■杉浦主将が開幕戦で死球受け右手人差し指を骨折するハンデ 東京六大学野球秋季リーグは4日、東大が6-3で慶大1回戦に先勝…

■杉浦主将が開幕戦で死球受け右手人差し指を骨折するハンデ

 東京六大学野球秋季リーグは4日、東大が6-3で慶大1回戦に先勝。昨秋の法大2回戦以来356日(2季・18試合)ぶりの白星を挙げた。今季は主将で打線の中軸でもある杉浦海大捕手(4年)が開幕戦で右手人差し指に死球を受けて骨折。戦線を離脱するハンデを負っているが、この日は“代役”の明石健捕手(3年)が4打数3安打4打点の活躍で勝利を引き寄せた。

 東大・大久保裕監督も「チャンスで1本が出た。明石が活躍してくれて、いい流れになりました。4打点は凄いですね」と目を丸くするばかりの働きだ。

「7番・捕手」で先発した明石は、3回先頭の第1打席で右前打。そして0-1とリードされて迎えた4回、青貝尚柾内野手(4年)が押し出し死球を得て同点に追いついた後を受け、1死満塁の勝ち越し機で左打席に立った。

 慶大先発の左腕・渡辺和大投手(3年)に対して2球で追い込まれる。それでもファウルを2球打ち、ボールになるスライダーを2球見逃したことで「スライダーは見極められる」との余裕が生まれたという。「ストレート待ちに切り替えた」直後の7球目、狙いすましたストレートが真ん中高めに来たところを一閃。打球は右翼手の頭上を越え、満塁走者一掃の3点三塁打となり、一気に慶大を引き離したのだった。

 5-2とリードして迎えた9回には、2死一、三塁でフルカウントから“逆方向”の左前へ適時打。これも勝敗を決定づける貴重なダメ押し打となった。

 驚異的な打棒を振るった明石だが、試合後には「打ったところがフォーカスされるかもしれませんが、自分としては3失点でゲームをつくれたことが大きかったと思います」と“守りの要”らしいセリフを口にした。

慶大1回戦で3安打4打点の活躍をした東大•明石健【写真:小林靖】

■毎試合前に相手打者を分析「相手のツボに投げないように」

 大黒柱の杉浦の戦線離脱を受け、開幕2戦目に捕手としてリーグ戦初スタメンに抜擢されると、以降は4試合連続フル出場。これまでに計6度企図された盗塁を3度刺し、盗塁阻止率5割を誇っている。本人は「肩の強さも、捕ってから投げるまでのタイムも普通です」と言うが、走者が滑り込んでくるところへ正確に送球するコントロールが目を引く。

 毎試合前には相手打者を徹底分析。「自分なりに各打者を分析し、野手のポジショニングも考えた後に、杉浦さんからいろいろアドバイスをいただいています。お陰で分析を深めることができています」とうなずく。

 この日は一発長打を秘める慶大打線に対し「それぞれの打者にツボがあり、そこに投げてしまうとホームランがある打者が多い。コントロールミスがないように、ツボに投げないことを強く意識しました」と対策を練って臨んでいた。

 結局4投手による継投を、明石が1人でリード。スタンドでは“縁の下”で協力してきた杉浦が右手人差し指に包帯を巻いた姿で、うれし涙を流していた。

 代役以上の働きをした明石だが、千葉・渋谷幕張高時代は遊撃手だった。「東大入学後、同級生にいい内野手が多かったので、コーチの勧めもあって、比較的に層が薄かった捕手に転向しました。もともと肩にはある程度自信がありましたから」と振り返る。

 主将の離脱という大ピンチを跳ね返した東大。にわかに2017年秋以来16季ぶりの勝ち点奪取、今春まで55季続いている最下位からの脱出も現実味を帯び、一気にムードが高まってきた。