<令和7年度 秋季東京都高等学校野球大会:岩倉4―3早稲田実(延長10回タイブレーク)>◇12日◇1回戦◇スリーボンドベ…
<令和7年度 秋季東京都高等学校野球大会:岩倉4―3早稲田実(延長10回タイブレーク)>◇12日◇1回戦◇スリーボンドベースボールパーク上柚木
岩倉と早稲田実という1回戦屈指の好カードは、タイブレークにもつれ込む壮絶な試合になった。早稲田実はベンチ入りの20人、全員が試合に出るという総力戦。ベテランの和泉 実監督は、「全員使ったのは初めて」と語る。
早稲田実にとっては、エースの小俣 颯汰(2年)が、本来の投球ができなかったことが響いた。逆に岩倉は、本来の調子でない小俣を、粘り強く、泥臭く攻めて試合の主導権を握った。まず1回裏1番の河村 柊希捕手(2年)が二塁打を放つと、犠打と内野ゴロで生還して1点を先制する。河村はこの夏の東東京大会の帝京戦で2本の本塁打を放った強打者だが、「4番や5番でうまくいかず、先週のオープン戦から1番に置いています」と岩倉の豊田 浩之監督は言う。
さらに岩倉は、3回裏敵失絡みでつかんだ二死二、三塁のチャンスで5番・渡邊 智紀外野手(2年)は、バスターの構えで小俣を揺さぶり、ファールで粘った後で三塁強襲打を放ち2人が生還した。「普段はああいうバッティングはしませんが、コンパクトに振って、いい形になりました」と豊田監督は言う。
岩倉は最初から継投を考えてまず背番号7の和田 齊親(2年)が先発。3回を無失点に抑え、4回からは背番号11の左腕・小林 辰生(1年)につなぐ。早稲田実は甲子園経験者が多いだけに、そう簡単に負けない。5回表、3番・西村 悟吾内野手(2年)の三塁打などで2点を返し、1点差に迫る。
すると岩倉はエースで主将の佐藤 海翔(2年)を投入した。5回からの登板は予定よりやや早かったが、「準備はできていました」と言う佐藤は、早稲田実打線を抑える。
早稲田実も小俣の後、酒本 隆汰(1年)、石毛 慎二郎(1年)と投手をつないで追加点を許さない。
そして9回表1点リードされている早稲田実は代打・石川 航太朗が四球で出塁すると深谷 岬(1年)を代走に送る。佐藤のボークで深谷は二塁に進み、さらに犠打で三塁に進む。ここで途中出場の9番・片桐 悠捕手(2年)の中前適時打で、早稲田実は同点に追いつく。
9回裏早稲田実は4番・左翼手で出場していた田中 孝太郎(2年)をマウンドに送る。田中は、昨年の秋季都大会の決勝戦でリリーフし、タイブレークも経験している。
9回裏岩倉は得点が入らず、試合はタイブレークに突入した。10回表は4番の田中から始まる。田中はバントの構えから打ちに行き、三ゴロの併殺に終わる。「田中はバントが下手なので、打ちに行きました」と和泉監督は語る。早稲田実は10回表に得点できなかった。
その裏岩倉は先頭打者の8番・村尾 和真内野手(1年)の犠打は失敗し、一死一、二塁となる。9番・佐藤の打順だが、「佐藤はバッティングはダメです」と豊田監督。それでも佐藤は中飛を打ち、二塁走者の伊藤 総真外野手(1年)は三塁に進む。結果としてこの走塁が大きかった。1番・河村の遊ゴロが内野安打になり、伊藤が生還。岩倉は、まさに紙一重の勝利を物にした。
早稲田実は9回に同点に追いつく粘りをみせたが、「先攻だけに、あそこは追い越さないとだめです」と和泉監督。「岩倉のエースは、ここというところでドンドン攻めてきました」と和泉監督は語る。エース・小俣の攻めの姿勢。それにタイブレークでの併殺を含め5打数無安打に終わった4番の田中。「やはりエースと4番が機能しないと……」と和泉監督は語り、悔しさをにじませた。
一方岩倉のエース・佐藤は、「普段の練習からタイブレークを想定してやっていました」と語る。豊田監督が、「勝ちたい思いが一番強い」と評価する佐藤は、主将も兼ねる。この夏は強気の投球で帝京を破ったが、秋は攻めの投球で早稲田実も破った。今後の戦いも、さらに注目される存在になってきた。