
アジア競技大会とともに両大会を契機として県民の皆さんが一層スポーツに親しんでいただくこと、アジア諸国に対する尊敬や友情の精神を育むこと、パラスポーツ文化の普及や多様性を尊重し合う共生社会の実現など。そうしたことが後世に語り継がれていくことで、この地域に多くのレガシーをもたらすことになると考えています。
――一方、物価高などで大会の全体経費は膨らんでいます。
愛知・名古屋での開催が決まったのは9年前の16年9月。予算は15年の経済状況と物価水準を前提として、14年の韓国・仁川でのアジア大会をベースに組んでいます。
近年は建設資材や人件費の高騰、歴史的な円安といった社会経済情勢の変動に、競技種目の追加など、開催経費全体への影響が避けられない状況にあります。
――コスト削減への取り組みは。
「簡素で質素、合理的な大会」の方針の下、既存施設・設備を最大限活用するなど低コストを意識して開催準備に取り組んでいます。
選手村の施設整備は取りやめて既存ホテルやコンテナハウスを活用したり、水泳や馬術の競技会場を東京へ移転して会場仮設費を削減したり。開催経費の抑制に向け、相当な努力をしています。
いま国の方に財政支援の要請をしています。国と協議をしているところなので、開催経費は全部整った段階でしっかり丁寧に説明をしていきたいと思っています。
――あと1年。課題への取り組みは。
これだけ大型の国際スポーツ大会なので、いろんな課題がたくさんありますが、一つひとつ着実に乗り越え、準備を進めていきたい。競技会場の設営・運営や選手団宿泊施設の整備に関する業務委託契約も交わすことができた。両大会を支えて下さるボランティアも、当初の計画を超える約2万6千人に応募してもらえた。
多くの県民・市民に、参加とサポートをぜひお願いしたい。本番では多くの観客に会場へ足を運んでもらい、熱気の中で選手を全力で応援してほしい。それが地域の活性化につながっていくと思っています。