2年連続2位の日本ハムは、多くの投手が結果を残しましたが、特に大きく伸びたのは高卒4年目の達孝太投手(天理)です。16試…
2年連続2位の日本ハムは、多くの投手が結果を残しましたが、特に大きく伸びたのは高卒4年目の達孝太投手(天理)です。16試合に先発し、8勝2敗、防御率2.09、107.2回、94奪三振。規定投球回に達しませんでしたが、3完投も果たし、先発登板では、QS率75%と、結果を残しています。
新人王候補に挙げられる達投手の常時150キロ台の速球、切れ味鋭い変化球で圧倒する投球にはロマンを感じます。
高卒の大型投手として理想的な成長曲線を描いていますが、これは日本ハムという球団に入ったからこそではないかと考えています。
1年秋、大阪桐蔭を抑える衝撃デビューから絶対的なエースへ成長
達投手の名前が広まったのは、高校1年秋の近畿大会決勝戦です。まだチームでは3番手の立ち位置だった達投手は経験の意味を込めて、決勝の大阪桐蔭戦に先発することになりました。
この試合で達投手は大阪桐蔭打線を翻弄します。190センチを超える長身、バランスの良い投球フォーム、角度のある140キロ前後の速球、切れのあるスライダー、カーブ、フォークを投げ分けて、大阪桐蔭の強打者を7回4失点に抑え、チームの優勝に貢献しました。その投球内容に、将来性の高さを感じました。
達投手はこの試合について、「高校入学後で最も楽しかった試合でした」と笑顔で振り返っていました。達投手の先発を決めた中村前監督も「予想以上という言葉をはるかに超えるものでした。多少失点してもまあ試合を作ってくれれば良いかなと思っていましたから」と驚きを見せていた。
ただ神宮大会では思うような投球ができず、中京大中京戦では8回途中まで5失点、7四球と苦しい内容でした。この投球について「全く駄目でした」と振り返り、スタミナ強化を課題に挙げました。
中村前監督は「まだ実力不足だと痛感するには良い試合だった」と語りました。
「実力以上に話題が先行しているところがあるので、気を付けないといけないと感じています。まだ実力的には実質3番手投手でしたから」
潜在能力の高い達投手に対して、あえて厳しく指導していました。
「達だから、エースだから、4番だからと特別扱いすることはありません。ダメだったらベンチを外しますし、そこはしっかりとシビアに見ます。達もその方針を理解していてしっかりと取り組んでいるのが分かります」
こうした方針のもと、2年秋の達投手は先発完投できる頼れる投手へ成長していました。
近畿大会では準々決勝敗退だったものの、52回を投げ、68奪三振、15失点、防御率2.60。公式戦7試合で先発し、勝利に導きました。ストレートも145キロまで速くなり、だいぶ力強い投球ができるようになりました。達投手の投球が評価され、チームは21年の選抜出場を掴みます。
高い自己投資してでもレベルアップする意欲が違った

編集部は2年冬に達投手を取材しましたが、キャッチボールでは角度をつけるために相手の膝下に投げることを意識し、ストレート、変化球のリリースの仕方、握りなど細部までこだわっていました。また、父親に頼み込んで、ラプソードを購入して、球質を分析していました。
今ではラプソードを設置するチームも増えたり、球質について知識を持つ高校生も増えてきましたが、当時はまだ黎明期。球質、回転数についても勉強して、レベルアップを図る達投手は他の高校生と違って視座の高さが感じられました。自分の成長のために高い自己投資もできる投手でした。
そして選抜では3試合連続完投勝利を収めベスト4進出。常時140キロ中盤の速球、フォークで圧倒する投球はまさに見応えがありました。選抜では最も内容が良く、一気にドラフト上位候補になりました。
ただ夏は選抜期間中に左脇腹を痛め、また選抜後に肘の痛みなどで順調な調整はできず、夏は奈良大会ベスト4。その内容は選抜ほどではなく、あまり評価は上がりませんでした。
小園 健太投手(市和歌山)、森木 大智投手(高知)など同世代のドラ1候補の投手と比べると内容面で一歩劣る感じでした。それでも達投手の才能、マインド面を最も評価したのは日本ハムでした。単独の1位指名でプロ入りを叶えました。
4年目までのブレイクまで時間はかかりました。1年目は二軍13試合で防御率6.26、2年目は二軍14試合で防御率5.15と、二軍でも打ち込まれることもありました。
自分のピッチングを見失うことなく、一歩ずつプロの世界でも自分の能力を表現できるようになった達投手。3年目は二軍19試合で6勝3敗、87回、防御率3.72と大きくステップアップした1年になりました。そしてプロ初先発で、5回無失点の好投で初勝利をゲットしました。
達投手は今年を勝負の年と位置づけ、アメリカで自主トレ。700万円の自己投資を行って、レベルアップに励みました。その結果が今年の大飛躍につながりました。
第一次戦力外通告期間を迎え、期待の若手選手も戦力外となっています。高校時代、輝かしい才能を発揮しながらも、成績や、映像を見ると持ち味を見失っています。達投手が良かったのはプロに入っても自分の価値観、世界観を見失うことなく、レベルアップを追求できたこと。日本ハムの公式SNS、報道で達投手の独特のキャラクターが露わになっていますが、日本ハムも、達投手の価値観を肯定し、レベルアップを促すことができました。
過去にはダルビッシュ有投手(パドレス)、大谷翔平投手(ドジャース)など大型投手を育ててきましたが、彼らの個性を尊重した育成スタイルが達投手にもハマったのでしょう。
達投手にとって日本ハムはベストマッチだったと思います。
最適な環境、チームのもとで達投手は来年以降、さらに成績を伸ばし、投手タイトルの争いに加わることができるか大いに注目していきたいと思います。