■8点リードを追いつかれる打ち合いに決着をつけた高価な1発 東京六大学野球秋季リーグは5日、連盟史上最長タイの4連覇を目…

■8点リードを追いつかれる打ち合いに決着をつけた高価な1発

 東京六大学野球秋季リーグは5日、連盟史上最長タイの4連覇を目指している早大が法大2回戦に15-10で打ち勝ち、1勝1敗のタイに持ち込んだ。「7番・右翼」で出場した石郷岡大成(いしごうおか・たいせい)内野手(4年)の“人生2本目の本塁打”を含む5打点の活躍が光った。

 壮絶な打ち合いだった。早大は2点ビハインドで迎えた4回の攻撃で、一挙5点を奪い大逆転。続く5回にも5点を加え、10-2と大量リードした。ところが、ここから2番手で登板した宮城誇南投手(3年)の乱調などで法大打線の反撃に遭い、10-10の同点に追いつかれたのだから、野球は最後までわからない。

 同点のまま迎えた8回の攻撃。2死満塁のチャンスに代打・岡西佑弥内野手(3年)が高いバウンドで投手の頭上を越え、中前に達する2点適時打を放ち勝ち越し。続く石郷岡がインハイのストレートを振り抜くと、打球は右翼席へ飛び込み、激戦に決着をつける3ランとなった。

 小宮山悟監督は石郷岡の貴重な1発に「まさかフェンスを越えるとは思わなかった。本人に聞いてみたら、人生で2本目のホームランとのこと。最後の最後(のシーズン)に貴重な経験を積めてよかったなと思います」と穏やかな笑顔を送った。

 右投げ左打ちで身長171センチ、70キロと小柄な石郷岡は、俊足が自慢で自称“早大の競走馬”。これまでは東京・早実高3年の夏、スリーボンドスタジアム八王子で行われた西東京大会5回戦の国学院久我山高戦で“逆方向”の左翼席へ放り込んだのが、人生唯一のオーバーフェンスだった。ただ、早実高はこの試合に4-10で敗れ、石郷岡にとって高校生活最後の試合にもなった。

 久しぶりのアーチを神宮球場でかけた石郷岡は「外野を越えてくれという思いで走りましたが、ライトの境(亮陽外野手=1年)選手が追うのをやめたように見えたので、行ったのかなと……。うれしいとかの感情はなく、自分でもびっくりしたというのが一番大きかったです」と夢見心地だった。

法大2回戦でリーグ戦初ホームランを含む5打点の活躍をした早大•石郷岡【写真:加治屋友輝】

■国内メーカーへの就職が内定「全てを出し切るだけ」

 レギュラーを獲得した昨春以降、3季連続で打率3割をマークしてきたが、国内メーカーへの就職が内定し、野球人生最後のシーズンと思い定めて臨んだ今季は、さらにレベルアップ。この日の試合前の段階では.579の高打率で、首位打者争いのトップに立っていた。「特に変えたところはないのですが、この夏に甘い球を逃さず仕留める練習をしてきたことが、結果として出ていると思います」と唇を綻ばせる。野球をやめてしまうのがもったいない気もするが、本人は「最後のシーズンなので、全てを出し切るだけ。優勝できれば何でもいいと思ってやっています」と屈託がない。

 派手な活躍だけではない。法大に2点を先行されて迎えた4回、1死一、三塁のチャンスに渋い二ゴロを転がし、チームにとって最初の1点をもぎ取ったのも石郷岡だった。この1点が1イニング5得点の呼び水となった。5回無死満塁でも着実に中犠飛を打ち上げた。

 打点付きの内野ゴロも、個人成績としては凡打同様、打率を下げる。この日は5打点も4打数1安打で、今季打率はリーグ3位の.522に落ちた。それでも5割超えの凄い成績に変わりはないが、本人は「打率は全然意識していません。本当に、チームが勝てばいいです」と強調するばかりだ。ラストシーズンの4年生が陰日向なく献身的にチームを支える早大。快挙へ向けて歩を進めていく。