■松商学園3年の夏に甲子園出場、大学2年の春に1号放ったが… 東京六大学野球秋季リーグは12日、5季ぶりの天皇杯奪回を目…
■松商学園3年の夏に甲子園出場、大学2年の春に1号放ったが…
東京六大学野球秋季リーグは12日、5季ぶりの天皇杯奪回を目指す明大が法大との1回戦に6-3で先勝し、破竹の開幕5連勝を飾った。同点で迎えた7回、代打で登場した今井英寿内野手(4年)が値千金の決勝2ランを放った。
昨年まで15年連続でドラフト指名選手を輩出している明大では、今年も1位指名候補の小島大河捕手(4年)、毛利海大投手(4年)をはじめ5人がプロ志望届を提出済みである。そして“プロレベル”の主力だけでなく、“脇役”の選手たちにも指導が行き届いていて、いぶし銀の働きを度々見せるところが明大の良き伝統と言える。
3-3の同点で迎えた7回の攻撃。明大は先頭の光弘帆高内野手(3年)が右翼線へ二塁打を放ち、得点圏に走者を置いたが、後続が倒れ、場面は2死三塁に。「せっかく無死二塁としたのに、点が入らなかったら嫌な雰囲気になってしまうと思った」という戸塚俊美監督は、「夏のオープン戦で調子が良くて、ホームランを5〜6本打っていた」今井を代打で起用した。
左打席に立った今井が法大先発の丸山陽太投手(4年)に対し、カウント3-1から真ん中低めに来たストレートを引っ張ると、打球は右翼席へ飛び込む。ヒーローは「自分にとって最後のシーズンなので、思い切っていこうと心に決めています」と満面に笑みを浮かべた。
今井は長野・松商学園高3年の夏に甲子園出場。明大進学後も2年生の春、2023年5月13日の早大1回戦で初スタメン(6番・右翼)に抜擢されると、右翼席へのソロアーチを含め5打数4安打4打点の活躍を演じ、レギュラー定着への道が開かれたかに見えた。しかし、その後は伸び悩み、今春は打率.083(12打数1安打)と低迷。今季は1度もスタメンに名を連ねることができないでいた。
明大ベンチには、似た境遇の同級生がいる。瀬千皓(せ・ちひろ)外野手(4年)。こちらも1年生の春、開幕戦の2022年4月16日・東大1回戦にいきなりスタメン起用され、初回の初打席で2ランを放つ離れ業を演じたが、徐々に出場機会が減り、今井とともにベンチを温めるケースが増えている。その瀬も今季、9月27日・慶大1回戦で同点の7回に代打で起用され、左翼席へ決勝ソロを放っていたのだ。

■チームは4季連続2位、最近2季連続で優勝決定戦に敗れている
今井は「春に結果が出なくて、今季は出場機会も減って、心が折れてしまいそうな時はたくさんありました。それでも一緒にやってきた瀬が、つらい時もずっと隣にいてくれて、2人で頑張ろうと、ここまでやって来ました。瀬と同じシーズンに代打でホームランが打てて、本当にうれしいです」と感慨深げに胸の内を明かした。
決勝2ランを放ってベンチに戻った今井は、言葉にならない雄叫びを上げながら瀬と熱い抱擁を交わし、「瀬の方が泣きそうでした」と笑った。ちなみに瀬が東大1回戦で放ったソロは1年生の春以来1260日ぶり、この日の今井の2ランは2年生の春以来883日ぶりに放ったリーグ戦通算2号本塁打だった。長いインターバルに苦かった試行錯誤と、2人にしかわからない感動が詰まっている。
明大は今井と瀬が1年生だった2022年の春から3季連続優勝したが、その後2023年の秋からは今春まで4季連続2位。特に昨秋と今春は同率首位でシーズンを終え、いずれも早大との優勝決定戦に敗れている。ナイン全員がリベンジを期しているが、特に最終シーズンを迎えた4年生の思いはひとしお。明大の土つかずの快進撃を後押ししていく。