はじめに糖尿病は「気づかないうちに進行する病気」と呼ばれます。初期の段階では痛みや違和感がほとんどないため、気づいたとき…

はじめに

糖尿病は「気づかないうちに進行する病気」と呼ばれます。初期の段階では痛みや違和感がほとんどないため、気づいたときには進行していたというケースも少なくありません。

しかし、糖尿病は早期に発見し、生活習慣を改善すれば十分にコントロールできる病気です。今回は、糖尿病の初期症状や体のサイン、早めに受診すべきポイントを解説します。

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1. 糖尿病とは ― 血糖値が高い状態が続く病気

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高くなる病気です。インスリン(血糖を下げるホルモン)の作用が不足または効きにくくなることで、エネルギーがうまく使えなくなる状態に陥ります。

代表的なタイプは以下の2つです。

1型糖尿病:自己免疫反応でインスリンが作られなくなる

2型糖尿病:生活習慣や遺伝の影響でインスリンが効きにくくなる

日本人の約95%は2型糖尿病であり、食生活や運動不足、肥満、ストレスが大きく関係しています。

2. 糖尿病の初期にあらわれる症状

糖尿病の初期症状は、「血糖値が高い状態が続くことで体がSOSを出しているサイン」です。主な症状をチェックしてみましょう。

(1) 喉が渇く・水をよく飲む

血糖値が高くなると、体は余分な糖を尿に排出しようとします。その際に水分も一緒に失われるため、喉の渇きや多飲が現れます。

(2) 尿の回数が増える・夜間頻尿

糖を尿から排出する過程で尿量が増加します。夜中に何度もトイレに行く場合は、糖尿病のサインの可能性があります。

(3) 体重が減る

食事量が変わらないのに体重が減る場合、エネルギーがうまく使われず、筋肉や脂肪が分解されていることがあります。特に短期間での体重減少は注意が必要です。

(4) 倦怠感・疲れやすい

血糖が細胞内に取り込まれないため、エネルギー不足で疲れやすくなります。

(5) 目のかすみ

血糖値が高い状態が続くと、目の水分バランスが乱れ、ピントが合いにくくなります。放置すると「糖尿病網膜症」へ進行することもあります。

(6) 傷が治りにくい・感染しやすい

血流が悪化し、免疫力が低下することで、皮膚の傷や感染症が治りにくくなることがあります。

(7) 手足のしびれ

糖尿病性神経障害の初期段階で、手足のしびれや感覚異常が出ることがあります(次回「糖尿病 手のしびれ」で詳しく解説します)。

3. 初期症状を見逃しやすい理由

初期の糖尿病では、症状が軽く「疲れのせい」「年齢のせい」と思ってしまうケースが多いです。

また、血糖値が140〜160mg/dL程度では自覚症状が出にくく、健康診断で初めて指摘されることも珍しくありません。

4. 早期発見のために受けるべき検査

糖尿病は血液検査で簡単に確認できます。

空腹時血糖値:126mg/dL以上で糖尿病の可能性

HbA1c(過去1〜2か月の血糖平均)6.5%以上で診断

随時血糖値:200mg/dL以上でも診断の一助

尿糖検査:尿に糖が出ている場合は要注意

5. 初期の段階でできる生活改善

糖尿病は、初期であれば生活習慣の見直しだけで改善することも可能です。

食事:糖質を摂りすぎず、タンパク質と野菜をしっかり

運動:ウォーキング30分を週5日以上

睡眠:6〜8時間を目安に

禁煙・節酒:血管ダメージを防ぐ

まとめ

糖尿病の初期症状は「喉の渇き」「多尿」「体重減少」「倦怠感」「目のかすみ」など。

自覚がなくても進行していることが多いため、定期的な血糖チェックが大切。

初期であれば生活習慣の改善で十分にコントロール可能。

参考文献

1.日本糖尿病学会. 『糖尿病診療ガイド2024-2025』

2.ADA (American Diabetes Association). Standards of Care in Diabetes 2024.

3.International Diabetes Federation. IDF Diabetes Atlas 10th Edition, 2023.

[文:池尻大橋せらクリニック院長 世良 泰]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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池尻大橋せらクリニック院長・世良 泰(せら やすし)

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人スポーツチームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。